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No.27:暴走者

その後の三年生軍も続いてさらに二死一二塁としたが9番の氷室がサードライナーに倒れスリーアウト。

しかし邦南が逆転し遂に9回の裏を迎える。




『1番、センター、眞野君。』

一点ビハインドで9回の裏の名林の攻撃はトップバッターの眞野から始まる。


眞野『俺たちが9回の裏で一点ビハインドだと…。せっかく12点も取ってやったのにピッチャーは何やってんだか。今ごろ瑞江はカンカンに怒ってるだろうな。』



小宮(さっきの回の僕の打席でのデッドボール…。正直今でもかなりヤバイ。歩くだけでじんじんするよ…。)


小宮は9回の表の逆転劇の際にコントロールを乱していた投手の長岡から足首にデッドボールを食らっている。



小宮(こりゃ打撲ってやつかな。)




眞野(俺は名門の1番バッターだ…。さすがにそろそろ本気出さねぇとマジで負けそうだぜ。)


名門の名林にも焦りが出ている。



西口(さすがにこいつらでもこの回ばかりは本気で一点を掴み取ろうとしてくるハズだ。バッター一人一人の隙が少ないこの回が最大の山場だ。)




小宮が眞野に第1球を投げる。


(ガッ!!)

(ズキッ!!)


小宮『うぐっ!』


ビュッ!!



ヒュー!!


(カシャン!)

ボールはキャッチャーの遥か頭上を越えていき、バックネットに当たった。



小宮(雨はもう大分小降りになってきた…。天は僕らの味方だ。でもこの状況…)


ビュッ!!


『ボール!!』


今のも完全にボール球だと分かるボール。

眞野は打率こそ3割前半から2割後半だが、持ち前の選球眼と粘り強さで出塁率は5割を越える。



小宮(既に大場さんは150球近く投げた。もう一度マウンドに立ってもたぶん上位打線に捕まるだろう。だからここは僕が踏ん張らないと!)


ビュッ!!


(パン!!)


『ボール!!スリー!!』

小宮(くそ…。ノースリーかっ…)


眞野(さっきの対戦の時より明らかにボールの勢いが違うな。何があった…。)



ビュッ!!


(パン!!)


小宮(くそっ…うまく投げれねえ…)



『ボール!フォア!』



眞野『よっしゃ。』


『2番、サード、矢野崎君。』




矢野崎『どうしちゃったの?先頭バッターをフォアボールだなんて負けたいの?』

西口『そんなわけねーだろ。少しは頭使え。』

矢野崎『相変わらず強気な性格だねぇ。一年坊のくせに。』



ビュッ!!


(スッ…)


西口(なに!?)

小宮『バントだって!?』

松坂『セーフティーか!!』


(コン!!)



矢野崎は名門名林の2番打者なだけあってバントはかなりうまい。


(コロコロ…)

西口『サード!!ファーストだ!!間に合うぞ!!』

西口がサードの松坂に叫ぶ。

松坂も猛ダッシュでボールに追い付く。


(パシッ!!ヒュッ!!)

松坂が一塁へ送球する。


タイミングは微妙。しかし、


大場『どこ投げてるっ!!』


(パシッ!!)


松坂の送球は大きく横に逸れ、大場はベースから離れてなんとか捕球する。これで無死一二塁。


松坂『わりぃ…小宮。』


小宮『何がですか?あんないいバントされちゃいくら送球がよくてもセーフでしたよ。悪いのはあのバントを決めさせてしまった僕です。』




『3番、ピッチャー、長岡君。』



(ズクッズクッ!)

小宮(さすがにこれは…投球に集中できないレベルの痛みだ…投げる度にどんどん痛くなってく…。)



長岡『お前ら。もう絶対許さねえ。覚悟しろ。名林の守護神の俺から1イニングに5点だと?ふざけんな…。ふざけんな…。…。……。ふざけてんじゃねーぞ!!!!!!!!』


西口『!?!?!?』

小宮『なんだ!?』


副島『おいおい…。アイツ…狂っちまったんじゃねえか?』


長岡が叫び出した。



長岡『エースで4番が怪我を隠してことごとく足を引っ張る。キャプテンもいっこうにチームをまとめようとしない。センターのやつも女の事考えててボールを後逸する。キャッチャーのやつは逃げ腰リードしやがる。セカンドのやつはまともに送球もできない。そんでもってしまいにはこんな雑魚高校が俺から5点を奪って逆転しやがる。』




西口(殺気を…感じる…。)

小宮(こわっ…。)



長岡『こんなに野球やってて気分が悪くなったのは久方ぶりだぁぁぁっ!!!!!!!!ぶっ殺す!!俺がテメーらみたいなクソチームの夢とやらをぶっ壊してやるよ!!!!!!!!もうこりごりなんだよ!!!!!!!』


大場(…。)





南『長岡があーなるのはいつ以来だっけ?』

健太『最後に見たのは…たしか一年秋の県大会決勝のとき以来じゃねえか?これが3回目だな。』

南『あーなると誰も止められないよね。』

成田『アイツは1年半もあーならなかったんだからその間心のダムでせき止めてあった怒りが今流出してるね。ありゃ相当ヤバイと見た。』

江澤『あーなるとやたらと人の悪口言うからね。俺は言われてないみたいだけど。』

南『アイツはいままで守護神として名林を支えてきた。それなのに俺らが守備で足引っ張っちまったから…結果逆転されて…。』

誠『どこが?逆転されたのは全部あの人の責任でしょ?俺のリードを信じないからサイン無視して結果逆転ホームランだからな。ほんと身勝手な人は困るわぁ。』



西口(狂気して力んでるかと思えば打法は今までよりも力が抜けていて自然体だ…。こりゃ何の球狙ってるか想像もつかないな…。)







天宮『おい。よく聞け。お前らの考えは、間違ってるぞ。』


誠『なんすか?キャプテン。』

南『俺らにも言ってんの?』



天宮『当たり前だ。俺はお前ら全員の考えが間違っているとしか思えない。いずれ、こうなる運命だったのだろう。それがたまたま今日だったってわけだ。』



名林ナイン『…??』





長岡『おら!!!さっさと投げろや!!!!!!』







天宮『俺たちの弱点は、俺たちの中にある。それは俺たち自身で気がつかなきゃいけない。』





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