No.365:ball of the last
(途中から来たくせに、みんな暖かく迎え入れてくれて、そのくせ毎試合スタメンで使ってくれて…)
“最後に、邦南で野球が出来てよかった。”
氷『来い!鬼頭!!』
《全国高等学校野球選手権甲子園大会決勝、9回ツーアウト満塁フルカウント!!》
赤嶋『ヒロ…。』
風岡『納得いかんか。赤嶋よ。』
赤嶋『…。』
《さあマウンド上、至高の9人組、supreme 9のエース、鬼頭博行。ふーっと息を吐き、ピッチャーズプレートに足を掛けます。》
鬼頭(行くぞ。拓磨。)
西口(ミット目掛けて、全力で放っちゃってください。)
《鬼頭がサインに頷く!最後に選ぶのは!?》
赤嶋『…。』
氷(気迫半端ねえな。ストレートって顔に書いてある。)
赤嶋『…。』
『『ヒロ!!!!てめー自分でやるって決めたらトコトンやり抜けよな!?!?半端な球投げたら承知しねーぞ!!!!!!!!!』』
鬼頭(頭也…。ホント、相変わらずお前はお節介なキャッチャーだよな。)
(お前が居たから、いま俺はここにいる。感謝しかねえよ。)
(見届けてくれ。俺のラストボール。)
《投げる!!!!!!!!!!!》
ビュゴォォゥゥゥゥッッッーーッッ!!!!!
ズッッッッ
バァァァーーーーッッッーーッッンンッッ!!
【160km/h】
『『『ウオォォオオオオォォォォォオォ!!!』』』
《160キロォォォォォォォ!!!!!!!》
氷(アホみたいにやべーじゃねえか…。)
《ツーアウトフルベースの大ピンチで、1番氷政成を空振り三振に仕留めた!!!渾身の160キロ!!!!!!》
鬼頭(はぁ…はぁ…はぁ…。)
(やべ…痛みで…フラフラする…。立ってらんねえかも…。)
フラッ…
鬼頭(…。ダメだ…。)
赤嶋『ヒロ!』
大場『!?』
(立て…まだゲームは終わってない…。立ってくれ…)
ガシッ
鬼頭(…?)
小宮『大丈夫ですか。』
鬼頭『哲都…。』
小宮『ナイピッチです。』
鬼頭『ハハ…。なんとか無失点…だったよ…。』
小宮『さ、いきましょう!まだ、最後の攻撃が残ってます。みんなで絶対逆転しましょ!』
『『パチパチパチパチパチパチ…』』
《鬼頭がこの回を無失点で切り抜けて小宮に肩をかつがれながらマウンドを降ります。場内全体から大きな拍手。》
副島『ナイピッチ。ヒロ。』
大場『ったく…。無理しちゃって…。』
島谷倫『怪我してんなら最初から言わんかい!』
鬼頭『すまんすまん。』
片野『指導者として、試合当初から怪我のことを知っていたら投げさせなかったかもしれない。だが、』
『ナイスピッチ。この回をゼロでいけたのは大きい。』
鬼頭『勝ちましょう…。絶対に。』
片野『お前ら、これが俺から直接かける最後で最大の指示だ。』
大場『…。』
“ネガティブなことは一切考えなくていい。お前たちが掴み取ったこの舞台。”
“いいか、点差は5点。思い出してみろ。”
“俺達の夏は、どこから始まった?”
“県大会3回戦、名林戦で9点ビハインドから逆転勝利。5回戦では苦しい展開ながら、大峰明館の谷を攻略して逆転勝利。準々決勝では韓国人トリオのエース、朴昌圭からコールド勝ち。準決勝の猪子石戦ではプロ注目の小木曽をノックアウトして12得点。決勝の享神戦ではあの享神の北峰と堂金などを擁す投手陣から15得点。甲子園でも陽灘学園戦で9回ツーアウトランナー無しから5点差逆転。美鶴学舎、晟西戦でも最後は打って、他の試合でも、バッティングでお前たちは勝利をもぎ取ってきた。”
“バッティングの邦南を魅せてやれ!!大場、鬼頭、小宮の投手陣三本柱が注目されているが、俺達の快進撃の根源はこの打撃力!!!”
“お前たちに不可能なんてない!!逆転するぞ!!”
“優勝してこい!!!!!”
『『『ハイッッッッッ!!!!!』』』