No.16:魔球!四段ドロップ
(ザァザァザァ!!)
さっきまでの雨がさらに強くなってきた。
『ストライク!!バッターアウト!!チェンジ!!』
二死二塁の一打同点の場面だったが8番の島谷倫は三振に打ち取られスリーアウト。
しかし邦南は9-3で迎えた8回の表に打者9人の猛攻で一挙5点を返しこれで9-8。
序盤に大量9点のリードしていた愛農大名林がわずか1点のリードとなった。
8回の裏、名林の攻撃は3番の長岡から。
長岡『やれやれ。困っちゃうね。こんな試合になるなんて思ってもみなかったよ。まあ名門の俺たちにも意地ってもんがあるからね。そこら辺考えて配球してよ。』
西口『…。』
小宮は5回途中からリリーフし、今まですべてのアウト(7個)を三振でとる好投。出したランナーはフォアボールのランナーの一人だけというピッチング。
小宮『このバッターがこのチームで一番怖いバッターかな。要警戒だね。』
(ザァザァザァザァ!!)
西口(クソっ…。こんな雨じゃボールが滑ってストレートでカウント稼がないとすぐフォアボールでランナー溜めるぞ…。)
西口はストレートのサインを出した。
しかし小宮は首を振った。
西口がサインを出す。
四段ドロップのサイン。
小宮は首を縦に振った。
西口(おいおい…。まだ未完成なのに大丈夫なのか…?)
小宮『この程度の雨で揺らいでちゃ…』
小宮が投球モーションに入る。
小宮『名東黒シャー(名古屋東ブラックシャークの世間での略称)でエースなんか務められないよ!!』
(グググッッ!!!!)
長岡『な…なんだ!?この変化!!』
(パン!!)
『ストライク!!ワン!!』
小宮『へっ!』
明日翔『ナイスボール!!』
西口『…。』
小宮(次も四段ドロップだ…。)
小宮は四段ドロップのサインに頷いた。
小宮が投げる。
(ギュギュググギュ!!)
長岡『またこのボールか!』
(カン!)
『ファールボール!!』
副島『よし!2球で追い込んだぞ!』
小宮(当てられたか…さすがだ。この3番はそう簡単には三振してくれない…。)
西口(次はこれだ。)
西口がチェンジアップのサインを出した。小宮はこのボールが中学のときまでは決め球だった。
小宮(チェンジアップ?いや、ここは1球高めにストレートを見せてからまた四段ドロップで…)
小宮は首を振った。
しかし西口のサインは変わらない。
小宮はもう一度首を振ったがサインはチェンジアップのまま。
さらにもう一度首を振ったがチェンジアップのサインは変わらない。
長岡『タイム!!』
あまりのサイン交換の長さにしびれを切らした長岡が打席をはずす。
そして小宮が西口をマウンドに呼ぶ。
小宮『どうしたの?ボーッとしてた?』
西口『んなわけねーだろ。俺はお前の四段ドロップも確かにいい球だと思うがチェンジアップのサインのが安心して出せる。』
小宮『なんで?』
西口『名東黒シャーはお前のチェンジアップで全国の頂上の一つ下まで行けたんだぜ。』
小宮『そうか?正捕手の西口くんはもちろんショートで1番だった多賀谷とか4番の勾城とかのお陰だと思うけどね。まあそれにしてもあの戦力で全国制覇できなかったのはエースの俺の責任かな。』
西口『おっと、話がそれたか。とにかくチェンジアップで頼むぜ。』
小宮『おう。』
ちなみに今、小宮と西口が普通に会話しているのはマウンドに大場もいたからである。
ちなみに大場が二人の関係を知っているとは二人は知らない。
『カウントツーナッシング!!プレイ!!』
小宮『これでもくらいな!!!』
ビュッ!!!!
長岡『これは…!?』
(ブン!!)
『ストライク!!バッターアウト!!』
長岡『クソ野郎…。まだあんないいボール持ってたのか…。』
大場『よっしゃー!!ワンナウトワンナウト!!』
『4番、ピッチャー、下村健太君。』