No.348:意地
『1番、ショート、氷くん。』
氷 政成・今日の試合の打撃成績
1:中本
2:左飛
3:左二
4:投安
《今日の試合も4打数3安打で甲子園安打記録を21に更新している氷がここでバッターボックス。》
西口(切り換えろ…。取られちまったもんは仕方ねえ。野球は切り替えのスポーツなんだ。)
小宮(僕がなんとしてでもこの回を抑えないと…。)
ビュゴォォォォォォッッッ!!!!
ズバァァァァーーーッンッッ!!!!!
『ボール!!!』
西口(甘く入っちゃダメだ。上位打線に失投はそれこそ試合が終わっちまう。)
…
ズバァァァァーーーッンッッ!!!!!
『ボール!!!』
小宮(ノーツーか…。バッター有利のカウントにしちゃった…。でも、まだこっから厳しいところを…!)
ビュゴォォォォォォッッッ!!!!
西口(ナイスボール!!!!)
ズバァァァァーーーッンッッ!!!!!
『ボール!!!!!』
小宮(えっ!)
西口(ボールだぁ!?!?)
《さあ1番氷に対しカウントは3ボール!!!!苦しいカウントになってきた!!!》
西口(もう、こうなったら無理に勝負しに行くより歩かせた方がいい。)
《ここで西口が立ち上がります!スリーボールになったところで無理に勝負にはいかず敬遠策です!》
…
《ワンナウト一二塁となって打席には2番の中川恭輔!!!今日の試合、本塁打を放っています!》
西口(ここだぞ…。哲都。踏ん張りどころだぞ。)
中川(ぶっちゃけ2点ありゃ青龍寺サンなら楽勝だと思うけどね、)
(手加減はしない。当然ながら追加点を狙うよ。)
ビュゴォォォォォォッッッ!!!!
カァァァクゥゥッッッッ!!!!!!
西口(四段ドロップ!!)
ズバーーーッンッ!!!!
『ストライクワン!!!!』
中川(出たよ。このカーブ。狙わねえとコイツは打てねえ。だが狙えば他の球に対応できなくなる。捨てるのが良策。)
ビュゴォォォォォォッッッ!!!!
中川(待ってたぜ!!!ストレートをな!!!!)
カキィィィーーーーッッーーンッ!!!!
西口(な!?!?)
小宮(やばい!?)
《痛烈な打球!!!!!!》
氷室『オーライ!!オーライ!!』
パシッ!
《しかし運悪くライト氷室の正面!!!!中川の捕らえた打球もライトライナー!!!邦南としては助かりました!!!しかし二塁ランナー護はタッチアップのスタートを切っていました!!!これは好走塁!!!ツーアウトながらランナーは一三塁!!!》
中川(くっそー。ついてねえ。今の捕らえ方結構完璧だったんだけどな…。)
『3番、キャッチャー、棟方くん。』
《2点リードの8回表、啓稜学院の攻撃、ツーアウト一三塁の更なる追加点のチャンスで打席にはキャプテン棟方。》
西口『タイム、お願いします。』
『タイム!!!』
《キャッチャーの西口がマウンドの小宮の元へ駆け寄ります。》
西口(すっげぇ汗だな…。これが…この打線を相手に投げるプレッシャーか…。)
小宮『代わらないよ。』
西口『え?』
…
木村『監督、小宮はもうかなり啓稜打線に捕まってます。ここは、博行で…。』
片野『わかっている。だが、』
木村『?』
片野『それは俺が判断する。』
…
西口『代わらないよ?』
小宮『うん。続投?当然っしょ。僕をなんだと思ってるの?』
西口『…?』
小宮『小宮哲都。好きな人物は源義経。好きな言葉は捲土重来。』
西口『…。』
小宮『忘れないよ。みんなが、僕を甲子園に連れてきてくれたこと。だから、今度は僕が』
“このチームを日本一に導きたい。”
西口『…何言ってんだ。このチームを優勝に導くのはこの俺だ。そこは譲れねー。けど、』
小宮『けど?』
西口『お前の最後の意地、アイツらに見せつけてやれ。』
小宮『…。』
“おうっ!”
木村『監督…』
片野『続投だ。』
木村『え…?』
片野『アイツは今のタイム中、一度もこちらを見なかった。アイツの魂はまだ、生きている。』
『プレイッ!!!』
《小宮続投です!!!この回清水のタイムリーで1点を追加して4対2とした啓稜学院の8回表の攻撃、ツーアウトランナー、一三塁で打席にはキャプテン棟方 和徳!対する邦南高校のマウンドには1年生、小宮哲都!!!!》
《第1球、オーバースローから、投げる!!!!!》
ズバァァァァーーーッンッッ!!!!!
【147km/h】
『ストライク!!!!ワン!!!!』
《初球から渾身の147km/h!!!!自己最速タイ!!!!!》