No.117:失恋
西口『堂金に…だと!?』
スッカァーーーッッッーーッン!!!!!
鬼頭『まずい!!!!!』
島谷倫『レフト!!いや、センターも追え!!』
『打球は前進守備の外野陣の左中間を真っ二つに割る!!これは逆転は間違いない!!二塁ランナーの桜沢も今ホームイン!!一塁ランナーの余語も三塁キャンバスを蹴る!!!!!!!!!』
西口『くそっ!!外野が浅すぎる!!』
(勾城は足も速いぞ!!!!早くしろ!!)
『さあバッター勾城は三塁へ到達!!三塁ベースも蹴るか!?いや!!止まった止まった!!勾城の走者一掃三点タイムリースリーベース!!!これで5回の裏享神高校逆転!!!7-9!!!そして点差を二点に広げた!!』
勾城『よし。』
西口『くそ…。今のも真ん中低めのストライクからボールになる変化球…。それをいとも簡単に外野オーバー…。狙われてたか…。』
氷室『逆転されたか…。ちっ…。9失点か…。佳美ちゃん…カッコ悪いと思ってるよな…。』
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島谷涼『佑介!!試合前のアップ中だよね?』
氷室『うん。どーしたん?』
島谷涼『いや、女の子がこれ、渡してほしいって。』
氷室『え。これって、手紙じゃん!誰からかな。』
島谷涼『じゃあまだ向こうでやることあるから。』
氷室『またあとで。』
がさっ…
氷室『誰からだ?この手紙…』
〔佑介くんへ。〕
氷室『え…よ、よ、佳美ちゃん?』
〔試合前で気合い入ってるときにごめん。昨日いつになるかわかんないって言っちゃったけど、今日伝える。〕
氷室『…。』
〔実は昨日、公園で佑介くんに気持ち伝えられたとき、めちゃ嬉しかった。氷室くんがウチの事そんな風に思ってくれてなかったし。教室ではあんまり喋ってなかったけど、昨日はデートに誘ってくれて。ありがとう。楽しかったよ。〕
氷室『やった。』
〔だけどね、ウチ、佑介くんとは付き合えない。ごめん。だって佑介くんがよく教室で野球部入らなきゃ良かった。とか、言ってるのよく聞いてたもん。そうゆうところ…嫌だな。もっとやりきってほしいな。もちろん意識高く。そうゆう人がウチ、好きなの。だから、ごめんなさい。佑介くんとは付き合えない。試合はもちろん観に行くつもり。応援してるから、勝ってよね!?〕
〔佳美より。〕
氷室『…。やっぱ…こんなもんか…。そーいえば言ってたな…。1学期のとき…。実際俺…野球が心の底から楽しいって思ったの…夏休みに入ってからだしな…。佳美ちゃんが知ってるわけないか…。俺が悪いや。』
氷室『まっ…切り替えっか。』
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『7番、センター、古瀬くん。』
ビュウッ!!!
カキーン!!
『これも外野への打球!!レフトへのクリーンヒットで今日の試合これで10点目!!10-7!!!!!!!!二年連続の甲子園出場に燃える享神高校がさらにリードを広げた!!』
氷室『くそ…。』
『8番、セカンド、野海くん。』
カキーンッ!!!!!!
『これもきっちりセンターに弾き返してきた!!!!!!ツーアウト一二塁!!!!!!止まらない享神打線!!!!!』
『9番、ライト、堂金くん。』
氷室(好きな人に振られたくらいで…俺何やってんだろ…。勝ちにこだわらなくちゃ…。あっついな…。…。佳美ちゃん…。俺…諦めた方がいいのかな…。佳美ちゃんのこと。また一から友達だなんて…絶対無理だと思う…。)
西口『なに考えてんだ?』
氷室『!?』
西口『おい。』
氷室『た、拓磨!!』
西口『なにお化け見たような顔してんだよ。タイム中だ。』
氷室『あ…わり…気づかなかった…。』
西口『…。佳美ちゃんか?』
氷室『ちが』
西口『諦めていいのか?』
氷室『なんでそれを!?』
西口『先輩達から聞いた。図星だな。振られたか?』
氷室『どっちだって拓磨には関係ないだろ!!』
西口『振られたか…。それは残念だ。だがそれで諦めていいんか?』
氷室『試合なんか諦めてねえよ!!まだまだ勝つつもりに決まってんだろ!!』
西口『違う。佳美ちゃんのこと、諦めていいんか?』
氷室『なんだよ。悪いのかよ?』
西口『俺は別にどっちでもいい。第三者だしな。所詮他人事だし。だけど俺だったら諦められねえな。』
氷室『どーゆー事だよ。』
西口『決勝戦のマウンド、立ってるだけで輝いて見えるぞ。氷室。こんないい場所立ってんのにアピールしなくていいのか?』
氷室『…。アピール…したくても…実力ねえからむしろ逆効果じゃねえか…。』
西口『諦めてどうする。打たれて当然とは言ったが、自分の実力を否定してどうする?なぜどうせ打たれる。って思うんだ?もっと堂々としようぜ。諦めんな。まだチャンスはある。この試合勝てばきっと変わるぞ。佳美ちゃんの見方も、おまえ自信も。』
氷室『!!』
西口『心のどこかで、諦めてんだよ。まだ。マウンドに立ってんだから、最後まで全力でやりきれ。負けたチームの努力を感じろ。俺らは負けたチームの重荷背負って戦ってんだ。名林の千羽鶴。見ろよ。アイツらに勝った者として、胸張ろうぜ。』
氷室『わかったよ。』
西口『それだけ。』
氷室『頑張る。』
『プレイ!!!!!!!』
氷室(おれ…諦めてたのかな…。そーゆーところを佳美ちゃんは気づいてた…。だから振られたんだ…。)
(変わらなきゃ。変わらなきゃ。勝って佳美ちゃんをもう一回振り向かせなきゃ!!できる力でこいつらを抑える!!!!!!抑えてみせる!!!!!!!)
カキーッン!!!!
『これもレフト前!!しかし打球が強すぎたか!?堂金のレフト前クリーンヒットでツーアウトフルベース!!!!!!』
氷室『11点目は渡せねえ!!』
『1番、ショート、神郷くん。』
ずしん
ずしん
ぼよよーん
西口(こいつはミート力もなかなか。さらにこの体型ながら厄介なことに俊足で非常に身軽な動きをする。そして…体型通り…かなり長打力も秘めているはず…。なにげに走攻守三拍子揃っている。ツーアウト満塁で迎えるにはかなり厄介だ。)
氷室『打たれっかよ…。まだ俺にはピッチャーとしてのプライドってのもよくわかんねえ。だけどさ。』
『勝ちに対するこだわり、それは持ってるんだ!!』
神郷『大好きなゾーンだよぉ~。』
スカーーーッッッッーーッン!!!!!
鬼頭『まずい!!』
(3点差で食い止めろ!!!!!!!)
西口『レフトォ!!!!!!!!』
木村『ハァ…ハァ…ハァ。』
『打球はレフトの木村へ!!追い付けるか!?ライン際だ!!!!!!』
木村『ここで捕れなきゃ、男じゃねえぇ!!!!!!!!!!』
バシィッッッッッッ!!!!!!!!!!
『捕ったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!レフトの途中出場の木村太郎、レフトライン際の難しい打球を見事なダイビングキャッチ!!享神に傾いた流れをもとに戻すかのようなファインプレイ!!!!!!!しかし5回の裏の享神高校、この回一挙4点を挙げ、逆転に成功!!!!!!』