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No.126:堂金物語Ⅰ



『7回の裏、享神高校の攻撃は、7番、センター、古瀬くん。』



西口(7番からの打順。焦らなくても三人で終わらせられる可能性は高い。)



ビュウッッッ!!カクッ!!



古瀬(カーブ!!狙い時!!)



カキーン!!!


『打球は二遊間を破るか!?』


鬼頭『おっけぇ!!』



パシッ!!


大場『博行先輩!!』



『この打球にセカンド鬼頭追い付いた!!しかしバッターランナー古瀬は俊足!!』



鬼頭『わっしょーい!!』



ビュウッッッッッッッッ!!!!!!!!



氷室『うわ!!』



バシィッッッ!!!!!



『アウトォォ!!!!!』



余語『まじかよ!』

勾城『すげぇ肩してやがる…。』

南浜『あの体勢からあの送球…。』

桜沢『おいおい…。もしかしたら…。』


北峰『どうした?春毅。』


桜沢『アイツ…。この3年で肩の調子を戻してきた可能性がある…。あの送球を見る限りだが…。』


余語『いいんじゃねえか?手負いの相手に勝つより、万全な相手に勝った方が気持ちいいぜ?』


桜沢『そりゃそうだが、ヒロがピッチャーやってきたらどうするつもりだ?』


余語『当然、打ってやるに決まってんだろ?南阪のエースと対戦なんて、楽しみな限りだ。』


桜沢『アイツがマウンドに立ったらそんな呑気なこと言ってられないと思うぜ。』


余語『弱気だな。』


桜沢『生でヒロの中学生時代の球、見てないのか?』

余語『おう。俺出身神奈川だし。』


桜沢『打席に立ったときの絶望感。自分の無力さ。そーゆーもんを俺はヒロから感じた。ま、過去に紅白戦で対戦したときの話だが。』


北峰『そんなにアイツのボール、凄いのか?』


桜沢『先発なら終盤まだわからないこともないが、リリーフとして出てこられたら、間違いなく試合終了まで無得点で終わる。』


余語『嘘だろ?』

桜沢『嘘ついてどーする。』

北峰『まっ、俺はそーゆー奴が相手の方が燃えるけど。』

桜沢『…。わかってねえな。ま、当然か。』


ズバーン!!!!!!



『ストライーク!!バッターアウト!!!!』



『8番の野海は見逃しの三振!!!!!』



野海『え…。ボールは…』

西口『ミットの中。』


野海(見えなかっただと!?あり得んのか!?そんなの!!)




『9番、ライト、堂金くん。』


西口(今日の試合コイツはかなり精神的にキテいるはずだ。こっちとしてはまだコイツがグラウンドに立ってるのは有りがたいぜ。試合開始前とは大違いだ。)





堂金(おい…。自分。)




---------------------------------


『へっへー!勝ったぜ!』


『もー!手加減してよ!僕、未経験なんだよ!?』


『知らねーよ!本気でやらなきゃ楽しくねーだろ!』


『もうやだ!竜星と野球やるとつまんない!!帰る!』



『へっ。やっぱ勝つのが最高だぜ。』




『堂金。高校のスカウトの方が来てるぞ。』

『はい。今行きます。』


『埼玉の秀東高校の監督を努めている、吉野という。堂金竜星くん。良かったキミに…』


『私学は、行けません。』


『なんなら特待生…』

『県外なら尚更行けません。ばあちゃんを一人にさせたくないんです。』


『もう少し話が』

『帰ってください。練習があるんで。』



『ストライーク!!バッターアウト!!ゲームセット!!』


『あのピッチャー。すげえな。静岡大会6試合登板で全試合完封。味方の援護がない中、42イニングで打たれたヒット、わずか5本だぜ?奪三振はイニングの倍以上の87。こりゃとんでもないやつが静岡に居たもんだ。』


『物足りない…。でも…全国の舞台なら、きっと…』



『ストライク!!バッターアウト!!ゲームセット!!』


『か、完全試合…。全国大会だぞ!?』


『おい…。もしかして…誰も俺のボールなんて打てないんじゃないか…』



『ストライク!!バッターアウト!!ゲームセット!!』


『…。野球、こんなもんなのかな。』



『二試合連続の無安打投球…味方のエラーで二試合連続のパーフェクトは逃したが…』

『アイツは何者なんだ!!』



『ストライク!!バッターアウト!!チェンジ!!』


『準決勝でも1安打投球!?しかもボテボテの内野安打の1本だけだぞ!!』



『野球、やめようかな。』



そして…


ズバーン!!!!!

西口『怪物…だ…。』


『ストライク!!バッターアウト!!ゲームセット!!!!』

《146km/h》


『これがお前らの現実だ。』


小宮『パーフェクト寸前の、ノーヒットノーラン…。』





………


『ばあちゃん。』

『どーしたの。竜星。』


『おれ、野球やめたい。』


『どうして?』


『…。つまんない。』


『そんなにうまいのに?』


『なんでもない。やっぱ無かったことにして。』






(なんでこんなに野球がつまらなくなっちまったんだろう…。)


(昔、公園でみんなと野球やって、三振にとったりすると、楽しかったな。)



(なのに…。)



(なのに。)




(今はいくら打者を打ち取っても、つまんない。)


(むしろ打者が打ち取られることしかしない。)


(おれ、バッティング苦手だし、野球のセンスはあるわけじゃないよな。)


(なのにみんな三振する。バッターボックスに立って、俺のボールに反応できずに、そそくさとベンチに帰ってくやつ。)

(バットクルクル回してベンチに帰ってくやつ。)



(ピッチャーやってても何も楽しくない。野球の風景、マウンドから見た、野球の風景。昔からずっと変わらない。)



(だからかな。野球が、つまらない。)








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