No.20:翔真の男気
『9番、キャッチャー、下村誠君。』
8番南の二点タイムリースリーベースで12-8とした愛農大名林は尚二死三塁で強打者の誠を迎える。
小宮(ライト方向を完全に狙われてた…)
西口(内角中心に攻めてできれば左方向に撃ち取るか三振が理想だが…)
ちなみに誠は右打ちだ。
小宮(下村誠には一打席目で内角のボールをバックスクリーンまで運ばれてる…。)
西口(これまでの打席からして内角は得意コースのようだな。こりゃ仕方ないが外角中心で攻めるしかない。慶野…氷室のアシスト頼むぞ。)
誠(流し打ちは苦手なんだよなぁ。)
小宮が投げる。
ビュッ!!
誠(外角ストレート!!もらった!!)
(カキーン!!)
西口(ちくしょう!!もう一点もやれないのに!!)
小宮(またライト前か…)
大場『おーしゃぁーっ!!オーライオーライ!!』
副島『翔真!!』
(バシッ!!!)
翔真がダイビングキャッチした。
一塁ベースカバーの小宮とバッターランナーの誠の競争。
誠『なにっ!?あの打球を!?』
健太『ファーストが処理するだと!?!?』
眞野『なんて守備範囲してやがる…。』
小宮『大場さん!!』
大場『おうよ!!』
誠『セーフになってやる!!』
(バン!!)
『アウト!!!!!!』
小宮『よし!!ここを4点差で防いだのは大きいぞ!!』
9回の表、12-8の4点ビハインドで迎えた邦南の攻撃は9番の氷室から。
(ブン!!)
『ストライク!!バッターアウト!』
健太『監督!!』
浜津(愛農大名林高校監督)『交代だな。』
大場『なに!?』
慶野『ピッチャー交代だと…?』
『愛知農業大名林高校、ピッチャー下村健太君がショート。ショートの長岡君がピッチャー。以上に代わります。』
ポジション変更
下村健:1→6
長岡 :6→1
健太『頼んだぜ。』
長岡『まさかこの俺まで出す羽目になるなんてな。ずいぶんと炎上してくれたな。脇腹が痛いとか言い訳すんじゃねぇぞ。』
健太『お前!俺の怪我のこと知ってんのか?』
長岡『当たり前だ。7回くらいからずっと一人で痛そうにしてたじゃねえか。気づいてないとでも思ったか。ばーか。最初は同情したが試合に出てんだから関係ねえ。全力でやれよ。エース。』
健太『ありがとな。長岡。とにかくあとアウト二つだ。思いきっていけ。お前のストレートならこいつらなんか楽勝だ。』
長岡『おう。』
大場『どんな球投げるんだ…?』
長岡がセットポジションから投げる。
(ドバンッ!!!!)
慶野『これって…』
大場『たぶん出てるな。150km/h。』
慶野『こんな球…。』
大場『はぁ?何言ってんだ?楽勝だろ。』
慶野『…だといいな。』
大場『じゃあ、もし俺が打ったら、この点差だし当然バントはしなくていい。だから、お前も続け。小宮と西口なら希望をつないでくれる。頼んだぞ。』
慶野『翔真…。』
『1番、ファースト、大場君。』