表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

こはみゆき

作者: 笹門 優

 しいなここみ様主催『冬のホラー企画4』参加作品になります。

 キーワードは『あの子』です。


1983年


 ぼくたちはいつも一緒だった。


 廃校寸前の小学校で、全校生徒たった6人の友だち。 6人いても全学年が揃わない様な学校の友だち。

 でもこの季節は7人だった。

 どこからともなく現れた女の子がいた……はずだ。

 どこの誰かもわからない、年も名前もわからない、いつの間にかまぎれ込んでる女の子。


 あの子は誰だったんだろう?



1981年


 あたしたちはいつも一緒だった。


 一番上のふたりがいなくなれば、別の学校とトウゴウ?されるような古いだけの学校で、それでもあたしたちは年とか関係なく10人みんな友だちだった。

 春はみんなで入学式のお手伝い、夏はたったひとりの一年生をつれて湖に遊びに行った。 秋は学芸会に運動会、誰かのウチにお泊まりにも行った。


 そして冬に、あの子に会ったんだ。



1982年


 オレたちはいつも一緒だった。


 『しょうこ』のヤツが卒業して、オレたちは8人になったけどそれでもオレたちは兄妹みたいにいつも一緒にいた。

 みんながイヤがっていたトウゴウもされずに、このまま平和に卒業を待つだけの学校生活。


 春が来て、夏が過ぎて、秋を通り越して、やってきた冬。


 あの子は雪と一緒にやってきた。


 いつの間にかオレたちの輪の中にいて、普通に遊んでいた。

 冬の間だけ一緒にいる友だち。

 冬の間だけははっきりと思い出せる友だち。

 誰も不思議には思わない。 誰もヘンだとか思わない。

 だって、それが普通だから。


「か~ごめ、かごめ!」


 輪になって遊ぶ。

 冬の間ずっと。

 雪の間もっと。



19XX年


「あ、なんかコワしたかもしれん」


 そう言う少年の通った後には朽ちかけた木製の社。 高さ50㎝程もあるだろうか? 神棚にも見えるそれが地面に無残な姿を晒している。


「何コレ? 犬小屋?」


 白熱した鬼ごっこで、必死に走った藪の中。 百葉箱よりも深い茂みにあった謎の物体だ。


「……なんじゃろ? ボロボロやね……。 お、中に何か入っとる」


「本、かなあ? ……読めないよ」


 その中にあったのは綴り紐で閉じられた、いかにも昔の本だ。

 屋外にあったモノの中という、保管状況が悪い場所であるにも関わらず、まだ読める程度には形を保っていた。


「何て読むんだろ? これは『生……を』だよね? たっぴつだぁ」


「これは『一年に』……かのぉ?」


「こっちにも『一』がある。 なんだろうね?」


 思いがけない拾い物に頭をひねる少年達。

 まだまだ娯楽の少ない時代である。 こんな『楽しめそうな』拾い物は滅多にある物ではなかった。

 だが、そこへ影がひとつ増える。


「それよりもじゃ、壊したってバレたら叱られるぞ」


「そりゃいかんな。 早う逃げよ」


「おうおう、逃げよ逃げよ」


 聞き慣れぬその声は誰が発したものなのか、そんな事確認するはずもなく少年達はその本を放り出し逃げ出してしまう。

 残されたのは壊れた社と、今にも壊れそうな古い本。 それと小さな影。 小さな小さな白い影。

 影がそっと落ちた本に触れると、それはグズグズと風化する様に崩れていった。


『一年に一度、生贄を捧ぐ』


 そんな文字が最後まで残っていた事に気づく者はいない。



1986年


 この春に6年生のとうたが卒業して、わたしはひとりこの学校に残った。


 わたしは今、5年生になったから、来年1年間を過ごしてから卒業になる。

 最後まで残ってくれるこの学校には感謝してもし足りない。


 でも、わたしは卒業できるのだろうか?


 いつもそんな不安がつきまとう。


 なぜか、どうしてかそんな不安が頭から離れない。


『あたしたち○人は友だちなんだから』。


 そう言ってくれたのは誰だっけ?

 あれ? わたしの友だちって何人いたっけ?


 とうた。


 としくん。


 しょうこちゃん。


 ……あれ? 3人だけ、だっけ?


 あれ?


 あの子は……だれ?

 ううん、ぽっかりと抜けた部分にいる『だれか』は……だれ?



 だれなの?


 だ……れ……?







 年に一度の摘まみ食い


 やわいお肉のお子をひとり


 髪も血肉も欠片も残さずに


 在った事すら消える大食漢


 ぽっかりと空いた心の空白は


 決して埋まらぬ喪失感


 父も母も解らぬ涙の訳は


 喰われた子どもの記憶すら喰われたから


 何故そんな事が出来るのかと問われるなら


 そこは偽神暗鬼と申しましょう


 偽物とは言え神は神


 神とは言えど鬼は鬼


 神も鬼も不条理なものでありましょう


 しんしんと積もる雪の空の如く


 ぽっかりと空いた心の虚に


 やがて鬼が生まれますならば


 子食み雪と名付けられましょう




1987年 わたし…さおり(現5年)

1986年 オレ…ゆうじ(当時6年1986年消失) ぼく…とうた(1986年卒業)

1985年 あたし…かえで(当時6年1985年消失)

1984年 おれ…こうたろう(当時6年1984年消失)

1983年 ボク…けんすけ(当時5年1983年消失)

1982年 アタシ…もみじ(当時4年1982年消失) 僕…としゆき(1982年卒業)

1981年 俺…かける(当時6年1981年消失) 私…しょうこ(1981年卒業)

19XX年 わし…きっぺい(当時3年生19XX年消失)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最後の年表でゾクッとしました。最後まで生き残っていた子は強運ですね。
タイトルの意味が……! 怖っ! ギシンアンキ。いいですね(*´꒳`ฅ) 面白かったです。 後書きも解りやすくてよかったです。
こここ……怖……! あとがきを読んでもう一度読み返しつつ、ちゃんとまだ理解しきれていないところもあるので何度も読みました。 うーん、これは本当にホラーですね。 子どもが少ない学校という設定も絶妙ですご…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ