No.304:岩崎遼太郎
《さあ打席には1年生ながらこの決勝の舞台でスタメンを任されました、岩崎です。》
赤嶋『岩崎遼太郎、ね。』
水仙『なんだ、知ってんのか?』
赤嶋『まあ、普通に甲子園に出る選手は全員隅々まで調べてあるから。』
霞『どんな選手なの?』
赤嶋『…』
霞『ねぇ。』
赤嶋『去年の…メキシコのジュニアハイスクールリーグの首位打者、盗塁王の二冠だ。』
霞『は?』
水仙『なんでそんなやつが決勝までスタメンじゃなかったんだよ?』
赤嶋『それも調べてみたが、どうやら首を痛めていたらしい。1年生だし、無理して出すってこともなかったようだ。まぁ、啓稜だし、そんなやつが一人いなくても相当な戦力を持ってるしな。』
霞『ただでさえ強いのに…そんなのアリなの…。』
赤嶋『中南米の猛者がゴロゴロいるリーグで首位打者、盗塁王だからな。身体能力は並みじゃないだろ。』
西口(こいつは情報が少ない。大阪大会でも1回戦に2打席立って代えられてる。そんな実力者でもないだろう。護レベルの啓稜学院の中では抑えるべき人間なのに違いはない。)
赤嶋『油断したらやられる。間違いない。』
霞『その情報…邦南の人には教えてあげたの?』
赤嶋『なんで教えなきゃなんねえんだよ。そんないい人じゃねえよ俺は。そもそも情報収集から試合は始まってる。敵を知らずして戦いに挑もうなんて、ダメだと思うぜ。』
霞『じゃあ、西口くんも調べてあるのかな?』
赤嶋『ま、無理だろ。そもそもどーやってメキシコ中学リーグの打者成績を見ようって気になるんだよ。俺くらいの情報オタクじゃねえとその辺までは網羅してない。普通にメキシコで岩崎遼太郎っつーやつがプレーしてるってのは昔からぼんやり記憶してたよ。そんで啓稜学院のメンバー見たとき、その名前があって、あれ?そーいえばこの名前どっかで見たなー、あっ、メキシコ中学リーグかどっかだっけ…って思って調べてみたらビンゴ。出身中学が大阪の金光大附属中学ってなってたから一見すると普通に日本で野球やってたみたいに思うけど、深く調べてみたらどーやら中3の12月に日本に戻ってきたらしい。だから金光大附属中学で過ごしたのはたったの3ヶ月。卒業したのは金光大附属中学だけど中学時代はほとんどメキシコのハリスコ州立アユトラン中学で過ごしてる。クラブチームでは2年から1番セカンド。新チームからは1番ショートで副キャプテンもやってる。』
桜沢『すげぇ…。』
霞『頭也の情報収集力…。』
西口(こいつには力勝負でいきます!!)
ビュゴォォォーーッッーーッーッ!!!!!
岩崎(この程度のファストボール…向こうで何千球と見てきたよ。)
カキィィィーーーッッッーーーッッーーンッッ!!!
西口(なんだとぉぉぉ!?!?)
《大きい!!!!これもセンターの頭上かーーっ!?!?》
慶野『うおおおおお!!!』
パシッ!!!
『『『オオオオオオォォオォォォ!!!』』』
《センター慶野捕ったァァァァァ!!!!!超ファインプレー!!!!!!!!》
西口(なんつー控えだよ…。翔真先輩の149km/hの直球を初球から迷わず振り抜いてジャストミート…。振り負けずに…)
大場『文哉ーーーっっ!!!!せんきゅー!!!まじ助かった!!!!』
慶野『まだ2点や!!!絶対諦めねえぞ!!!』
《慶野の背走しながらの最後にジャンプする超ファインプレー!!!!邦南高校、これ以上の失点は防ぎました!!!》
野中『試合を重ねるにつれて…こいつらの守備力もだいぶ整ってきたな。』
川越『ま、守備なんて基礎ついたらあとは自信よ。強気に守ってればおのずといいプレーが生まれるもんよ。』
赤嶋『メキシコ中学リーグは木製バットだからな。今岩崎は金属バット。中学の頃より打力は確実に上乗せされる。』
桜沢『まだ1年坊だけあって、パワーはまだまだだな。あそこまで捕らえたならスタンドにぶちこまないと。』
霞『まあパワーはしょうがないでしょ。つっても中南米でプレーしてただけあって、それなりのパワーはあるけど。彼は俊足好打なんだから。』
水仙『いやいや、大場の力のあるストレートを甲子園のセンター120メートル手前まで飛ばすのもなかなかだと思うぞ。俺の1年のころじゃ絶対無理。』
赤嶋『なにゴタゴタ言ってんだ。1年のころの俺らでも大場のストレートをあそこまで初球で捕らえられるやつはいない。天才、鬼頭天でも大場の本領でないストレートをスタンドまで初打席で持っていきはしたが、その後本気になった大場には3三振。つまりな、』
“岩崎のセンスは、俺らより上だ。これは間違いない。”
《初回2点を取りました啓稜学院。守備につきます。先発は青龍寺翔冴。S・9の一人です。》
岩崎(これが甲子園か。案外悪くない。)