No.196:獣と生けるボール
『8回の表、邦南高校の攻撃は、2番、ライト、副島くん。』
《さあマウンド上、薮内琢雄は初回に連打を食らい5点を失いましたが2回以降完璧に立ち直り、ランナーを一人も出さない好投を続けています!打席には2番のキャプテン副島!!点差は5点!そろそろ一点でも多く返したいところ!》
ビュゴゴウッッッッッ!!!!
副島『クサイとこはカットで逃げる!』
スッッ
ブンっ!
副島『くそが!!また…。』
薮内『よっしゃぁ!!!』
《追い込んでから最後は伝家の宝刀、高速シンカーで空振りの三振!!地方大会打率.460の好打者、副島から今日3つ目!!》
『3番、ピッチャー、大場くん。』
大場(主な球種は速いシンカーと遅いシンカー…。右打者にはシュートも使ってくる…。シンカー主体の投手に左打者の俺らでは分が悪いが…。そんなこともいってられねえ…。)
ビュゴゴウッッッッッ!!!!
大場(変化球なら内には来ない!ストレートなら外に来ない!!外角!!シンカーか!)
カァァクゥゥゥッッッ
大場(なにぃ!?!?)
《初球は空振り!!》
薮内『へっ!』
上村了『これには邦南ベンチも戸惑いを隠せないだろうな。』
大場(スライ…ダー!?)
小宮『なんで!?』
西口『スライダーなんて…今日の試合使ってなかったじゃねえか!』
松坂『ここまで…隠してやがったのか…。』
ビュゴゴウッッッッッ
『ストライーク!ツー!』
《二球目は外角直球でツーストライク!!》
鬼頭『バッテリーめ…。配球を変えてきたか…。』
大場(次は何で来る…?今までのこいつらなら三球勝負で内角直球ってのも…。いや、内に切れ込むスライダーってのも…。)
ビュゴゴウッッッッッ!!!!
大場『うおりゃぁぁぁ!!!』
スッッ
ブンっ!
大場『…。』
《最後はこれまたシンカーで空振り三振!!!終盤になってよりいっそうギアをあげてきた!!》
鬼頭『クソッタレ…。焦るな…。まだ勝機は…。』
薮内『オラァ…食ってやろーじゃねーか…。』
鬼頭『…。こんなところで負けてたまっか…。…、でもっ!』
薮内『うおりゃぁーっ!』
ズッッバァァーーッーーーッン!
≪146km/h≫
《初球はストレートに振り遅れ!!》
小宮『あの博行先輩が振り遅れてる…。』
大場『あいつのボールは…生きている…』
副島『ボールがまるで自立的な生き物のように…動くんだ…。』
ビュゴゴウッッッッッ!!!!
ズッッバァァーーッーーーッン!
鬼頭『力感からして…シンカーじゃねえのかよ…。』
≪147km/h≫
《見逃し三振!!4番鬼頭も三振にきってとってこの回上位打線を三者三振!!!》