No.136:メタモルフォーゼ
堂金(北峰さん…なぜ…。)
北峰(頼むぞ俺の左肘よぉ…。)
余語(焦らなくても制球重視で十分撃ち取れる程度の打者だ。平常心で来い。)
北峰(初球はシンカー気味のチェンジアップね。)
《さあツーアウトフルベースから享神の5番手春優勝投手の北峰が投げる!!!!!!!!!!!》
ビュウッッッッ!!!!!!
ストッ…
木村(遅い!打てる!!)
カキーーンッ!!!!!
『ファールボール!!!!!』
木村(ちっ…。思ったよりコース一杯に決まってきた…。)
余語(あとはストレート2球で片付けられるな。あと2球だ。頑張れ北峰。)
堂金(…。……。)
ビュワウゥゥッッッッッッッッッッウッ!!!!!!!!!!!!!
ズゴォォォォォーーーーーーッッッッーンッ!!!!!!!!!!
≪150km/h≫
『ボール!!!!!!!!』
余語(やはりコントロールがダメか!?)
北峰(ちっ。くたばってたまるか。)
《さあ3球目!!》
ビュワウゥゥッッッッッッッッッッウッ!!!!!!!!!!!!
ズゴォォォォォーーーーーーッッッッーンッ!!!!!!!!!!!!
≪149km/h≫
『ストライーク!!!!!!!!!』
《さあ149km/hの直球で追い込んだ!!カウントは1ボール2ストライク!!!!》
木村(打ってやる。みんな打ったんだ。俺にでも打てるはず。俺が打てばこの試合の決定打になれるはず…。)
北峰『はぁっ…はぁっ…はぁっ…。』
ズキン
ズキン
ズキン
北峰(クソッタレ…。こんなんでくたばってたまるかよ…。俺はこの享神で1年夏からエースナンバーを付けてたんだ…。堂金に番号は譲ってもエースの座は譲ってたまるか…。エースならこんなところで落ちてなるもんかっての…。)
堂金(北峰さん…どうして…北峰さんほどの投手がここまでこの高校野球で無茶するんです…?)
ビュウッッッッ!!!!!!!!!!!
カキーーンッ!!!!
『ファールボール!!!』
北峰『はぁっ…。…。……。はぁ…。』
余語(球威がまずいな…。早く仕留めないと…あいつの肘が…。打者のタイミングも合ってきたしな…。)
堂金『き、北峰さん!!!!』
北峰『堂金は黙ってそこで見とけぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!』
堂金『!!!!!!』
ビュゴォォォォォォォォウゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!!!!!!
余語(うぉっ!!!!!!!!!)
ズッッッッッバァーーーーーッッッーーッン!!!!!!!!!!!!!
《物凄いハイボールがいきました!!よく捕球しましたキャッチャーの余語!!》
『うっ…。うっ…。うわぁぁぁ!!!!!』
神郷『!?!?』
勾城『っ!?』
堂金『そーゆー、ことかよ…。たった…それだけかよ…。』
『北峰ぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!』
《なんということでしょう!!享神の誇る好投手北峰がマウンドで左肘でしょうか?痛みを訴えています!!》
余語『馬鹿。』
神郷『ちょっと余語く~ん!そんな…』
北峰『良いんだ。監督も止めたし隼輝が心の中では俺の登板に反対していることもわかってる。だけど俺が志願してここに立ってた。俺が悪いんだ…。』
堂金『き、北峰…さん?』
勾城『肘…やっぱりやってたんですね…。』
野海『まあ…薄々気付いてましたよ。夏大では長くても4イニングしか投げてませんでしたし。』
北峰『隠しててわりぃな…。ただ…引退するまでに…どーしてもやっておきてぇ事があってよ…。』
神郷『伝えたい…こと?』
余語『伝わったよ。もう十分だ北峰。お前の投げる背中を見て、アイツが何も感じなかったわけないだろ。お前は十分すぎるくらいよくやったよ。あとはお前の意志を継いだアイツの成長を見届けてくれ。ありがとう。』
神郷『なんの話~?余語く~ん。』
北峰『ふっ…。』
余語『なに笑ってんだよ。』
北峰『やっぱ隼輝には、俺のことはなんでもお見通しかい。誰にも言うつもり無かったのにまさか俺のこの無茶な投球の意味を悟られるなんてね。さっすが俺の恋女房だ。って思ったらなんだか笑えて来ちゃってよ。』
余語『おう。サンキュ。』
今坂『ピッチャー堂金!!!!!!!!!!!!!!!!』
堂金『!!!!!』
『おう!!!!!!!!!!!!!!!!!』
『享神高校、シートの変更をお知らせします。』
守備位置の変更↓↓
北峰→平井:1→9
堂金:9→1
今坂『ホントに良かったのか?』
北峰『えぇ。どうせ手術するしか後がありませんでしたし。今秋ドラフトにかかるのはどちらにしろ不可能でした。だったらこうした方が享神のため、そして堂金のためになると思いました。』
堂金(なぜ俺は打たれたのか。なぜ俺はこんなやつらに連打食らったのか。なぜ俺は高校野球がつまらないのか…。理由はただ1つ…。)