No.360:ラストイニング
片野『太郎!!伝令だ!!』
木村『はいっ!』
《邦南高校、ここで今日3回目の伝令です。これで延長にならない限りすべての伝令の機会を失いました。》
島谷倫(やべー、打ち取った打球をしっかりアウト取らなくちゃいけねーっつのに…。)
西口(なに言われんだろ…。)
鬼頭(…。)
小宮(なんだろ…。)
木村『………。』
大場『ん?』
『あのさぁ、』
大場『ど、どうしました?』
木村『お前ら、試合に出たくても出れないやつの気持ち考えたことある?』
西口『…。』
木村『俺はお前らが、サイッコーに羨ましい。こんな夢のような大舞台、しかも決勝で、あの啓稜とやってんだぜ…。』
島谷倫『キムタロ…。』
木村『でも俺は、現実まだこの舞台でプレーしたことはない。ずーっとベンチだ。俺だって、俺だって、ホントはすっげー出たいし、すっげー、すっげー、フルスイングしてみたい!この舞台で!守備でも、“俺が!”“俺が!”の精神で思いっきりプレーしたい。』
小宮(…。)
木村『でも、出来ねぇ…。試合に出てねえからだ…。だから俺はお前らが羨ましくてたまんねえ…。』
副島『…。』
木村『湿気たツラしてプレーしてんじゃねえぞ!!!お前ら、そんなんじゃ俺が許さねえ!!!このフィールドにいる9人はチームを代表して、学校を代表して、愛知を代表して、いま、戦ってんだ!!出れるんだったら最後まで全力でプレーするのがお前らの義務だろ!!』
副島『!!!』
大場『!!!』
鬼頭『!!!』
西口『!!!』
小宮『!!!』
島谷倫『!!!』
木村『お前らがそんな顔してやってると、俺は正直言って腹が立つ!』
『『『俺は、絶対にこの試合、勝ちたい!!俺は諦めねえ!!!!』』』
小宮『…。』
木村『以上。』
鬼頭『ふっ…。』
副島『太郎!』
木村『……?』
『ありがとな。目が覚めたぜ。な?みんな。』
大場『キムタロさんが真剣なこと言うのも珍しいけど、今回はさすが先輩っす。』
木村『…。礼を言われる筋合いはねえよ。』
鬼頭『キムタロ。俺達はこの回、絶対に無失点でラストイニングに希望を繋ぐ。だからお前は、ベンチ裏行ってバット振ってろ。最高の場面でお前に回す。』
木村『バーカ。この場面、お前らの勇姿見届けなくてどーすんだ。ベンチにいるやつは全力で声精一杯出すのが仕事なんだぜ。』
鬼頭『ふっ。』
島谷倫『お前らしいっちゃ、お前らしいな。』
西口『よし!!んじゃあ開発、氷とパパっと抑えて、最後の攻撃で逆転しましょう!』
『これが!このチームでやるディフェンスのラストイニングです!!!気合いと根性で乗り越えますよ!!!』
『『『しゃぁぁっっっっっ!!!!!!』』』
《全国高等学校野球選手権大会決勝、5点リードの啓稜学院の9回表の攻撃!!ワンナウト満塁と尚追加点のチャンスでここでこの試合守備固めで途中出場している9番の西陣に代打開発!一昨日の準決勝の都立光山戦では3点ビハインド9回2アウトの絶体絶命の状況で舞野駿太郎から打線爆発の口火を切る代打ホームランを放っています!!!》
西口『ワンナウトです!!サードファーストは前進守備でホームゲッツー!!ショーセカンドは中間守備でセカンドゲッツーもホームゲッツーも両方狙えるシフトでいきましょう!!』
《打席の開発君はリトルリーグ時代エースで4番でキャプテンとして全国大会ベスト4、中学時代にポニーリーグ関東選抜で4番でキャプテンをやっていた経歴も持ちます。非常にセンスある強打者です。高校では怪我に悩まされ、ずっとベンチ外が続いていましたが、今年の夏、怪我を乗り越えてようやくベンチ入りを果たした苦労人です。》
開発『オラァ!!!来いやァ!!!!!!』