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308/382

No.308:猫騙し

『3回の表、啓稜学院高校の攻撃は、3番、キャッチャー、棟方くん。』






棟方(さっきの回はストレート押しだったが…何かつっかかる…。)






(初回のスライダーらしき球はなんだ?)





ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!





棟方(む!?)





カクッッッ!!!




棟方(なんだこの変化は?)





ズバァァーーーッッンッ!!!







『ストライク!!!』




西口(うお…。)

大場(ストライク入ったよ…。奇跡…。)






《初球はカーブ…ではないのでしょうか?ストライクを取りましたが…こちらがリプレイです。》






西口(案外ストライクが入るのか?)


大場(俺ってば本番に強いぜ。)






《これは…ナックルのような…人差し指と中指だけ爪をボールの縫い目にかけて抜いています。》




棟方(なんだ今の独特の回転の球は…。)







ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!!






棟方(ストレート!!)





カキーーッンッ!!





《これは差し込まれた!!!セカンド鬼頭がさばいてワンナウト!!!》






西口(よし!いけるぞ!!特殊変化球を意識させてストレートを活かす!!)



大場(本格的にナックルカーブ練習しようかな…なんてね。)





棟方(してやられたぜ…。俺が二塁ベースから見た…初回の変化球はスライダーとみて間違いない。今度はナックルカーブのような…変な球種…。)



青龍寺(さっきからどいつもこいつも何してんだ。)


南條(変化球の割合が多いな。そしてなによりフォークじゃない緩い変化球を多投しきてるな…。)





棟方(情報にない突貫工事の変な球種使ってストレートをより速く見せてんのか。問題はこれをどう伝えるか。)







赤嶋『おそらく棟方は気づいているだろう。』


桜沢『何を?』


赤嶋『大場が…第四の球種を使ってる。そしてそれを利用して真っ直ぐを有効にしてる。』


霞『こっからだとよく見えないんだけど…あれってカーブじゃないの?カーブならたまに投げるよね。彼。』


赤嶋『カーブではない。いや、カーブもちょくちょく使ってはいるがそれ以前に今まで一度も投げてない球種も使ってる。』


桜沢『さっきから何いってんの?』


赤嶋『バカは黙って聞け。』


桜沢『はーい。』


水仙『第四の球種…?』




赤嶋『あぁ。ストレート、フォーク、カーブ。これが本来の大場の持ち球だ。この3球種。邦南と対戦することになってより一層深く邦南の選手は調べてあるからこれは間違いない。だが…情報にない第四の球種を今ヤツは使っている。』



水仙『なんで?そんなの博打じゃん。』


赤嶋『ある意味一種の賭けだな。だが何もせず打たれ続けるくらいなら自分達で切り開こうとする意思は伺える。』


霞『確かに情報にない球種を突然使われたらビックリするけど…そんなポンポンストライク入るもんなの?腕の振りとかも変わっちゃいそうだし。』


赤嶋『そこは大場のセンスのおかげって部分もあるだろうな。頭で描いたことをちゃんと実行できる能力とでもいうのか。さすがに曲がりは早いしストライクは入ってもコーナーを突けるコントロールはないっぽい。だからまぁ、意表を突いてるって感じなだけだけど。』


水仙『でもそんなヘボい変化球、啓稜のやつらなら簡単に打てるんじゃない?』



赤嶋『それがそーでもない。逆に啓稜だから通用してるのかもしれんな。』


霞『なんで?』


赤嶋『啓稜は絶対的王者だ。自分達の野球をしっかり持ってる。それは横綱相撲だ。相手の攻めをしっかりと受けとめる。そこから自分の攻めを行う。』


水仙『うん。』



赤嶋『“相手の攻めをしっかりと受けとめる。”ここがポイントだ。』



桜沢『?』





赤嶋『啓稜のようなチームはチームとしてはもちろん、打者個人としても、新情報に関してあたふたせず、それが何かを見極める。』


霞『つまり?』


赤嶋『新情報…つまり第四の球種だ。あの曲がりの早い球種はすぐに情報外の球種だとわかる。そしてそれが何かを見極めようとする。そこに罠がある。その新情報を意識したとたん、勢いのあるストレートには不利になるってことだ。』


水仙『なるほど!!』

霞『頭也すごい!』






西口(青龍寺にも、初球はナックルカーブ!!)



ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!




大場(おっと!!)





ズバン!!




『ボール!』


大場(抜けちゃったかー。)


西口(まあしゃーないです。これはストライクかボールかとか関係ないです。ストレートをより活かすためにやってるんです。)




《大きく外れてボール!!これも抜けましたが…これもナックルのような球種。邦南バッテリー、今までとは配球を変えてきています。》



青龍寺(なるほどな。それで俺達を乱そうとしてるってことな。)




棟方『お前たち…わかってるな?』



南條『もちろーん。カズの打席で気付いたよ。』


寺原『とんだ小細工使ってきてますね。』


秋葉『アレは反応で打てそうだし、放っておけばいいか。』


棟方『あぁ。初回と今の回の俺の打席、青龍寺の打席で使ってきてる謎の球種は全く意識する必要はない。その正体は…』






カキィィィーーーーッッッーーンッッ!!!!


























ボサッッ…












《いったァァァァァァァァァ!!!!!!!》





棟方『ただの猫騙しだ。』
















《二球目のスライダーを文句なし!!!!!バックスクリーンへの大会新記録となる第7号のホームラン!!!!!!!!》









西口(まさかもうばれちゃった?)




大場(そうみたいだね。)







《今、青龍寺、ホームイン!!!!この甲子園の歴史に名を残す、青龍寺翔冴の、第7号ホームラン!!!!!!!!!3対0!!!!啓稜学院、3回表に追加点!!!!!!》











大場『なんか…吹っ切れたわ。』


西口『…え?』


大場『小細工じゃ通用しない相手だってことだよ。』


西口『…。こっからどうします?』



大場『コイツも使ってやってくれよ。』




大場がフォークの握りを西口に見せる。






西口『下村フォークっすね。』



大場『そ。』




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