No.317:絶対にやれない1点
『5回の表、啓稜学院高校の攻撃は、1番、ショート、氷くん。』
《ここで今大会既に夏の甲子園タイ記録となる19本目のヒットをホームランで記録しました、氷が打席に入ります。第2打席もレフトへヒット性の当たりを放っています。》
赤嶋『大場は確かにいま理想のフォームで投げれているが…』
霞『2回に150km/hを記録してからもうスピードは落ちてきてるよね。残念だけど。』
水仙『体感では150km/h以上に感じる大場の真っ直ぐも…啓稜ならすぐに慣れて対応してくるだろ…。』
桜沢『それって…』
鳴島剣『捕まるのも時間の問題ってことだよ~ん。』
氷(1、2打席ともに俺は大場を捕らえている。いつも通りの打撃でいい。何も変えなくていい。)
ビュゴォォォゥッッッッッ!!!!
氷(…!)
ズバァァァーーーーッーーンッッ!!
≪141km/h≫
氷(案外伸びてきてやがる。反応が遅れて手がでなかった。)
夏井『なんだ。バテてんじゃん。』
青馬『いやそれはしゃーない。』
西口(ストレートは走ってる。フォークも調子がいい。球速以外はいつもよりいいくらいだ。これならいける!)
赤嶋『ただもうひとつ心配なのが…』
ビュゴォォォゥッッッッッ!!!!
大場『あっ!!』
西口(あかん!!まずい!)
“フォークが浮いた!!!”
氷(甘い!!!)
カキィィーーーーッンッ!!!!!
《外角高めに浮いたフォークを逆らわずに綺麗に左中間へ!!!!!これは長打になる!!!!》
西口(ふぅ…。ノーアウトのランナーか…。)
赤嶋(球速に現れているように…大場の上半身…特に肩への疲労も相当なものだろう。この回から肘が少し低い。だから球が浮く。)
《この回先頭の氷の左中間へのツーベースでノーアウトランナー二塁といきなりのチャンスです。ここで打席には2番の中川。啓稜学院は今大会ノーアウト二塁というケースが8回ありまして送りバントのケースは1度のみ。打席には今日初回からホームランの強打者中川。》
中川(今日は2番だし、2番っぽいことしちゃおっかな。)
《打席の中川は珍しくバントの構え。二点リードの啓稜学院の5回の表の攻撃。ここは手堅く攻めてくるのか?》
西口(ヒッティングもありますからね。)
大場(セオリーならここは最低でも右方向へのゴロでランナーを確実に三塁に送ってくるはず。)
ビュゴォォォゥッッッッッ!!!!
ズバァァァーーーーッーーーッン!!!!
《バットを引いた!!》
『ボール!!』
≪136km/h≫
中川(セットになってまた球速が落ちたな。)
ビュゴォォォゥッッッッッ!!!!!
中川(2番打者として揺さぶろうと思ったけどやーめた。)
《バットを引いた!!!バスターだ!!!》
西口(ヒッティングか!!!!)
中川(とはいっても状況的にゴロ打つけどね。)
カキィィーーーーッンッ!!!!!
《センター返し!!!!打球は二遊間!!!》
鬼頭(捕れる!!!!俺なら捕れる!!!!)
西口『博行先輩!!!!!』
《セカンド鬼頭捕れるか!?逆シングルハンド!!!》
鬼頭『おりゃぁ!!』
バスッ!!!
鬼頭『くっそ…!』
《あーっと!!!球際ギリギリで追い付きましたが最後は弾いてしまった!!!記録はヒット!!!!セカンドへの内野安打!!!!ノーアウト一三塁!!!》
霞『さっきの氷クンのプレーから乗ってるね。啓稜。』
水仙『1点が重い邦南としては1点たりともあげたくねぇ…。』
霞『なんといっても点を取った直後のイニングだからね。少しだが流れを引き寄せたしさ。』
《邦南高校、この試合初めての伝令です。》
木村『次の棟方はチャンスに強い。次の1点は痛すぎる。』
西口『それってつまり…』
木村『棟方敬遠。満塁にして青龍寺勝負だ。』