No.367:青龍寺の異変
棟方(抜けスラはヤバイ!!!)
西口(これを打たずして何を打つと!?)
棟方(打たれる!!)
カキィィーッッッッッーーーッンッッ!!
《真ん中に抜けたスライダーを流した!!!》
西口(越えろ!!!)
《打球はライトへ!!!》
我妻(あっぶねー。)
パシッッ!!
西口『くそぉぉぉぉ!!!』
《しかし当たりが良すぎた!!!!ライトライナー!!!!》
棟方(これは助かったぜ…。)
青龍寺(まじラッキーだわ。)
川越『ツキにも見放されたか…。』
野中『先頭打者が出れなかったのは痛いな…。しかもせっかくの失投を…。こりゃ…このままゲームセットも視野だな…。』
川越『いや、しかしまだチャンスはある。』
棟方(今まで抜けたことなんて無いに等しかった翔冴のスライダーが抜けた…。アイツは表情には出していないが、てことはつまり…。)
小木曽『バテてきたか。』
渡辺『だら。スライダーは疲れると精度が著しく悪くなるからな。』
小木曽『俺もスライダーピッチャーだからよくわかる。抜けスラが出てくるときってのは、スタミナに余裕がないときだ。』
渡辺『だよな。』
小木曽『おう。間違いなく。』
小宮(さっきのイニングから突然スライダーの曲がりが少し早くなったことでスライダーが見えるようになった。そんで、今の拓磨への1球は、真ん中への抜けたスライダー。)
松坂『俺が出ねえとな…。』
小宮(これは、間違いなくチャンス!)
『6番、サード、松坂くん。』
棟方(コイツはランナーが得点圏にいるときこそ、真価を発揮するタイプのクラッチヒッター。ランナー無しで回せたことは非常に大きい。)
《ここで打席には準決勝の北頼戦、逆転サヨナラタイムリーを放っている松坂健祐!チーム1の元気印がここで登場!!》
小宮(青龍寺がスタミナに課題があってもおかしくない。もともと啓稜は今年の7月まで対外試合禁止処分を食らっていて3月以降の試合経験は正直劣る。しかも啓稜は夏の府大会でも決勝以外は全試合コールド。青龍寺が9イニングの先発完投に慣れてなくても不思議じゃない。)
《啓稜学院はいよいよあとアウト2つで夢の夏の甲子園連覇!!》
小宮(8回裏にスライダーの曲がりが僅かながら早くなったことは伏線。そしていま、スライダーが初めて抜けた。そして、棟方は青龍寺の8回の異変には気付いていない。)
(まだいけるぞ!)
棟方(スライダーは8回までは全く問題無かった。さすがに疲れもあるだろうが、さっき1球抜けただけ。右打者にはいままで通り積極的に使っていけばいい。)
《ワンナウトランナー無し!邦南はまずランナーを出したいところ!!》
棟方(初球からいくぞ!)
青龍寺(…。)
《松坂へ第1球!!!》
ビュゴォォゥゥッッッッッッ!!!!!
棟方(なっ!)
ズバンッッ!!!
《初球ははっきりとしたボール球。ベースの手前でワンバウンドするスライダー。》
棟方(らしくねぇぞ。確かに低めに投げることは大切だが置きにいくな。)
赤嶋(ドラゴン…?)
ビュゴォォゥゥッッッッッッ!!!
棟方(バカ!)
ズバンッッ!!!
《今度はカーブが浮いてしまいました!!これも明らかにボールとわかる変化球。カウントはツーボール!!!》
棟方(なんでこの回突然乱れている?疲労にしては突然過ぎやしないか?表の攻撃でも翔冴に打席は回っていないから攻撃で消耗したってこともないはず…。)
青龍寺(…。指の感覚がおかしい…。特にスライダー。変化球全般で感じる…。なんでこうなった?)
赤嶋(多彩な球種を持つ投手の宿命か…。変化球は1球、1球で指にかかる力の箇所も、程度も違う。ドラゴンは色んな変化球を操るのが武器でもあるが、それは逆に疲れたときに指の感覚を一気に狂わせる。)
(このままではドラゴンはマズイ。)
ビュゴォォゥゥッッッッッッ!!!!!
松坂(インコース!!俺の得意ゾーン!!!)
カキィィィーーーーーッッンッッ!!!!!
棟方(はっ!)
青龍寺(…、くそ…。)
《打ったぞ!!角度は完璧!!!この方向は浜風も押すぞ!!!!!伸びるぞ伸びるぞ!!!!》
ボサッ…
《入ったーッッッッッッッ!!!!邦南の元気印、松坂健祐!!!!この決勝の舞台でも、まだ諦めないぞと言わんばかりの今大会自身第2号ホームラン!!!!!邦南高校、4点差!!!!6番松坂の準々決勝の楽秦工業高校戦以来のホームラン!!!!!》
赤嶋(置きに行ったインコースへのストレート。インコースも、ストレートも得意としている松坂には、ちと不用意すぎるんじゃねぇか?)
棟方『置きにいくな。相手は邦南打線だ。不用意な1球は命取りだ。あと2個アウトを取ればいい。まだ4点リードしているし、腕振って投げれば問題ない。』
青龍寺『問題ないか…?』
棟方『どうした。やけに弱気だな。』
青龍寺『いや、変化球の指の掛かりもなんかおかしい。今のストレートもインコースに投げきれる自信が投げる瞬間に無くなった。無意識のうちに置いていて、ホームランだ。』
棟方『さっきの回も、ピンチは迎えたが、特にボール自体に問題はなかった。少しバテたか?』
青龍寺『バテてない。まだ余裕だ。舐めんな。』
棟方『よし。あとアウト2つだ。腕を振ることだけ意識しろ。リードは任せてくれ。』
『7番、ライト、氷室くん。』
《ワンナウトながら松坂のホームランで1点返して7対3の4点差!!なお打席には1年生の氷室!!!》