No.120:究極のスローボール
鬼頭(なんだ!?遅い!変化球か!!)
(どこで来る?)
ピュッ!
鬼頭(な!?)
バン!!!!!
余語(よし!)
主審の右手が上がる。
『ストライク!!バッターアウト!!』
鬼頭(なんなんだ!?)
『この好機で1番の鬼頭は痛恨の見逃し三振!!!!!!!!ツーアウト一二塁に変わった!!!』
鬼頭『クソ…。ただでさえ遅かったのに…』
(スローボール…。腕の振りが変わらなかったから完全に騙された…。だが…少し引っ掛かる…。)
(なぜ最初から絡めてこなかった?この高水準のスローボールなら余語のリードとなら抜群の効力を発揮するはずじゃ…。)
『2番、センター、慶野くん。』
余語(スローボールを使用したあとの南浜…。これがちと厄介だ。今のスローボールには繊細な指の感覚が必要。それゆえ今までの感覚が狂いやすい。さっきの感覚を取り戻すには…。)
ズバン!!
『ボール!!!!!』
余語(何球かボール球にして感覚を取り戻す。故に次の打者のカウントが悪くなる。それがこの南浜流、特殊スローボールの欠点。)
ズバーン!!
『ボール!!!!!』
『さあ続く2番の慶野に対しては2球続けてボール!!ボール先行のカウントになってしまった!!』
余語(次から勝負に行くぞ。準備はいいな。)
南浜(おっけ。)
慶野(2球続けてストレートでツーボール。次の3番の翔真には絶対に回したくないはず。間違いなく俺で勝負に来る。カウントを不利にしたくないはずだから次は入れてくる。この遅いストレートを3球続けるにはキャッチャーとしては相当勇気がいるはず。スローカーブじゃねえの?)
ビュウッ!!!!
慶野(ぶっ叩いてやる!!)
ピュッ!
慶野(!?)
ズバーン!!
《112km/h》
『ストライク!!』
慶野(ちっ。そんなチキンじゃねえか。享神バッテリー。外のストレートでカウントを取ってきた。)
余語(この遅いストレートは天性のものだ。普通の高校生じゃ本気でこの遅い球速が出るなんてあり得ない。この南浜のストレートは合わない打者にとっちゃ…)
(魔球と同義だぜ?)
慶野(またストレート!!舐めんな!!)
ブン!!
『これは空振り!!少し大振りになっているか!?ただこれでカウントツーツー!!一気に追い込んできた!!』
余語(コイツさえ撃ち取ればこの回は終わり。スローボールの後遺症もベンチで修正すればいい話。また行くぞ。)
南浜(使いすぎじゃね?)
余語(出し惜しみすんな。決めるんだよ。)
南浜(わかったよ。余語についていく。)
慶野(鬼頭さんを見逃し三振に斬ったあのボール。ただの遅い球。ただ、球速の割りに真っ直ぐ直進してくる。かなり伸びているはず。だけど所詮遅い球だろ…。)
ビュウッ!!
慶野(今度は読み通り!!行ける!!)
ブン!!!!!!
南浜『へっ!』
余語『ナイスボール!!』
『空振り三振!!!!!!下位打線で作ったワンナウト一二塁の好機、1番の鬼頭、2番の慶野の連続三振で邦南高校この回得点ならず!!3回途中からリリーフしている3年生サウスポー南浜、背番号11とは思えない好リリーフ!!!!!!!!6回の表も邦南高校得点奪えず!!!!!』
大場『野球は切り替えが大事だぜ!』
慶野『わかってる。翔真もゼロで頼むぜ!!』
『邦南高校、シートの変更をお知らせします。』
守備位置の変更↓
氷室:1→3
大場:3→1
『ピッチャーの氷室くんが、ファースト。ファーストの大場くんが、ピッチャー。以上に代わります。』
桜沢『きたな。大場翔真。』
鬼頭『見せてやれ。翔真。』
大場『鮮明に覚えてるぜ。6年前のお前ら南阪との対決。』
『今度は必ず、勝つ。』