芸術家のスイングと恐怖の木製バット
廃部までのカウントダウンは、残り三日となっていた。
チームは5人。フォンの剛速球に耐えられる選手、そして、その剛速球を打ち返せる**打者**が緊急で求められていた。
会計管理者マイは、生徒会室で新たなデータを出した。「協力性マイナス、瞬間最大筋力プラス、集中力マックス…この条件に当てはまるのは、美術部のチン・クエットよ。彼なら非効率なチームスポーツの枠を超越できるかもしれない。」
ナムとフォンは、校舎の裏にある静かな美術室に向かった。クエットは、そこでただ一人、彫刻刀のように細い木製の棒を握り、空気を切り裂く繊細なスイングを繰り返していた。彼はチームスポーツには全く興味を示さない、静かで、全てに無関心な少年だった。
「彼はバットを筆だと思っているんだ」フォンは囁いた。
ナムは彼に近づき、野球のバットを差し出した。「クエット。このバットを振ってみろ。君の集中力は、一瞬の爆発力に変換できる。」
クエットはバットを手に取った。まるで美術品を扱うように慎重だ。ナムはフォンの暴投の危険性を説明し、マイはデータタブレットで警告する。「フォンの球は時速150km/hよ!怪我のリスクは99%!」
クエットは気にせず、ただ目を閉じ、集中した。彼はボールを打つことではなく、完全なフォームと空気の流れを感じることに全神経を注いだ。
ナムはフォンに命じた。「いいか、フォン!コントロールは無視して、今持てる最高の暴投を投げろ!」
フォンが例の「天空の舞い」で投げたボールは、予想通り、右へ大きく逸れた。しかし、その瞬間、クエットの全身の力がバットに凝縮された。彼は目を開けることなく、本能と集中力だけでバットを振り抜いた。
カキィィィン!
乾いた、そして恐ろしい破壊音。
ボールは正確に、そして猛烈なスピードで、センターを守るトゥアンの頭上を通過し、遥か遠くの壁にクリーンヒットした。トゥアンは、自分の走る領域を侵略されたことに驚き、立ち尽くした。
「今の打球音…完璧な芯だ!」ナムは歓喜した。「これが君の『芸術』だ、クエット!君は我々の**四番打者**だ!」
クエットはバットを筆のように持ち替え、一言。「…打つのは、簡単だった。ただ、このバット、もう少し削った方が、理想のバランスになる。」
こうして、「乳鉢・乳棒協会」に静かなる破壊者が加わり、チームは6人となった。しかし、あと3人。タイムリミットまで時間はない。




