No.122:術中
大場(抑えられる。絶対にいける。)
西口(内角の壁を壊したい。そうすれば
外の下村フォークで絶対に撃ち取れる。)
赤嶋『注目の対決だな。』
霞『うん。この大場くん、相当いいボール放るからね。ま、でも思ってることはみんな同じだよね。』
水仙『だろうな。俺ら南阪の人間からすれば…』
鬼頭(翔真でも桜沢を抑えられる可能性は低いな…。)
霞『春毅くんに勝てるピッチャーなんて限られてる。それに大場くんが入ってるとは思えないよ。』
水仙『いや、でもあいつ、覚えてる気がする。見たことある。』
霞『大場くんのこと?』
水仙『ああ。多分だが…』
赤嶋『大場翔真。照丘小のエースだったやつだろ。』
水仙『やっぱお前も覚えてたか。』
霞『あ!思い出した!』
赤嶋『勇翔、気づくの遅い。』
霞『だって愛知県の高校野球の状況なんて知らないもん。』
水仙『見物だな。』
赤嶋『ああ。六年前が再現されるか、俺らのリベンジをするか。』
霞『でも僕は春毅くんが勝つと思うな。』
赤嶋『当たり前だろ。だってサクだぜ?』
水仙『だな。俺もサクに一票。』
大場(怯むなよ。自分。自信もて。勝てる努力はしてきたはずだ。)
ビュウウッッッッッッッ!!!!!!!!
西口(よし!!決まった!!!!)
スバァァァーーッッッーーーッッンッッ!!!!!!!!!
《149km/h》
『ストライーク!!!!!!』
『さあ桜沢への初球は自己最速タイの149km/h!!!!!!初球からアウトロー一杯の素晴らしいボール!!!!!!』
大場(俺の全力で抑え込む!)
ビュウッッッッ!!!!!
スットォォーーッッーン!!!!
ズバーン!!!!!
『ストライク!!!!ツー!!!!!!!』
『フォークボールでストライクを取ってきた!!!!!!』
西口(今のがストライクを取る下村フォーク。1球はずしてその次に変化重視の下村フォークで決める。)
大場(外にボール一個半分外したストレートね。了解。この次に下村フォークでいく。)
ビュウッッッッッッ!!!!!!!!
西口(え…。)
カキーーーッッーン!!!!!!
西口(大丈夫だ。あのコースのボールを打ってもラインを切れる。)
“切れないのか…!?”
ボンっ
『フェア!!!!!!』
『打球はライト線際に落ちる!!!!外角の見逃せばボールかという球をうまく流し打ってツーベース!!!ツーアウトから4番の桜沢にツーベースヒットが出てこれで二死二塁!!!!!!』
大場(まさかあれを打たれるなんて…。)
西口(打ったとしてもあそこまで飛ばすとはな。やっぱそう簡単にはいかねえか…。)
『5番、キャッチャー、余語くん。』
ビュウッッッッッッ!!!!!!
余語(情報通り!!!)
カキーッッーン!!!
『これもセンター前!!!!センター慶野がプレスする!!!二塁ランナー桜沢は三塁で止まった!!』
西口(初球打ちか。読まれてたな。どうせ、向こうのマネージャーの情報だろうな。)
藤野『バレましたね。』
今坂『いや、今のヒットはデカイ。ここで勾城を迎えられるんだからな。感謝する。』
藤野『ありがとうございます。』
『6番、サード、勾城くん。』
勾城(翔真先輩。)
大場(ここで勾城か。めんどくせー打線だぜ…。)
ビュウッッッッッッ!!!!!!
スットォォーーッッーン!!!!!
『ストライク!!!!!!!』
ビュウッッッッッッ!!!!!!
スットォォーーッッーン!!!!!!!
勾城(このコースならまたストライクになる!!!!!)
西口(残念だったな!!)
ズバーン!!!!!
『空振り!!!!これでツーナッシングと追い込んだ!!!!!!!』
勾城(さっきと変化量が違う!?二種類持ってるのか!?)
西口(下村フォークを意識したら最後…)
(翔真先輩の直球に目がついていかなくなる。)
ズバーーーッッッーン!!!!!!!
勾城『あれ…?』
(ボールが見えなかった!?)
『ストライク!!!!!バッターアウト!!!!!!!チェンジ!!!!!!!』
大場(どんなもんじゃい!)
勾城(この打席は負けだな。完全にバッテリーの術中にハマっちまった。)
野中『エースが見事に無失点で抑えた。』
川越『これで流れが変わるといいな。』