No.319:邦南の頭脳、西口拓磨!
《ノーアウト満塁から4番の青龍寺を見逃し三振に仕留めた大場、今度はワンナウト満塁で5番の南條との対決です!!2年生剛腕サウスポー大場との今日3回目の対決!!!》
西口(1打席目はカーブを引っかけてショートゴロダブルプレー。第2打席目もストレートに押し負けてセカンドフライ。ここまではおれらが完全にこいつは抑えてる。)
棟方(打てよ。由毅哉。)
西口(ストレートに意識がいっているはずだ。初球は空振りを取るフォークで。)
《初球、投げる!!!!》
ビュゴォォォゥッッッッッ!!!!!
カァァァァクゥゥゥッッッ!!!
南條(なっ!?フォークか!!)
西口(?)
カーーーッンッ!!!
《これはフォークにタイミング合わずファール。初球からストライクを取れるところにこのバッテリーのレベルの高さを感じます。》
西口(なるほどね。こりゃ都合がいい。)
赤嶋(…、なるほど南條はこの程度の打者か…。)
(“このバッターで切れる。”)
西口(今、間違いなく南條はストレート狙いだった。そして狙いとは違うフォークに反応してファール。一見、翔真先輩のフォークにストレート狙いでついていったように見えるが、それは実はもうひとつのことを意味している。)
(こいつはクレバーな選手では無い、ってことをね。)
西口(今のは初球で、カウントは打者的にも余裕がある。にもかかわらず、狙いとは違うフォークに無理に当てに行った。まあ、普通の打者なら当ても出来ずに空振りなんだけどね。これは、器用だからじゃない。)
(冷静さを欠いているから。頭に余裕がないからだ。)
西口(ワンナウト満塁のこの場面、ある意味最もゲッツーのとりやすい場面でもある。この場面で絶対にダメなのは内野ゴロ。これは周知の事実。内野ゴロか三振だったら三振のがいい。ツーストライクからカットしにいくならいい。だが、カウントまっさらの状況で今のフォークをわざわざ当てにいくバッティングをしなくてもいいはずだ。ストレートのタイミングで、豪快に空振りでもよかったはずだ。翔真先輩にはツーシームやシュートなどの小さく変化する球は無いんだから。)
ビュゴォォォゥッッッッッ!!!!!
西口(この低めのボールのストレート。打ってくれれば儲けもん。こいつに凝った攻めはむしろ逆効果。狙いのストレートはボールで、フォークをストライクゾーンに。これでいける。)
カーン!!!
《ファールボール!!!一気に追い込んできました!!今のは低めへのボール気味のストレートですがファールです。》
西口(カウントは打者的には最悪だ。そして南條は今までの打席でも結果を残せていない。もうなんか、気分は大ピンチって感じでしょ?大チャンスなのにね。)
(初球で空振りをとる変化量の大きいフォークを投げちゃってますから、もっともっと変化量の大きいやつ、頼みます。)
《さあ、カウントツーナッシングからの3球目!!》
西口(トコトン、落としてください!!)
ビュゴォォォゥッッッッッ!!!!!
南條(真ん中高め!!!…、!?…いや、違う!!)
“またフォークか!!くっそ…バットが止まんねえ…?”
西口(よし!やっぱ反応した!!)
南條(いや、でも初球のフォークがあの変化なら、これなら体勢崩されても外野フライなら…!)
カァァァァクゥゥゥッッッ!!!!!
南條(は!?おかしいやろ!?)
“まだ…落ちるのか…???”
カァァーーッン!!!
西口『…!!!』
《ストライクからボールになるフォークを引っかけた!!!!打球はホームゲッツーのシフトを敷いていたサードの島谷倫暁の正面!!!捕って素早く本塁転送、そして西口もすぐに一塁へ!!!!》
『アウトォォォ!!!!!』
『『『ウオォォォォオォォオオォォォォ!!!!』』』
《なんとまさかの5番南條ダブルプレー!!!!啓稜学院、ノーアウト満塁で4番青龍寺、5番南條の強力クリーンナップで得点奪えず!!!!邦南大場は青龍寺には強気のストレート勝負で見逃し三振、一方南條には一転して変化球でダブルプレーに仕留めた!!!!》
赤嶋(なんだ。西口め。いいキャッチャーじゃねえかよ。打者をよく分析してるし、その場面ごとのそれぞれの状況で打者がするべきことをよく理解してやがる。1年坊主とは思えんな。)
《ノーアウト満塁の大ピンチを凌いだ邦南!!!!!よい流れのまま、5回の裏の攻撃に移ります!!!!》