No.340:輝く球児達
啓稜学院|201 000 |3
邦南高校|000 101 |2
『球場にお越しの方に、ご連絡致します。ただいま、西口選手の、怪我の手当てをしております。暫くの間、お待ちください。』
《こちらが先ほどのデッドボールのリプレイです。》
《インコースへのストレート、指…ですね。やはり左手の指に直撃していますね。》
鬼頭『翔真、万が一の事態も想定しておけ。』
大場『いいえ。』
鬼頭『?』
大場『西口は戻ってきます。あいつはちょっとの怪我じゃへこたれないっすよ。』
鬼頭『ふっ。確かにな。粘っこい性格してるしな。』
…
木村『!!』
島谷涼『拓磨!!!!!』
西口『おっす。』
島谷涼『大丈夫か!?』
西口『じゃーん。』
島谷涼『それって…、まさか…。』
西口『左手の小指と薬指が折れちまった。』
木村『は!?マジで言ってんのかよ!?』
西口『はい。』
片野『出れるのか?出れないのか。お前の口からはっきりと言え。』
西口『出れるに決まってるじゃないですか。俺がチームを勝たせます。その自信は強く持ってこの試合に臨んでいますよ。』
片野『よし。わかった。なら早くレガースをつけろ。だが、』
西口『??』
片野『お前のプレー次第で交代などできない。ウチは層が薄い。正捕手のお前が抜けたら終わりだ。だからな、』
“出るなら全力プレーは欠かすな。絶対に。どんなことがあってもだ。”
西口『ええ。例え指がちぎれても、俺はこのポジションを全うしますよ。』
『『『ウワァァォァァァァァ!!!!!』』』
パチパチパチパチパチパチ…!!!
《戻ってきました西口拓磨!!!!白い歯溢れます!!!!観衆からも拍手が舞い上がっています!!!!!》
『がんばれがんばれ西口っ!!!!!がんばれがんばれ西口っ!!!!がんばれがんばれ西口っ!!!!』
『敵チームの啓稜学院ベンチ、そして啓稜学院側の一塁スタンドからも大きな、大きな拍手です!!!!』
棟方『そうこなくっちゃな。』
氷『こんな最高のショー、台無しにしたくないからな。』
南條『けっ。俺は代わって欲しかったね。冗談だけど!』
秋葉『まあお前は今日西口のリードにまんまハマってるからな。』
大場『出るってことは大丈夫ってことなんだよな?』
西口『勿論です。思いっきりストレート投げ込んでくれていいですからね。』
大場『おっす。』
西口『僕の心配は無用なんで、とりあえずこの回、点を取った次のイニング、しっかりいきましょう。打順も1番からの好打順なんで要注意です。』
大場『おっけ。一緒に乗り越えるぞ。この回。』
『7回表、啓稜学院の攻撃は、1番、ショート、氷くん。』
《さあここで今日3打数2安打で今大会甲子園最多安打記録となる20本のヒットを記録している氷政成が打席に入ります。この回の啓稜学院の打順は1番から。》
氷(ベンチからの指示はなし。西口の治療の件で少し間が空いてゲームのバタバタした雰囲気も落ち着いた。)
ビュゴォォォーーーゥゥッッッーーーッ!!!
氷(もういっちょ、バタついてもらいたいね!!!!)
《セーフティバントを仕掛けてきた!!!》
西口(マジか!!今大会、氷は全部ヒッティングでのヒットだった!!セーフティバントの意識が欠けてた!!!!やられる!!!)
コンッ!!!!
氷(なっ!?!?)
西口(!!!!)
大場(!!!!)
《これは少し小フライになってしまった!!!!!》
大場『オッケーーっ!!!!』
西口『翔真先輩!!!』
大場『うらぁぁーーっっ!!!』
《ピッチャー大場、自らノーバウンドで捕ろうとダイブ!!!!!!!》
ズザザザザザ!!!!!!
西口(!!)
大場『くっそ!!!』
《ボールをこぼした!!!!!バッターランナー氷はそのまま一塁ベースを駆け抜ける!!!!内野安打で今大会自身21安打目で大会記録をさらに更新します!!!!》
大場『すまん。』
西口『ナイスガッツです。笑顔でいきましょ。』
《氷の意表を突くセーフティバント、小フライになったところをノーバウンドでとろうとダイブ。1度はグラブに入りかけたんですが、最後は弾いてしまいました。ノーアウトのランナーが啓稜学院は出塁です。》
『2番、セカンド、中川くん。』
赤嶋『今のはかなり痛いな…。』
氷(西口はどうだ?本当になんも影響ないのか?)
中川(サインは強行。さっきの回、手堅くいこうとしたところを失敗した。今度は絶対に点を取る。)
氷(西口の状態を確かめたい。恭輔、初球は絶対に見逃せよ。)
中川(あー氷サンの目つきが怖い。こりゃなんかしたいんだろう。初球は見逃す。)
《大場がセットポジションから第1球!!!!》
ビュゴォォォーーーゥゥッッッーーーッ!!!
ズッッバァァーーーーーッッッーーンッ!!!
西口(二次リードがデカイ!!!!)
ビュッッッッ!!!!!!
《キャッチャー西口の一塁リターン!!!!!》
ズバン!!!
『セーフ!!!!』
中川(なるほどね。西口の状態が見たかったのね。)
氷(このスローを見る限り左手の影響は大きいわけではないか。どうやらここから隙は生まれなさそうだ。)
中川(てかおかげで初球ストライク取られちゃったよ。もー氷サンのせい。)
ビュゴォォォーーーゥゥッッッーーーッ!!!
中川(ま、どっちでもいいんだけどね!!!)
カキィィィーーーーッッッンッッ!!!!
《外角のストレートを逆方向に強打!!!!!》
西口(まずい!!!!ノーアウトで得点圏に進まれたらやばい!!!次はクリーンナップなんだ!!!!)
パシィィィ!!!!!!
大場『さっすが!!!!!』
《サード島谷倫暁横っ飛び!!!!!!ダイレクトキャッチ!!!!!中川の痛烈な打球をファインプレー!!!!!本来ならノーアウト一二塁のところをワンナウト一塁にしました!!!!さすがは守備力が自慢、地方大会ではショートを守っていた島谷倫暁!!!》
西口『ナイスサード!!!!』
大場『助かりました!!!!』
島谷倫『おう!全然打球来ねーぞ!もっと打たせてこい!!!』