No.113:無謀な勝負、そして発見
『2番、ピッチャー、南浜くん。』
西口(コイツの打力は未知数だ。変化球中心で攻める。)
…
ズバーン!!!!
『空振りの三振!!!!氷室今日初めての三振を奪ってきました!!!!』
西口(やはりか…。打力は並の控えと同じくらいということか。こりゃこっちにとっちゃこの試合、2番はカモだな。)
『3番、ファースト、北峰くん。』
北峰(俺が万全な状況なら…。すんません今坂さん。代わりにバットで貢献します。)
余語(北峰…。)
西口(享神のクリーンナップ。間違いなく愛知最強だ。全国トップレベルのクリーンナップだ。北峰、桜沢、余語。さらに勾城が続く打線。正直氷室じゃ厳しいぜ…。)
スカーン!!!!!
『これも痛烈な打球!!!!!!一二塁間を猛烈な打球が襲いました。一死一塁!!!!!』
『4番、レフト、桜沢くん。』
西口(ここでコイツか…。ストライクで勝負したくねえな…。さっきいとも簡単にグランドスラム放られてるからな…。)
小宮(フォアボールは仕方ないと思うよ。桜沢くんだし。)
西口(だよな。)
鬼頭(敬遠するならちゃんと立って絶対にバットが届かないように敬遠した方がいい。サクは打席での常人を遥かに越える集中力で敬遠されてることにすら気がつかない男だ。立ってやればさすがに気づくが。)
ビュウッ!!!!!
西口(よし。いいコースだ。ストライクにならなくてもいい。くさいとこ突きまくるぞ。)
ピクッ
ズバーン!!!
『ボール!!!!!!』
『さあ初球外れてワンボール!!!!!』
西口(まてよ。今、確かに…。)
(もう1球投げて確かめる。)
ビュウッ!!!!
西口(おっけーさすが氷室。注文通り。)
ピクッ
西口(やっぱり…。)
『ボール!!!!!!!』
『さあこれも外角ボール1個分外れてツーボール!』
西口(そーゆーことか。鬼頭先輩が言ってたことが真実だという前提で話を進めると、桜沢は打席では“無”だ。つまりは野性の本能的な感じでボールを弾き返す。来た球を打つスタイル。だが、その野性のままの姿だからこそ、)
((自分の癖は、顕著に現れる。))
西口(今の外角ボール1個分外した2つの同じ直球。打席での“読み”を行っていないからこそ同じボールに対しては同じ対応になってしまう。ただ桜沢の場合平均的な打者に比べると異常な程に“弱点コース”が見つけられない。もちろんそれはヤツの身体能力的な部分やセンスからくる面が大きいが。だが、絶対、いや、かなりの確率で反応してしまうゾーンがある。本能的に反応してしまっているってこと。それが、この、)
“外角の際どいボール”
ズバン!!!!!
『ボール!!!!スリー!!!!!』
西口(さすがに3球連続はあっさり見送るか。だがそれはつまり…、無意識のうちに外角を意識しちまってるってこと。そうすれば当然内角は抗力が弱くなる。)
(外を使って内で勝負すれば撃ち取れる可能性は格段に上がるはず!!)
鬼頭『バカ野郎!!』
(そんなに無理に勝負にいくな!!!!)
ビュウッ!!!
西口(内角の厳しいとこ来たぞ!!ナイスボール!!!!!)
カッキーーーーッッッーーーンッ!!!!!!!
西口(マジかよ…。)
鬼頭(だから無理に勝負するなって…。)
ボサッ…
『入ったぁ!!!!!!!点差を一点に縮める、享神の4番、S・6の1人、桜沢の高校通算99号となるホームラン!!!!!!!!!!二打席連発!!!!!!!!!!!!!3回裏、これで早くも今日全打点となる6打点!!!!!!そしてこのホームランで去年の自分、そして猪子石の渡辺一紀と並んでいた愛知県大会本塁打数を抜き、大会新記録の8本目のホームラン!!!!!!!!!7-6!!!!!!!!!!』
鬼頭(舐めすぎだって。サクを。)
西口(攻めた結果だ…。しょうがないか…。だが1つだけ、わかったことがある。)
(桜沢を抑え込むのは、0%に限りなく近い。)
西口(これが南阪の主砲…桜沢春毅の実力…。)