No.127:堂金物語Ⅱ
(野球だけでは絶対に負けたくない。)
(だけど実際に負けたことがない。仲間に恵まれてた。わけでもない。)
(負けたい。負けたい。)
(自分に刺激がほしい。)
ピンポーン!
…
『竜星!お客さんがいらっしゃったよ!』
(なんだ?お客さん?)
『堂金竜星くん。硬式野球全国制覇おめでとう。』
『あ、ありがとうございます。』
いつもなら高校野球のスカウトなら門前払いするが。
今日の堂金は違った。
『私は愛知の享神高校ってところのコーチ、天童だ。』
『甲子園準優勝の享神高校…僕に、入ってほしいと?』
『まあ単刀直入に言うと、その通りだ。どうだい?興味は?』
『…。』
『別に焦って決める必要もない。君の人生だからな。』
『…。勝負…させてください。』
『ん?なにがだね?』
『その享神高校ってところで、一番強いやつと、勝負させてください。』
『本気かね?中学生の君の球じゃ、いくらなんでも勝負にならないと思うがね。』
『勝負して、俺が納得したら、享神高校に入ります。ま、特待生待遇してくれなきゃ無理ですけど…資金力的な部分で。』
『いいだろう。良かったら、また連絡させてほしい。また後日連絡する。』
そして…
(ここか…。さすが私立高校。でかいな。野球部は専用グラウンドらしいけど。)
『待たせたね。おはよう。』
『おはようございます。』
『さあ、車に乗りたまえ。』
ブーン…
『なぜ、勝負がしたいと?』
『気分です。』
『享神の4番バッター、名前、知ってるよな?』
『桜沢。』
『キミは桜沢と勝負がしたいのか?』
『別に。誰だっていいんです。俺に勝てるやつなら。』
『高校野球を、舐めない方がいい。』
(俺は中学野球に絶望してんだ。)
『着いたぞ。』
『広い。』
『部員数は33人。そこまで多くもないが、全国からかなり優れた選手をスカウトしてきている。俗に言う少数精鋭だ。この中で揉まれれば、自分を相当に磨きあげることができる。ま、県外から集めすぎて、地元からはあまり好かれていないってのも現状だがな。』
『ふーん。』
『今坂先生。つれてきました。堂金竜星です。』
今坂『君か。噂の中坊は。』
『ウチで一番強い打者との対決を求めているんだが。どーしましょう。』
今坂『一番強い打者といったら勿論、桜沢ってことになるが。高校入学前にそんな挫折を経験させる必要もあるまい。古瀬!!ちょっと来い!!』
古瀬『どうかしましたか?』
今坂『この子と、1打席だけ勝負してほしい。』
古瀬『誰すか?』
今坂『噂の堂金くんだ。』
古瀬『ふーん。』