No.305:希望、絶望、そして希望
『1回の裏、邦南高校の攻撃は、1番、ショート、小宮くん。』
小宮(初回、なんとか拓磨のリードのお陰で2点で済んだ。ここで1点でも取れば…試合の流れをイーブンにできる。)
《マウンド上、青龍寺、最速156km/hです。それでいて、変化球も素晴らしい球を持っています。甲子園では防御率なんと0.38と無敵の投球。》
小宮(狙うのは初球…)
《第一球…投げる!!!!!!!!》
ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!!!!
小宮(このストレート!!!!)
ズッッッバァァァーーーッッンッッ!!!!
≪156km/h≫
小宮(くっ…。)
《いきなり自己最速タイが出ました156km/h!!!!小宮も初球から積極的に振ってきましたが空振りです!》
小宮(こりゃ随分と速いね…。全盛期の博行先輩とエースの座を争っていただけのことはある…。でも博行先輩とは違って怪我無く高校野球をやってきた。実力では間違いなく…青龍寺の方が上…。)
《第2球!!!投げる!!!》
ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!
カァァァクゥゥッッ!!!
ブンッッ!!!
《これも空振り!!!切れ味抜群のフォークボール!!!》
小宮(下村フォークのような…曲がるのが凄く遅い…。一級品だ…。)
棟方(初回から使うのもアレだが…、2点しか取れなかった。相手の希望を…打ち砕いてやれ。)
青龍寺(…。)
《追い込んでからの3球目!!!!》
ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!
小宮(外角ストレート!!!!)
カッッッッッ!!!
小宮(え…?)
――――ボール、、、は?――――――
ズッッッバァァァーーーッッンッッ!!!!
『ストライーク!!!』
小宮(…はい?)
《見逃しの三振!!!!小宮、最後は内に切れ込む高速スライダーに手が出ず!!!》
小宮(嘘でしょ…。僕って…左バッターだよ…?なんで右ピッチャーの横曲がりのスライダーが…見えないの…?)
青龍寺(梅坂大輔が横浜学園高校時代に決勝戦でノーヒットノーランを達成した。)
(俺は決勝戦で完全試合を成し遂げる。)
『2番、ライト、副島くん。』
《打席には2番キャプテンの副島。甲子園では準々決勝までの4試合で2安打と不調でしたが一昨日の準決勝、北頼戦では2安打と復調気味です。》
ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!
カクッッ!!
ブンッッ!!!
《これはシンカー!!!いいコースに決めてきます!!》
副島(薮内レベルのシンカー…じゃね?)
ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!
副島(ぬ!?)
カァァァクゥゥッッ!!!
ズッッッバァァァーーーッッンッッ!!!!
《これは青龍寺特有のパワーカーブ!!!大きく浮き上がってからスッと沈みます。》
副島(このカーブはどうしても目線があがっちまう…。くそ…)
“球種が多すぎる!!!!!”
ズッッッバァァァーーーッッンッッ!!!!
≪155km/h≫
『ストライーク!!!』
《これも空振りの三振!!最後はアウトロー直球に中途半端なスイングになってしまった!!!!》
副島(こんなに変化球見せられたら…ヒロレベルのストレートについていけるわけがない…。)
…
ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!
カァァァクゥゥッッ!!!
ブンッ!!!!!!
大場(消えた…見えなかった…。)
《空振りの三振!!!最後はウイニングショットの高速スライダー!!!!青龍寺、初回、強打の邦南高校の1番2番3番を三者連続三球三振に仕留めました!!!!!》
大場(どんなバケモノチームと戦ってんねん…。俺ら…。)
ポンッ
大場の肩を誰かが叩く。
鬼頭『まだ初回の攻防が終わっただけだ。気にせず突っ走れ。』
大場『そうっすね…。まだ初回が終わっただけですね…。』
鬼頭『お前に1つ、早いうちに言っておく。』
大場『…?』
鬼頭『勝っても負けてもこれがこのチームでできる最後の試合だ。』
“愛知代表として胸張って、このチームのエースとして楽しんでプレーしろ。悔いのない強気のピッチングをしろ。”
大場『…!?』
鬼頭『以上。』
大場(…。)
(楽しんでプレーしろ、か。忘れてたよ。ここは甲子園。しかも全国でたった二校しか立つことのできない決勝の舞台。)
(忘れてたよ。俺は俺のすべてを出し切る。)
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
ズッッッバァァァーーーッッンッッ!!!!
≪150km/h≫
《ストレートで今日初めての空振りを奪ってきました!!!!負けんと言わんばかりの150km/h!!!!》