No.334:日本一のライパチ
《2点リードの啓稜学院の6回表の攻撃!!ワンナウトから7番岩崎の自身甲子園初ヒットとなるツーベースでランナーは二塁!!ここで打席には今大会打率6割の恐怖の8番我妻!!!》
西口(おとといのミーティングでも話したようにこの8番我妻はバントが非常に少ない。セーフティーバントの可能性は低く、打ってくるだろう。)
赤嶋(状況的にはヒッティングなら引っ張りで最低でも進塁打をしてくるだろう。)
(あくまでセオリーでの話だがな。)
西口(ヒッティングならライト方向へのゴロだ。)
我妻(俺がバントしない打者だって情報は知っているだろうな。もちろん。ま、しようと思えば出来るんだけどあんまり上手くないってだけやけどね。)
(バントしないって情報を持っている。だったら絞るっしょ。)
赤嶋(単調にいくなよ…。外角読まれてるぞ。)
西口(外角ならライト方向に打ちにくい!!)
ビュゴォォォーーーゥゥッッッーーーッ!!!
我妻『っ!!!!』
ズッッバァァーーーーーッッッーーンッ!!!
【141km/h】
『ストライーク!!!』
西口(ふっ。)
《初球はインコースへのストレート!!!見逃し!!!まずワンストライク取ってきました!!!》
我妻(くっ…。悟ったか…。)
赤嶋(さすがのリードだな。西口。外角読まれていることを読んだ。これでこの打席の主導権は西口だ。)
我妻(いや大丈夫だ、落ち着け。最低でもライト方向に打てばランナーは進める。今度はどのゾーンも意識しないで…)
ビュゴォォォーーーゥゥッッッーーーッ!
我妻(来た球を、全部引っ張り!!)
ズッッバァァーーーーーッッッーーンッ!
《今度はインコースへのフォークボール!!!空振り!!!!》
我妻(くそが!!)
《2球で一気に追い込まれた我妻!!最低でもランナーを二塁に進めたいところ!!!》
岩崎(別に自分、脚力には自信あるんで、自由に打ってもらっていいっすよ、我妻サン。)
《おっと…これは…?》
片野『副島!!!!!』
《片野監督が…ライトの副島選手を呼びま…すかね??》
我妻『!!』
《これは!!ライトの副島選手を一二塁間にポジショニングしました!!!なんと、なんと、この場面で、、、》
《内野5人シフト!!!!》
赤嶋『なるほどな。副島はセカンドも守れるし。』
《しかし外野に残ったセンターとレフトは全くポジションを変えません!!!ライトが一二塁に入っただけ!!!つまり…ライトには誰もプレーヤーが立っていません!!!》
西口(地方大会の時から機会があればやるかもしれないと言ってたやつだ。)
秋葉『憲明!!!そんなシフトならライトにフライ打ち上げちまえ!!!おまえの足ならランニングホームランだ!!!』
我妻(っせーな!!そんな簡単じゃねーんだよ!!!)
赤嶋(端から見ればライトに打ち上げればいいと思うだろうな。だが…)
(アウトコースをフライあげるのは比較的楽なんだが…インコースをフライあげるのはなかなか難しいことなんだよな。ましてや大場のスピンの利いたストレートなら特にな。)
(しかもこの状況、ゴロを打って突破するのはおそらくかなり厳しい。そしていま、レフト方向はいつもと全く同じだ。)
(本格的に追い込まれたな。我妻。おそらくこの打席打ち取られたら精神的にも結構ダメージでかいだろう。)
西口(カウントツーナッシングですが、落ち着かせるつもりはありません!3球勝負ですよ!)
我妻(俺はなぜ小技が出来ないのにこの打線で8番にいるのか…)
ビュゴォォォーーーゥゥッッッーーーッ!!!
《インコース直球!!!》
西口(成す術無く終われ!!!!)
我妻(打撃を磨きあげて手に入れたこの俺のポジション、だったらその1番自信あるバットコントロールで!!!!球種とコースが読めるなら…)
“俺なら打てる!!!!!”
西口(よし!体、右肩が開いた!!!!もらった!!!)
カキィィィーーーーッッーーーッッッンッッ!!
西口(はっ!?!?)
《流した!!!!!打球は三遊間を破る!!!!》
西口『バックホームです!!!!』
《おっと!!ランナー止まった!!!!松坂の好返球にランナー進めず!!》
西口(今のインコース直球を…)
大場(流してレフト前だと…?)
《内野5人シフトを引かれながら、インコース直球を流してレフト前ヒットにしました我妻!!!!さすがは6割男!!!抜群のバットコントロール!!!!》
赤嶋(あえてインコースのボールに体を開くことによって流して強い打球を打つことに成功したか。下位打線とは思えんな…。)
《ワンナウト二塁からワンナウト一三塁となりました!!!チャンス拡大の啓稜学院!!、ここで打席には9番、この前の試合までは主に2番を打っていた秋葉!!!》