来訪者
せっかくなので楽しんでいこうかな、なんて、俺にしては珍しくポジティブな思考に至る。童心に返るとはこのことか。
そうして机の上にあるゲームを物色していると、不意に部屋の入口の扉がガラリと開かれた。
「たのもおおぉぉ————ッ!!」
耳をつんざくような絶叫が響く。
部屋にいた全員が、一体何事かと目を向ける。
その視線の集まる先にいたのは、
「猫屋敷!?」
無駄にテンションが高いだけの平凡な眼鏡男子、猫屋敷レオだった。
「ちょっ……なんであなたまでここに来るのよ!?」
もはや取り繕う余裕もなくなった水無瀬が叫ぶ。
「え、何。また知り合い……?」
アナログゲーム同好会の面々はあきらかに困惑している。微妙な空気が漂い始めた教室に、猫屋敷は意気揚々と足を踏み込んで、
「ボクだけじゃないよ! 今日は二人で一緒に来たんだ!」
そう言って、入口の方を振り返る。
彼の後から中へ入ってきたのは、すらりと背の高い一人の男子生徒。遠目からでもわかるくらいに整ったその顔立ちに、女性陣が息を呑むのがわかった。
「げっ……色紙!」
猫屋敷が入ってきた時点である程度予想はしていたが、現れたのは宿敵のイケメン・色紙蒼斗だった。
「いやぁ、奇遇だね。なんだ、一年A組の生徒ばっかりじゃないか」
彼は冷ややかな微笑を浮かべて部屋の中を見渡した。
総勢十名となった教室内のメンバーのうち、半数近くにあたる四名がA組の生徒である。
「あれ。もしかしてこの同好会、乗っ取られようとしてる……?」
同好会のリーダーと思しき男子生徒は、ただならぬ危機感を覚えて呟いていた。
そんな彼の隣で、女性陣はしきりに色紙の方をチラチラと見ながら、
「ねえ。あの人『色紙くん』っていうの?」
「本当に一年生? かっこよすぎ……!」
などと控えめに黄色い声を上げている。
「ちょっと、色紙。一体何しに来たのよ。どうせ部活の内容なんて興味ないんでしょう? あたしたちを追って来ただけで」
「部活に興味がないのはあんたらも同じなんじゃないのか? 大方、天上先生に関する情報でも仕入れるつもりだったんだろ。残念ながら収穫はなさそうだけど」
威嚇の姿勢を崩さない水無瀬と、胡散臭い笑みを浮かべた色紙とがバチバチに睨み合う中、猫屋敷だけは「え? ゲームしに来たんじゃないの?」と首を傾げている。
その後方で、上級生の男子生徒たちは「もう用がないなら帰れよ……」「他所でやれよ……」と面倒臭そうに呆れている。
「ま。せっかく来たんだし、ちょっとは遊んで行こうかな」
色紙はふらふらと教室内を歩き、机の上にあるゲームの数々を眺める。
やがてトランプの束を手に取ると、今度は俺の方へ目を向けた。




