No.22:野球が好きだから
続くバッターは2番の慶野。
昔、慶野は大場と同じ中学だった。
といっても大場は硬式のクラブチーム名古屋東ブラックシャークに入っていたため中学時代は帰宅部だが…
慶野は中2のときにテニス部から野球部に移籍した。
慶野『アイツがあのとき野球に誘ってくれなかったら今ごろここに俺は立ってない…。』
3年前…
場所は名古屋市立の若葉八前中学校。
(パコン!!)
(パコン!!)
『よっしゃー!!また勝った!!』
慶野『また負けたよ…。』
慶野は昔から運動神経はよかったがよりによってテニスができなかった。
それを時々大場が下校するときにチラ見していた。
そして大場と慶野がはじめて顔を会わせた日になった。
二人は1年生のころも2年生になってからもクラスが離れていたので話すことはなかった。ただし大場はすでに野球がかなりうまかったので学校では有名だったが。
慶野は運動神経は割りといい方のごく普通の中学生。
(パコン!)
今日は慶野は普通に練習をしている。
慶野『なかなかうまくいかないなぁ…。』
慶野は中学生になってからテニスを始めた。
それまでは特にこれといったスポーツはやってこなかったが、中学生になってテニスをやろうと決めたのだ。
しかしなかなか上達しない。こんな思いは初めてだった。
そのとき…
『キミ?野球やってた?』
突然肌の黒い男の子が話しかけてきた。
後に親友となる、そう。大場翔真だ。
慶野『え?俺が?』
大場『オレ大場翔真ってんだ。野球大好きな中学二年生だよ。野球やってなかった?』
慶野『ううん。やったことないよ。』
大場『ホント!?ならやろうよ!!そのテニスのスイング見る限り絶対いいバッターになれると思うよ!』
慶野『俺の?へたっぴなテニスのスイングを見ていってるの?』
大場『おう。テニスのスイングにしては力みすぎですごいダメなフォームだと思うけど野球やってみたら絶対うまく行くと思うよ!』
慶野『なんで?』
大場『だってキミのスイング、野球のスイングだもん。』
それから慶野は野球部に体験しにいき本入部することになる。
そして3年の市総体では若葉八前中学の3番センターに定着し、ベスト8進出に貢献する。
慶野は俊足をいかすために左打ちだ。
回想シーン終わり↑↑
慶野『アイツが居なきゃオレはここに立ってない。野球っていう大好きなものができたからオレは今まで楽しかった。アイツが野球を誘ってくれたからオレは…!!』
(カキーン!!!)
『ファール!!』
慶野『当たった…!!』
大場『ナイススイング!!当たるぞ!!いけ!!』
慶野『オレは打つ!!大場と約束したからじゃない。先輩のため、そして何よりチームのために絶対打つ!!だってオレは…』
ビュッ!!
慶野『俺は野球が好きだから。』
(カキーン!)
打球は左中間へ。
眞野『天宮!!カバー頼む!!』
天宮『おう!!』
眞野『どらっ!!!』
センターの眞野が飛びついた。
慶野『クソっ!!捕るな!!!』
(バスっ!!!)
(コロコロ)
大場『よし!落ちた!!』
打球は一瞬眞野のグラブにはいったが、眞野のグラブがそれを弾いてしまった。
副島『ボールが転がってるぞ!!!』
小宮『まわれ!まわれ!』
ハーフウェイの体勢だった大場は打球が落ちた瞬間にスタートを切ってボールが転々としてる間に一気に三塁へ。そして打った慶野は…
健太『セカンドだ!!間に合うぞ!!』
天宮がようやく捕球し二塁へ送球する。
南『よし!!タイミングは完全にアウトだ!!』
小宮『まずい!!これじゃ…タッチアウト…』
(ギュギュッ!!)
西口『え…』
誰もがこのままいけばアウトだと思ったが…
(バシッ!!)
南が捕球してタッチしようとしたが…
南『あれ?ランナーは?』
健太『ファーストだ!!』
慶野は一二塁間の真ん中辺りまでいったがそこから驚異の切り返しで一塁に戻った。
整理するとこれで一死一三塁になった。
小宮『すげ…』
西口『全力疾走から瞬間的に切り返した…並みの人間じゃ…いや、全国にもあんな切り返しができるやつはほとんどいないだろう…。』
大場『さすが…スポーツテストの反復横跳びで70回オーバーしたやつは違うね。』
ちなみに慶野は反復横跳び(20秒)で最高71回を記録したことがある。
これがどんなに難しいことかわかるだろう。(ちなみに高2の反復横跳びの10点評価の回数は64回以上なはず。)
長岡『魅せてくれるねぇ。まあこんくらいのやつらが相手じゃねえとやりがいがないよな。』
一死一三塁でここからクリーンナップ。
ここから邦南野球部の真価が問われる…。