プロローグ 荒野を抜けて
足音の主が居なくなってからどのくらい経っただろう?
5分なのか1時間なのか分からない。
でも凄く長い時間に感じた、それだけは確か。
物音が近くから聞こえなくなったのを何度も確認して死体の山から出る事にした。
靴下ニーハイだから履き直すの面倒なんだよな・・・。
何とか靴下と靴を履き直して人が居ない事を確認しつつ前へ進む。
ちょいちょい見える黒い煙は何なんだろうな、想像したくもないけども。
ラバーソールだから足痛くなってきたなとか喉乾いたしお腹も空いたなとか取り留めない事を考えながら遠ざかってく悲鳴と剣戟をBGMにとりあえず歩く。
町じゃなくていいからまともな人がいる所に行きたいなぁ・・・。
太陽(であってるのかは分からないけど)が真上に来て足も棒になってきて何なら体力も限界に近付いてきた頃、ようやく景色に変化が見えてきた。
緑が見えてきた!きっと水も近くにあると思いたい!!!
乾いた心が一気に潤いを取り戻すのを感じて足取りも軽くなる。
働いて払うからご飯とか食べれないかな、肉なんて贅沢は言わないから!!
ようやく戦地から抜け出せるとウキウキしながら暫定森に向かう。
テンションが上がりすぎてここから新たな日常の始まりだっ!なんてありがちなアニメか漫画のモノローグが脳内で流れだす始末。
まさか本当に新たな日常の始まりが訪れるなんてこの時の私は予想もしてなかった。
「ログハウス・・・」
荒野を抜けて暫定森、改め森に入り道無き道を歩くとログハウスとしか言いようのない建物を見つける事が出来た。
驚いて声に出しちゃったわ。
ドアを何度かノックしてみたけど応答はなし。
ドアの真上にはアルファベットを上下逆さまにしてから鏡文字にしたような奇っ怪な文字が。
くっそ、なまじ分かる文字なだけに脳がバグって逆に読めない・・・!!
えっと、何て書いてあるんだろう?
謎の文字とにらめっこしてみるけど読める気配がない。悲しい。
YとG2つは解読出来たがこれ何て読むん???と謎文字の解読に勤しんでいるとカサ、と草を踏む音が聞こえた。
「そこで何をしている」
振り返るのと同時に耳馴染みのよいテノールボイスで話しかけられた。
・・・迷子って言って信じて貰える状況かな、これ。