No.337:熱い心と冷たい頭を持て。
コン!!!
《2番副島が今度はバントを上手く決めてワンナウト二塁!!!!得点圏にランナーを進めてここから中軸を迎えます!!!!》
『3番、ピッチャー、大場くん。』
赤嶋『大場はこれまでの投球を見る限り、疲労等考えても健闘していると言えるだろう。』
霞『啓稜相手に今んとこ6回3失点。一応クオリティスタートと言われる投球だしね。』
桜沢『邦南でずっと怪我でも離脱せず、中心となって働いてきた大場だぜ?』
水仙『アイツはこーゆー場面で打てる打者だ。苦しい経験をしてきて、それを一つ一つ乗り越えてきた。』
赤嶋『打てよ。大場。このチャンス逃せねーぞ。』
《この回先頭の小宮のヒット、そして、2番の副島が送ってワンナウト二塁で打席にはエースの大場翔真!!!邦南としては少ないチャンスを確実にものにしたいところ!!!》
棟方(邦南としてもこの回この打順、なんとしてでも点を取りたいだろう。だからこそ、こっちとしては絶対に点をやれない。この回無得点に抑えれば、邦南的には大ダメージだ。)
大場(気合いでなんとかなる相手じゃねえ…。こーゆー時こそ…)
“熱い心と冷たい頭を持て。”
棟方(火傷はしたくない。この場面こそ丁寧にいくぞ。翔冴。)
大場(考えろ。考えるんだ。棟方は滅茶苦茶いいキャッチャーだ。だからこそ、だからこそその配球には一つ一つ理由があるはずだ。その球を選ぶ、理由が。)
ズッッバァァーーーーーッッッーーンッ!!!
『ボール!!!!』
【141km/h】
大場(初球は左の俺から見れば逃げていくシュート。もし俺が啓稜のマウンドに立っていたとする。この場面、試合の流れ的にも、特に点を与えてはいけないイニングだと思うだろう。)
(甘い球は厳禁。特にインコースは甘くなったら長打を食らい、そして同点の機会まで与えてしまう。)
ビュゥゥゥッッーーーッーーッッ!!!
大場(コースは外角!!!そして、哲都がした様に…)
“シャープに!!!!振り抜く!!!!!”
カキィィィーーーーッッーーーッッッンッッ!!!!
棟方(何!?)
《打ったァァァァァッッッ!!!!!!打球は左中間!!!!浜風にも乗る!!!!大きいぞーっっーーー!!!!!!》
ボンッ!!!!
《フェンスダイレクト!!!!!!!二塁ランナー小宮はもちろんホームイン!!!!!バッターランナー大場は三塁へ!!!!!!》
棟方(くっ…また外角に張られた…。)
《タイムリースリーベース!!!!3番大場の左中間へのタイムリースリーベース!!!!2対3!!!!邦南高校、この回1点差に縮めてきた!!!!なおワンナウト三塁で打席には4番!!!!》
『4番、セカンド、鬼頭くん。』
水仙『やっぱ打ったな。大場。』
桜沢『だな!さすがだわ!』
赤嶋『…気に入らん。』
霞『?』
水仙『何がだよ。』
赤嶋『啓稜のキャッチャー、棟方についてだ。』
霞『どういうこと?』
赤嶋『ドラゴンのリードが慎重すぎる。もちろん、ドラゴンをリードするときに慎重さは必須だ。ドラゴンの投げたいように投げたらある程度は間違いなく抑えられるだろうが、大事なところで痛打されそうだしな。だけど、慎重すぎるんだ。棟方は。』
水仙『慎重すぎる…?』
赤嶋『さっきの西口のリードなんか俺は素晴らしいと思うよ。満塁でドラゴンを見逃し三振に仕留めた打席かな。あの打席は、邦南だって絶対に点をやれない場面だった。慎重に攻めたいだろう。だけど、西口はひたすらインコースを徹底して攻めた。インコースを攻めて攻めて攻め続けた結果、最後はアウトロー。強気で攻め続け、最後は慎重に、アウトローってことだ。』
水仙『今の棟方はダメってことか?』
赤嶋『ま、そーゆーことかな。打たれないように気を遣いすぎて、リードが空回りしている。慎重ってのは良いときもあれば、悪いときもある。強気にも同じことは言えるが、要は使い分けだ。棟方はいま慎重一辺倒なんだよ。』