No.130:堂金物語Ⅴ
『竜星。あんた…』
『日本のエースになりたい。いつかは、メジャーに行きたい。』
『享神高校に、進学したいの?』
『ああ。ごめんよ。遠くに行っちゃって。全寮制だから心配しないで。』
『わかったよ。竜星。ばあちゃんにまかせな。今まで以上に一生懸命働いてやるんだから。』
『その心配はないよ。ばあちゃん。』
『え?』
『享神のレギュラー倒して、特待生もぎ取ってきた。だからね、金銭面はまったく負担しなくていいんだよ。』
『そうかい。いってらっしゃい。強くなったわね。』
『高校3年間、ばあちゃんには寂しい思いさせると思う。だけど、俺のわがままを叶えてくれ…。』
『当たり前よ。体だけじゃなく、心も、スケールも両方ともビッグになってくるんだよ。』
『いつかメジャーに行って、世界でばあちゃんに恩返しする。おれ、その為に高校野球がんばる。』
『わかったよ。たまには顔見せるんだよ。竜星。』
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ズッバァーーーッッーーンッ!!!!!!!!
《139km/h》
『ストライク!!!!!』
『さあこれで9番堂金に対しカウント2-2と追い込んだ!!!!』
堂金(なんでこんなことになっちまったんだろう…。俺が…俺がこんな公立高校の打者ごときに劣っているとでも…。そんなはずはない…。)
西口(堂金ごときに本気で全力投球する必要はない。せずとも撃ち取るのは容易だ。痛み止に限界がある以上、必要最低限の消耗で抑えたい。)
大場(この回をゼロでいければ精神的にも享神を追い詰められる!!)
ビュウッッッッッ!!!
堂金(!!)
西口(甘い!!)
カキィーーッーッンッ!!!!!
『これはセンター返し!!9番ライトの1年生、堂金に今日初安打が飛び出した!!3人では終われない享神高校の7回の裏一点ビハインドの攻撃!!これでツーアウトランナー一塁で先頭の神郷へ!!』
『1番、ショート、神郷くん。』
ずしん
ずしん
ぼよよーん。
西口(3人で斬りたかったが制球ミスだ。切り替える。)
ビュウッッッッッ!!!!!!!!
神郷『いいボールだけどねぇ~』
カキーーーッン!!!
大場『なっ!?』
『これもうまく流し打った!!!1番の神郷も続いてツーアウト一二塁!!ツーアウトながら享神高校、ヒット一本で同点、長打が出れば逆転という状況!!!!』
『2番、ピッチャー、西崎くん。』
余語『西崎か…。正直期待できんな。』
北峰『そうか?こーゆー緊張する場面で打てるやつってのは西崎みたいなやつだと思うぜ?』
余語『西崎の打撃能力知ってていってんのか?』
北峰『ったりまえだろ。でもニッシー(西崎の呼び名)、絶対打つ。そんな気がする。』
余語『そうさせてくれるのも、やっぱ西崎の不思議な力だよな。』
ビュウッッッッッ!!!!!!!
ズッバァーーーッッーーンッ!!!!!!
《145km/h》
『ストライク!!!ワン!!!!』
西崎(絶対打つ。絶対打つ。絶対打つ。俺なら打てる!!)
『おしゃあ!!!!!!こいやぁ!!!!!!!!』
『バッター西崎が吠える!!気合い十分絶対打ってやるという気迫が伝わります!!!!』
堂金(無理っしょ。西崎さんじゃ。)
ビュウッッッッッ!!!!
スッットォォーーーッッーンッ!!!!!
ブン!!!
西崎『フォーク!?こんなにエグいのか!?』
堂金(ほらね。)
『さあ2球で追い込んだ邦南バッテリー!!さあどう西崎を料理しにいくのか!!』
西崎『まだまだ!!!!オラ来いやぁぁぁ!!!!!!!!!』
スットォーーーーッッーンッ!!!!
『ボール!!!!!』
西崎(っぶねぇ…。すげぇフォークだな…。)
西口(定番の攻めでいく。この程度の打者ならそれで撃ち取れる。)
大場(フォークを思いっきり意識させたあとのストレートね。オッケー。)
西崎(こんなフォーク…狙ったって当たりやしねえ。だったら最初から狙わなきゃいい…。打てねえ球意識したって打てやしねえ…。だったら最初から、直球一本絞り!!)
ビュウッッッッッッッ!!!!!!!!!!
西崎(曲がらずに、届けぇ!!!!!!)
西口(左投手の翔真先輩の右打者西崎への内角のストレート。クロスファイヤーにもした!!これでコイツは腰が引けて見逃し…)
大場『!!!!!!』
堂金『…。………。』
ボン!!!!!!!
西口『ショート!!!!!!!』
『これは詰まった!!!!!』
西崎『まだだ!!!!!!』
『しかし打球の飛んだ場所がいい!!!!!!ショート島谷倫暁が追う!!!面白い打球だ!!三塁キャンバス後方への打球!!!!!!!』
ぽてん。
『落ちたーーーっっ!!!!!!!二塁ランナー堂金はツーアウトの為スタートがいい!!!!一気にホームまで還ってきた!!!!!同点!!!!!!!!同点!!!!!!2番の前の回からリリーフしている西崎のレフトへのポテンヒットで同点に追い付いた!!!!これで11-11!!!!!』
西崎『おしゃああ!!!!!』
西口(あいつ…よくもあのクロスファイヤー148km/hにひるまず…。)
ズバァァーーーッッッッッーーンッ!!!!!!
『ストライク!!!バッターアウト!!!!!チェンジ!!!!!!!』
『3番の北峰は見逃しの三振!!しかし7回の裏の享神高校、投手の西崎のレフトへのタイムリーヒットで同点としてきました!!!!!!!!!!』