No.332:決勝の後半戦スタート
片野『西口、大場の調子はどうだ?』
西口『疲労から少し肘の位置が下がって全体的に球が浮いてきています。まだ球に気持ちがこもっていることは感じますが、完投は厳しいかもしれません。』
片野『球速も落ちてきているがストレートはどうだ?』
西口『ストレートは球速こそ落ちていますが、ノビ、質はかなり高いです。』
片野『そのストレートの質が少しでも落ちてきたと感じたらすぐに合図を送れ。それが継投のタイミングの1つの重要なポイントだ。』
西口『はい。継投の場合、哲都か博行先輩のどちらでいくつもりですか?』
片野『そこはその場面場面で臨機応変に考える。もちろん、俺は勝つための投手起用を最優先に考える。大場が最適だと思ったら、大場続投もありえる。それも視野に入れておけ。』
西口『わかりました。』
南條『くっそ!くっそ!くっそ!』
棟方『まあまあ。打てない時もあるって。切り替えろ。まだ試合は終わってない。次打てば問題ない。』
南條『分かってるけどよ…。』
棟方『おいおい、翔冴を見習えよ。あいつも満塁の場面で三振してるけどもう切り替えてるだろ。』
南條『た、確かに。』
棟方『おっ!?こりゃもしかして翔冴の方が大人なのか!!』
南條『ちょ、それだけはやめてくれ。まじで切り替えるから。それだけはホントごめんだわ。』
青龍寺『あ?なんかいったかてめえら。』
棟方『良かったな翔冴!由毅哉越えだ!』
南條『おい!それだけはやめてくれ!まじ翔冴に負けてるとかそれは問題だから!!』
青龍寺『は?てめえは生まれたときから俺より格下だろ?』
棟方『出ました青龍寺翔冴の俺様発言!』
南條『黙れ二人とも!とりあえず翔冴は特に黙れそれはありえない。』
棟方『はははは!!』
青龍寺『悔しかったら胎児からやり直せ。』
南條『ちょ、おま、それはありえない!!』
川越『5回の攻防まで終わったが、邦南が予想以上に健闘してるな。』
野中『でもまぁ、啓稜ペースと言わざるを得ないか…。』
川越『そうだな。だが、啓稜もうまく攻撃しきれていない。あの邦南バッテリーの新球種攻めはスゴかったな。』
野中『あぁ。融通の利いたいいリードをしたな。西口。』
川越『今までの得点は両チームともソロホームランのみ。すでに両チーム合わせて4本だ。』
野中『空中戦では分が悪い。邦南は攻撃を変えた方がいい。っつっても青龍寺がバリエーションのあるリードの幅のあるピッチングをしているからな。きついっちゃキツイかもしれんが…。』
川越『キツイなんて言ってられねえよ。負けたらおわりなんだ。これを乗り越えてもらわなきゃな。邦南には。』
野中『まずは、この6回表の守備、か。』
川越『あぁ。5回が終わるとグラウンド整備が入っていったん間が空いて試合の流れがわからなくなる。』
野中『実際6回の表はかなり得点が入りやすい。特に高校野球ではそれが顕著。』
川越『初回のようにホームラン2本、なんてことになったらだいぶ邦南はキツイ。青龍寺は攻略できたとしても3点前後しか取れないだろう。』
野中『3点も取れるかわからんが…とにかくこの2点差という得点差がもっと開いてしまえば、邦南は…。』
川越『そのためにも、この6回の表だ。ここで、ここで、絶対に大場が無失点に抑えなければいけない。ここまでの戦いぶりは評価に値するが、このままじゃ善戦しただけで、勝てない。』
野中『勝つために…ここから無失点は絶対条件ってことか…。』
川越『あぁ。』
野中『頼むぞ。大場。』
『6回の表、啓稜学院高校の攻撃は、6番、センター、寺原くん。』
寺原『この回…勝負をつける。』
“長打は要らない。強い打球をライナーで。”
岩崎(ボスからの指示は逆方向への強いライナー。長打は狙わずこの回は全員がシャープなスイングで繋ぎ、得点を複数点取ること。)
赤嶋(啓稜としても自分達の思うような攻撃ができていないのは確かだ。おそらく攻撃の仕方を今までとは変えてくる。だが、それがどんな種類かにもよるが…)
“長打を捨てて全員が繋ぐ意識で攻められたら…。ぶっちゃけキツイかもな…。邦南を応援する俺からすればこの予想が当たってほしくはないが。”
大学のテストが案外キツイ(笑)