No.349:紫電一閃
小宮(やっぱ翔真先輩はスゴいや。わかんないけど、僕はたった1イニングでこんな汗びっしょり。翔真先輩はこんな打線に6イニング以上投げてたんだ。弱音も吐かず…、皆を鼓舞するようなピッチングを続けてくれた。)
(翔真先輩の粘りのピッチングがなかったらこんな試合展開にならなかった!そのピッチングを無駄にしないためにも…)
“僕が!!!ここで点を取られちゃダメなんだ!!!”
ズバァァァァーーーッンッッ!!!!!
『ボール!!!!』
【148km/h】
棟方(いい球だ。)
《2球目はアウトロー!!!惜しくもボールでしたがこの球速!!!!甲子園1年生最速タイの148キロ!!!!自己最速がここで出ました!!!!》
小宮『ハァ…ハァ…。ハァ…ハァハァ…ハァ。』
西口(来い!哲都!!いい球キテるぞ!!!)
ビュゴォォォォォォッッッ!!!!
ズバァァァァーーーッンッッ!!!!!
棟方『…。当たらん、か。』
《3球目のストレート!!!棟方は空振りでツーストライクワンボール!!!棟方は追い込まれた!!!!!》
西口(ウイニングショットは…、)
小宮(決めるよ!!サークルチェンジ!!!)
ビュゴォォォォォォッッッ!!!!
棟方『外角低め!!逆方向に_________』
(チェンジアップ!?マズイ!!!止まれ!!!)
ピクッ…
西口『ハーフスイング!!!』
《ハーフスイングは!?》
棟方(…。)
『セーフ!!!!!!』
棟方(よし。)
《一塁塁審のスイングチェックは振っていない、の判定。カウントは2ストライク2ボールの平行カウント!!!》
西口(行くぞ哲都。)
小宮(オーケー拓磨。)
“四段ドロップ!!!”
《第5球、投げる!!!!!》
ビュゴォォォォォォッッッ!!!!
小宮(っ!!!!!)
西口(バカ!!!)
ズバーーーッンッ!!!!
『ボール!!!!』
《この1球は大きく浮いてしまいました!!!四段ドロップが抜けてしまった!!!》
小宮(ふぅーっ。大丈夫だ。大丈夫だ…。)
棟方(もう、これで次の球種は決まったろ。)
西口(これではっきりしたな。哲都。)
小宮(うん。わかってる。)
棟方(お前ら1年生バッテリーは本当に尊敬に値する。邦南がここまで来て、俺達をここまで苦しめているのは、間違いなくお前ら二人の力が大きいだろう。)
西口(行くぞ哲都。これが優勝への流れを引き寄せる大きな1球だ。)
棟方(だけどな、)
《小宮哲都、セットポジション、カウントフルカウントからの第6球、》
“優勝したい、その気持ちは、”
“俺達も同じだ。”
《投げる______________》
カキィィィーーーーッッーーンッ!!!!!!
《……………………!!!……………………!!……………………………!!!》
《…!!…………………………!!!………!……………………!!!》
小宮『…。』
西口『…。』
小宮『終わった………。』
《入ったァァァァァァァ!!!!》
『『『ウオォォォオオオォォオォォオォ!!!!』』』
《紫電一閃!!!!光芒一閃!!!キャプテン棟方、その一振りは、その一振りは、邦南ナインを大きく動揺させる、そして、啓稜ナインに大いなる歓喜の輪を造り出し、優勝を手繰り寄せる、ダメ押しのスリーランホームラン!!!!!!!!!》
啓稜学院|201 000 04
邦南高校|000 101 0
小宮『ここだけは…打たれちゃいけなかった…。』
《打たれた小宮は、手を両膝について、顔を上げることができません!!!!!》
西口『哲都。顔を上げろ。』
小宮『ごめん。拓磨。』
『顔を上げろ!!!!!!!!!!』
小宮『…。』
西口『まだ試合は終わってない。まだあと2回攻撃がある。諦めてんならさっさとベンチに戻れ。』
小宮『切り換えられるもんならとっくに切り換えてるよ!!!!!』
西口『…。』
小宮『拓磨は、いつも勝手なんだよ。打たれたピッチャーの気持ち分かんないの?』
西口『そうか。あぁそうか。お前はもうギブアップか。もし本当にそうなら失望したぜ。哲都。』
小宮『は…?』
西口『打たれてショックなのがテメーだけだと思うなよ。周り見てみろ。』
小宮『…。みんな…。』