No.312:活きるフォーシーム
『4回の表、啓稜学院高校の攻撃は、7番、サード、岩崎くん。』
《先程は初球をとらえてセンターライナーの岩崎遼太郎がバッターボックスに入ります。》
岩崎(さっきの打席からして初球をフォーシームでもってくるはずがない。初球は様子見。)
ビュゴォォォォウゥゥゥゥッッッッ!!!!!
カァァァァァクゥゥゥゥッ!!!
ズッッバァァァーーーーッッーンッ!!
西口(見てきたか。)
『ボール!!』
岩崎(なるほどね。打ち気でいったらたとえいま変化球狙いでも打てたかは怪しい。それほどのスプリット。)
ビュゴォォォォウゥゥゥゥッッッッ!!!!!
岩崎(またアウトコース!今度は直球か??)
カァァクウツッッッッ!!!
岩崎(いやスプリット!さっきと同じコース故にこれはボール!!)
ピクッッ
西口(フォークにしっかり反応してバットを止めたか。でもね、)
『ストライーク!!』
岩崎(…!?)
西口(フォークは多種類あるって情報は持ってるっしょ?)
岩崎(なるほどね。変化量を変えてきた。)
《二球目のフォークはストライクで1ストライク1ボール。》
岩崎(いい投手だ。でも残念なのがこのスプリットは変化量に応じてスピードが落ちる。まあ変わっても3マイルから5マイル程だけどね。コツさえつかめば見分けるのも可能。)
西口(よし、これでこいつはフォークの対応に頭がいっぱいだ。ストレートで追い込めばもうこいつが打つことはできない。)
岩崎(このスプリットはガッツリ意識しないと対応に困る。となると活きてくるのがこいつのフォーシーム。でも俺なら大丈夫だ。93マイル程度のロートルなフォーシームなんて意識しなくても打てる。)
ビュゴォォォォウゥゥゥゥッッッッ!!!!!
岩崎(っ!?!?)
ズッッバァァァーーーーッッーンッ!!!!
『ストライク!!』
岩崎(コイツ…。)
《今度はインコースへズバッと攻めていきました!ストレートは141km/h!!》
岩崎(141km/h…88マイル…??んなアホな…。俺が88マイルに怯んだ…?)
西口(驚きを隠せていないな。速球打ちにはもとから自信があったように見える。が、)
ビュゴォォォォウゥゥッ!
カクッッ!
ズッッッバァァーーンッ!!
岩崎(…。)
『ストライークッッ!!!』
《見逃し三振!!!最後は大場翔真のカーブにバット出ず!!!》
西口(ストレートに意識持っていかれ過ぎだよね。)
岩崎(ほう。完全に裏をかかれた。やられたぜ。スプリッター大場。)
…
カキーーッッンッ!
《打ったがこれはボテボテセカンドゴロ。セカンド鬼頭が難なくさばいてスリーアウトチェンジ。大場翔真、下位打線から始まるこの回を三者凡退に抑えました。》
青馬『やっぱピッチャーはストレートが生きてナンボだね。』
夏井『だな。そんでもって今の回を0でいけたのはでかいな。』
青馬『そろそろ2巡目だし、無策ってわけにはいかないよね。邦南自慢の打撃陣。』
『4回の裏、邦南高校の攻撃は、1番、ショート、小宮くん。』
小宮(こんなピッチャーとこの大舞台で対決できるんだ。楽しもう。)
“勝負だ!!!!青龍寺!!!!!”