No.326:龍伝-chapter SIX-
時は少し経ち、部員の暴力事件で夏の府大会を途中から出場辞退した啓稜学院野球部の新チームは秋の大会初戦を迎えた。
『えっ、啓稜、秋出んの?』
『そんな短期間で反省できるもんかね?』
『大体2年も暴力に参加してたやついるらしいじゃん。なんか処分甘くない?』
『俺もそう思う。てか対外試合禁止とかじゃないの?普通。』
甲子園春夏合わせて42回の出場、春3回、夏4回の全国制覇経験のある全国屈指の名門校でもあるが、今回の一件で啓稜学院を見る目は冷ややかなものがあった。
新キャプテンには1年秋からエースで4番の迫田進が選ばれた。
『勝つんやで!!淀学!!!』
『啓稜なんかぶっ倒したらんかい!!』
『あんたらはもう1年正座でもしたらどうなんか!?啓稜!』
…
カキィィーーーッーーーンッ!!!
『あぁぁぁぁ!!!』
『先に点取られてまった!!!』
『延長15回の裏、淀川学院の攻撃は、1番、センター、糸田くん。』
『『『淀学!!!淀学!!!淀学!!!』』』
『『『淀学!!!淀学!!!淀学!!!』』』
『『『淀学!!!淀学!!!淀学!!!』』』
迫田進『なんやねん…コレ…。』
“こんなん…高校野球とちゃうやろ!!!”
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
啓稜学院|000 000 000 000 001|1
淀川学院|000 000 000 000 000|0
『なんや。結局啓稜かいな。』
『ホンマや。野球だけやってればエエってわけでもないのにな。人間としてちゃんとせな。』
迫田進『こんなに、野球が辛かったの、初めてだ…。』
青龍寺『なんだ。ヘコんでんのか。』
迫田進『…そりゃ、ヘコむっつーか、苦しいんだよ。』
青龍寺『…。まあそれもそうか。』
迫田進『なんだよ。言いたいことがあんなら言えよ。』
青龍寺『…自分の実力で認めさせてやればいいんじゃね。』
迫田進『?』
青龍寺『俺はいつもそうやってきた。まあ、南阪のころは結局キャプテンに認められなくて何度も衝突したけどな。』
迫田進『実力で認めさせる?』
青龍寺『あぁ。だけど認めてもらうために俺なりに人一倍、いや、それ以上の努力はしてきたつもりだ。結局認められなかったが、そのために努力したことに俺は悔いはない。』
迫田進『なるほどな。確かにそーゆー考え方もできる。』
青龍寺『そうだ。コレは成長するチャンスでもある。前向きに考えていこーぜ。』
迫田進『オマエも…たまには良いこと言うんだな。』
青龍寺『うっせーぞカス。』
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
『ストライーク!!!バッターアウッ!!!』
『ノ、ノーヒットノーラン…?』
『迫田…マジ半端なくね!?』
『いや、でも次は桐学だべ?次で負けるよどーせ。だって今年の夏スタメン全員2年生で甲子園ベスト4だぜ?』
『だな。桐学には負けてもらっちゃ困るな。』
『あの強力打線なら迫田なんてすぐノックアウトよ!』
『7回の表、桐陽学館大阪の攻撃は、2番、センター、白水くん。』
白水『コイツだけは…マジでヤバイ…。』
藤浪『誰かまずヒットを…。』
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
『ストライーク!!!』
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
『ストライーク!!!バッターアウッ!!!』
『3番、ライト、水本くん。』
水本『こんなところで…負けるわけには…いかねーんだよ!!!』
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
水本『…。』
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
青龍寺『打てるもんなら…』
“打てやカス!!!!!”
カァァクゥゥッッ!!!
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
水本『くっ…ここでスライダー!?』
『青龍寺…半端ねえ…。』
『迫田だけじゃなくて…そうか青龍寺もいたか…。』
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
『ストライーク!!!バッターアウッ!!!』
『『オォォォォオオォォォ!!!』』
『この回もノーヒットピッチングだってよ!!』
『啓稜、2試合連続のノーノーいけるんちゃう!?』
『9回の表、桐陽学館大阪の攻撃は、8番、ショート、水谷くん。』
…
『9番、ピッチャー、藤浪くん。』
藤浪『こんなところで負けるわけには…甲子園に行かないと!!!』
ズッッバァァァーーーーーッッンッ!!!
藤浪『くっ…。』
…
『1番、キャッチャー、森くん。』
藤浪『頼んだぞ…友哉』
森『はい…。』
…
迫田進『ナイピッチ。公式戦初登板で9回ツーアウトまでノーヒットとかやるじゃん。しかも桐学相手に。』
青龍寺『これで少し俺達への見方が変わるといいんだけどな。』
迫田進『俺も励まされたよ。悔しいけどお前のピッチングにな。実力で周りをもう一度、振り向かせたい。あ、試合後俺は接骨院行ってくるんだけど一緒にいくか?』
青龍寺『不思議とお前とはなんか気が合う。付き合ってやる。』






