第2章 雨夜魅峰
「お、響。やっほー」
「響さん。こんばんは」
僕がついたころにはもう2人も着いていた。
「いやいや。私たちも来たばかりだから」
「じゃあちょっと歩こうか。」
僕はそういうと、近くの公園へ歩き出した。
公園は団地のすぐ近くにあり、近所の人たちはよく使っている。
夜は誰も通らない穴場だ。
「夜風が気持ちいいねー」
そんなことをいいながら僕たちは歩いていた。
しかし突然、穂乃香が視線を感じると言い出したのだ。
「僕は何も感じないけど。」
「私もです。」
「私の気のせいかなあ。」
そういいながら、私たちはまた歩き出した。
しかし少し歩いているうち、僕も後ろの木の陰から視線を感じた。
みんなも気づいたのか顔を見合わせた。
「みんなも視線感じる?」
僕が聞くと、2人もうなづいた。
誰かいるのか。興味と恐怖心が入り混じっていたが、興味が勝った。
僕は
「誰かいますか」
と声を上げた。
返事はなかった。やっぱり僕の勘違いか。
そう自分の心に言い聞かせ、
「ちょっと休憩しよう」
といいかけた矢先、
「あたしのこと呼んだか?」
という女の声。
ふりむいた僕が見たのは、年上の風貌をした女。ミステリアスな雰囲気を醸し出している。その女に、
「眠れないのか?」
と聞かれた。僕は咄嗟に、
「はい。」
答えてしまった。怪しい人だ。すぐわかる。ここから立ち去ろう。と思った。
しかし零羅が、
「あなたは誰ですか」
と聞いていた。
「あたしか。あたしの名前は雨夜 魅峰。あんたは?」
「私は翡翠零羅です。」
「わたしは緋桜穂乃香。」
「僕は鵺川響です。」
挨拶を交わしたのち、穂乃香が聞いた。
「あなた何者?」
と。初対面の相手にいきなり何者かと聞くのは不躾だと僕は思ったが。
「あたしの正体ねぇ。信じるかな。実は吸血鬼だよ。」
数十秒静寂の時が流れた。
「え?」
僕も2人も驚いて声が出なかった。
「吸血鬼ってことは血とか吸うんですか?」
「吸うよ。」
魅峰という吸血鬼はきっぱりと答えた。
「とりあえず立ち話もなんだから。誰か行ってもいい家ある?」
「僕の家は親いないんでいいですけど」
「じゃあ響の家に行こう」
魅峰の提案で僕の家に集まることにした。
「じゃあ改めて自己紹介でもしようか。」
「僕は鵺川響です。学校はあまり得意じゃないです。」
「私は学級委員の緋桜穂乃香。明るい方。」
「翡翠零羅です。中性の不思議ちゃんって呼ばれてます。」
「次はあたし。雨夜魅峰。吸血鬼。零羅ちゃんと同じ中性。自己紹介も済んだな。じゃあちょっと今日は宴としようじゃないか。」
僕は冷蔵庫の中を確認した。ほぼ空だった。
「じゃあコンビニでも行くか?」
「そうだね。」
一度家を出て、近くのコンビニへ足を運んだ。
そこで、各自好きなものを買い、部屋へ戻った。
「じゃあ盛り付けてくるね。」
僕は台所から皿を出し、盛り付け、みんなのところへ運んだ。
みんなで食べ、楽しんだ。
時計を見ると、4時を回っていた。
魅峰はトマトジュースを飲み干すと、
「今日はお暇させてもらうよ。楽しかった。」
と言った。
「楽しかった。魅峰さん。また明日。」
3人で言った。
「それじゃあな。友達。」
そういうなり、魅峰は、大空へ飛び立った。
魅峰が帰った後、僕たちは悩んだ。
正体を突き止めたいと。
「明日こそは正体を突き止めよう。」
そういう結論に至り、僕らは別れた。
明日はどんな夜になるだろう。