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No.12:名門崩壊

(ザァザァ!!)


5回の裏の途中から降っている雨はやむ気配はない。


健太『この俺から3点もとりやがって。ガリ勉高校のくせに…気に入らねぇ。』


しかし…


(バン!!)


『ボールスリー!!』


氷室(制球が荒れてる。この雨だ、ボールが滑ってカーブは投げずらいだろう。となるとあとはあの厄介なフォークとストレートの区別。ノースリーのこの場面。フォークはない…。ストレートだ!!)


誠(このバッター…前の試合を見る限り基本的にはストレート狙いだな。このカウントだ。もうストレート以外眼中にないって感じか。じゃあこのボールを心おきなく試させてもらうか。)


誠はカットボールのサインを出した。


健太が投球モーションに入る。


シュッ!


氷室(きた!狙い通り!…じゃない!!)


カットボールは曲がるのが早すぎて氷室はかろうじてバットに当てた。


(カスッ!!)

(ボテッボテッボテッ!)

誠『サード!前!!』


矢野崎『めんどくせぇな。』


(ピタッ!)


矢野崎『なにっ!?』


グラウンドはこの雨でぬかるんでおり、ボテボテのサードゴロの勢いが殺され、途中で止まってしまった。

サードの矢野崎が急いでボールを取るも、バッターランナーの氷室は既に一塁ベースを駆け抜けていた。

これでノーアウト一塁。


矢野崎『ちっ。』


健太『ヘタクソ。もっと一歩目を速くすればまだわかんねぇ当たりだっただろ。』


矢野崎『あ?なんかいったか?おいヘボピッチャー。』


健太『てめぇ深く守りすぎなんだよ。あの1年坊がそんな強い打球飛ばすと思ってんのか?あ?わかった。速い打球来んのが恐いのか。チキン野郎。』


矢野崎『なんだテメェ?誰のせいで8回にもなって守備やってんだと思ってんだ?』


南『お前が一打コールドのあの5回裏の場面ででかい振りして三振したり、抑えればコールド勝ちっていう7回表の場面でことごとく失敗してんだろ。何様のつもりで矢野崎のこと責めてんだ?』


長岡『それにさっき矢野崎のことチキン呼ばわりしたが、テメェのピッチングじゃコイツらすら抑えられねぇと思って深めに守ってんだよ。』

南『そうそう。調子に乗らないでほしいね。まったく。』




眞野(センター)『なにゴチャゴチャやってんだよ…。瑞江とのデートに遅れるのは決まったな。瑞江に何て言おうか…。』

(カキーン!!)


天宮(レフト)『センターバック!!』


眞野『え!?え!?』


成田(ライト)『どこ見てんだ!上だ!!上だ!!』

眞野『打球が…!』


(ポテン!!)


大場『しゃあ!!!』

慶野『翔真!ナイスバッティング!!』

藤武『回れ回れ!!』


眞野『ヤバい!!!』

天宮『三塁打はしょうがない!!ランニングホームランだけは防げ!!』

江澤『何やってんだ!やる気あんのか!』


遂に眞野は打球に追い付いたが既に大場は三塁を回ろうとしている。


島谷倫『回れ回れ!いけるぞ!!』


眞野の精一杯の送球も及ばず大場のランニングホームランで二点を追加し、これで9-5。一気に4点差となり試合の行方はまだわからなくなった。


『2番、センター、慶野君。』



大場『いいぞ!!続け文哉(ふみや)!!』


誠『タイムお願いします。』


誠はこの空気を変えるために内野手を呼んで勝利への執念を改めて忠告しようとした。誠はこういったところは案外真面目なやつだ。



しかし…


健太『困っちゃうね。ヘタクソがバックにいたら撃ち取った当たりもことごとくヒットにされちゃうから。』


長岡『おいテメェ。あんま調子乗ってんじゃねぇぞ。大したことしてねぇのに人のせいかよ。こっちのが困っちゃうね。』


健太『調子乗ってるだって?誰が?そもそも5回の裏の攻撃でお前が相手のエースを打っとけばよかった話じゃねえか。モタモタしてるから結局相手ピッチャー代わっちまったじゃねぇかよ。自分のこと棚にあげんのも大概にしとけよ。雑魚が。』


長岡『言葉には気を付けろよ。結局人のせいにしてんのはどっちだよ。いい加減にしやがれ。雑魚はテメーの方だろ。』


健太『いい加減にしろ…。』

(ガッ!!)

健太が長岡の胸ぐらをつかんだ。


長岡『あ?やんのか?強いぞ~。俺は。』


誠『…。』


誠は下級生だけあって先輩の喧嘩には口を挟めないでいる。


南『つかお前さー。こんな無名校のやつらに5点もとられてエラそーにしてるって頭どうかしてんじゃないの?』


矢野崎『謝れ。今すぐ頭下げたら許してやる。』

江澤『クックック。早くしろよ。』


健太『ざけてんじゃねぇっつってんだろ!!』

(ボコッ!!)


健太が江澤を殴った。江澤はうずくまっている。


審判『コラ!君たち何やってんだ!!』


誠『すみません!今終わらせます!!』


審判『君!大丈夫かね!?』


江澤『別に。なんともないっすよ。こんなヒョロヒョロゴボウやろうのパンチなんて蚊に刺されたのと同じっすよ。』


審判『大丈夫みたいだが、次暴力ふるったらこの試合は没収試合となり、没収試合を招いてしまったチームは自動的に敗北するぞ!いいか!?これは最終警告だ!わかったね?』


誠『はい…わかりました。』


健太『誰がヒョロヒョロゴボウやろうだって?このゴキブリ人間が。』


江澤『はいはい。俺らはみんなゴキブリですよ。まあゴキブリは守備なんざできねぇからお前一人でこの試合終わらせるんだな。』


健太『…。』


長岡『おいおい。そんなデケー口叩いてまさかできないなんて言うはずないよな?』


誠『もうやめましょ!こういうの!!みんな一生懸命野球しようよ!!全国制覇するために今まで頑張ってきたじゃないですか!!』


健太『誠…。』


南『わかりましたぁー。弟がかわいそうだから守備はしてあげるよ。弟に感謝しな。お兄ちゃん?』


矢野崎『守備する代わりにこの試合負けたら全責任をお前に背負わせるから。そこんとこよろしく。』


健太『おう。当然だ。』


誠(兄貴…。無理しやがって…。みんなは気づいてないかもしんないけど、俺は気付いてるぜ…。)


健太(ちょっと、いや、相当ヤバいかもしんねぇ…。)


誠(兄貴はもう全力投球できる状態じゃない…。)





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