No.106:勾城秀哉
ズバーンッ!!!!
『ボール!!カウント2-3!!!!!!!!』
西口(元チームメートとして冷静に見つめてみると…氷室じゃ勾城は抑えられそうにない…。勾城は伊達に去年の全国準優勝したときの4番に座ってた訳じゃない…。黒シャーでは最も打撃力があったからこそ主砲だった。同学年の氷室とはまずフィールドが違う。)
ビュウッ!!!!!
西口(やっぱり氷室は相変わらず制球力はあるな…。ナイスボールだ。)
カキーン!!!!
『ファールボール!!』
勾城『ふう…。なかなかのコントロールしてるね。このピッチャー。』
西口(クサいところは無難にカットして逃げる。中坊の頃と変わってねえな。)
小宮『味方の時は頼もしかったけど、いざ敵となると非常に厄介だね…。勾城クン…。』
西口(勾城の厄介なところは長打力だけじゃない…。コイツは天性のバットコントロールを持っている…。おまけに選球眼もかなり高水準。)
小宮(拓磨。わかってると思うけど、勾城クンにインローだけは使っちゃダメだよ。そこは彼の打撃のツボだから。)
西口(わかってる。ただ今後の打席を抑えるためにも一つリスクを犯して試したいことがある。)
小宮(それって勾城クンが中学の頃唯一苦手にしてたボールを確認するってこと?)
西口(そーゆーこと。今の氷室のコントロールならきっと実行してくれるはずだ。)
氷室(ストライクからボールになる真ん中低めのY・H-LOVE ZUKKYUN-ボール?おっけー。)
西口(アウトローやインローじゃダメだぞ。選球眼のいい勾城はそのコースのストライクからボールになる球は見逃してくる。真ん中低めのストライクからボールになる球じゃなきゃダメなんだ。)
(ここだけはアイツが。中学の時唯一手が出てしまう、苦手コース!)
ビュウッ!!!!!!
西口(注文通り!!ナイスボール氷室!!)
カキン!!!!
西口(よし!!)
『さあ打球はショートの島谷倫暁。無難にさばいてツーアウト!!!!!!』
西口『やはり高校になってもアイツの苦手コースは克服できていなかったようだ。勾城をカモにできれば上位打線と下位打線の間の流れを切ることができる。』
余語『らしくねえな。お前があんなピッチャーにあのバッティングなんて。さては演技か?』
勾城『よくわかりましたね。バレバレでした?』
余語『どうして演技をした?』
勾城『あそこのコースは中学の頃苦手にしてて。高校になって真っ先に克服したんですよ。まあもちろん克服したことはあいつらは知らない。この初回ワンナウトランナー無しの状況で、俺が塁に出てもあまり意味はない。西口があのコースをついてくるのも想定内です。だからこそ今、演技をしました。まだあの真ん中低めのストライクからボールになる球を苦手としている。って思わせて。次自分にチャンスの場面で回ってきたときに確実にそのコースを相手バッテリーに攻めさせるため。』
北峰『さすがだな。勾城。』
勾城『あいつらが俺のことを知っていても、俺もあいつらのことよく知ってるんで。』