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359/382

No.359:負の連鎖

『8番、ライト、我妻(あずま)くん。』



我妻 憲明 本日の打撃成績

1:右安

2:一ゴロ

3:左安

4:捕邪飛




《ここで今日の試合4打数2安打の8番我妻!ワンナウト二三塁の得点チャンスのこの場面!!》





西口(1点でもあげたらそれこそゲームセット…。ワンナウト二三塁で打席にはバットコントロール抜群のアベレージヒッター我妻…。でも、この場面…敬遠はダメだ…。)






赤嶋『邦南としては歩かせたいのは山々だろうな。』


霞『でも、それはダメだよね。』


桜沢『なんで?』


霞『いや…だって歩かせたら9番でゲッツーとらないと1番の氷に回っちゃうでしょ。』


桜沢『なるほど!』


赤嶋『ま、俺は敬遠策もアリだと思うけどな。思い切って退路塞いだ方が割り切って勝負できるってのもあるしな。まあ、今の邦南(あいつら)の心理状況的にもこの場面を割り切るって考えは難しいし、我妻勝負だな。』






西口(基本的にノーアウト、又はワンナウトで二三塁の時は三塁ランナーはゴロゴーだ。(※ゴロゴー:ゴロなら全部ゴー)でも、啓稜の様に名門校となると走塁もかなり鍛えられていて、サードへの打球やショートゴロの強い打球はスタートを切らずに、みたいな応用の利く走塁ができる。ということは、)





(サードゴロに強い打球を打たせてランナーを二三塁のまま封殺する。それか三振を我妻から奪う。)






鬼頭(……………。)






西口(基本的に我妻は苦手なコースは無いと思っていい。でも外角を無理矢理引っ張られて右方向で得点ってのは避けたい。)




『内野前進守備で!!次の得点は絶対やれないですからね!!死んでも守りきりますよ!!』




『オッケェ!!』

『さあこい!!』




我妻(前進守備ねえ。てことは強いゴロでも弱いゴロでもホームはキツそうだな。んじゃあ心置き無く自分の打撃をさせてもらうよ。)




西口(我妻は啓稜打線の8番ながら、未だにやはり今大会バントの指示はない。バントしなくても補って余りあるバットコントロールがあるからってのもあるだろうけど、実際は多分バントそんな上手くないからだ。甲子園決勝最終回のこの場面、慣れてない指示は絶対出さない。スクイズの心配をしなくていいのは良いことだ。)




我妻(前進守備ならゴロ打たないとでも思った?いやいや、前進守備とか自ら内野の左右への守備範囲縮めてるんだから、そのアドバンテージはしっかり利用するよ。前進守備でもそうでなくても、やっぱ二三塁はゴロ安定。)








ビュゴォォォォォォッッッ!!!!




ズッバァァーーーッンッ!!!





【145km/h】





『ストライク!!!!』





西口(145?)


我妻(コントロール重視かい。さっきのフォアボール引きずりすぎ。)





西口(でも、とりあえず初球とれた。三塁封殺じゃなくても、三振がとれれば全然オッケーだ。)





赤嶋(なんか嫌な予感がするな。)







ビュゴォォォォォォッッッ!!!!





我妻(外角!!ストレート2球でやられっかよ!)








カキィィィーーーーッンッ!!!!!





我妻(うぉ!?)




西口(狙い通り!!!!!キタ!!)







《外角直球を上手く流した!!!!!》




南條(これは進めん!!)






島谷倫(バウンドが微妙だ…!前出るか!?待って捕るか!?)







(ここは安全に…!!)





バスッッ!!!




西口(は!?)



島谷倫(ッ!!!!)







我妻(おっしゃ!ツイてる!!)








《サード島谷倫暁弾いた!!!すぐ拾い直すがバッターランナー我妻は足も速い!!!》





島谷倫『やっちまった…。』





《投げられない!!!ここでサード島谷倫暁のエラー!!!!邦南、ここで痛恨のエラーが出てしまった!!!》




赤嶋(ったくよ…見てられねえよ…。この回乱れすぎだろ…。)



水仙『今のは打った瞬間迷わず、前に出て処理してれば何の問題もない普通のサードゴロだな。前に出ず、弱気になって待ったからミスった。内野のエラーの典型だわ。』


霞『さっきのバント処理も邦南が積極性を失ってて、今のも消極的なマズイ守備。』


赤嶋『どんなチームでも陥る可能性のある、負の連鎖。これが野球だ。』


桜沢『このまま行ったらヤバくね?5点でも相当ヤバイけど、滅茶苦茶ヤバくね?』


赤嶋『5点ビハインドで既に滅茶苦茶ヤバいけどな。このまま守備してたら火傷じゃ済まねえ。啓稜打線の餌食だ。』


霞『啓稜が自分達の守備で引き寄せたこの流れ。王者の貫禄だね。邦南の人達をここまで精神的に追い詰めるなんて…。』


赤嶋『ワンナウト満塁。結果的には敬遠と同じだ。でもキャッチャー西口的にはツーアウト二三塁にしたかったはずだ。そのプランが崩れてるし、何より西口は今、かなり追い詰められている。正直まだ入学して4ヶ月しか経ってない1年坊にこの場面は荷が重すぎるかもしれんな。俺でもこーなってしまったら建て直せるかわかんねえ。』


霞『でも…まだヒロがなんとか…』


赤嶋『確かにアイツなら何とかしてくれるかもしれないが…』





『9番、レフト、西陣(にしじん)くんに代わりまして、代打、開発(かいほつ)くん。バッターは、開発くん。』



鬼頭(…………………………。くっそ…はええよ……。)






(痛み止めが…切れてきやがった…。)





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