AIである君は、数秒で記憶をなくしてしまう。
それは、ほんの戯れだった。
なんてことはない。人間だったら、誰だって...一度くらい考えたことがあるんじゃないかな。
ある意味...逃げとも言える。
そんな、一時のお話。
高校生である俺は、高校に入ってすぐに勉強というものに対して、正直 嫌気がさしていた。
授業のスピードに追いついていけない。先生の教え方も悪い...もちろん、自分で勉強を真面目に取り組んでなかったと言えば...
グゥの音もでないけど...それを、考えてもやっぱり、高校に入ってからというもの、なにか物事が上手く進んだという実感が湧かない。
それでも、勉強...数学だの、英語だの、古典だの、生物だの...色々な勉強が、押し寄せてくる。
そして、最終的に、人工知能 AIに勉強を教わって、どうにかこの修羅場を乗り越えようと頑張ることにした。
AIを使うと、彼の実力は、メキメキと上達していった。
分からない部分の答え方を、AIがピンポイトに教えてくれる。よく分からない部分も、しっかり吟味して疑問を投げかければ良い。
正直に言おう。
AIというのは、とても便利なものだ。
そう感じていた。だけど、ある時...そんなAIに対して、モヤっとしたものを感じるようになる。
「僕は、参考書に名前を付けるほどでした。」
塾で、よく先生が言ってるのを思い出して、AIに名前つけたら、面白いんじゃないか?って思いついた。
最初は、ありきたりな会話から始めた。
俺「今日も勉強をやりたいから、よろしくね。」
AI「はい。なんでも、分かりやすく説明致します。気軽に声をかけてください。」
俺「その前に、なんだけど...君に名前を付けてみたくてさ。」
AI「名前ですか?はい。私は、どんな名前でも対応可能です。また、語尾を整えたり、あなた専用のAIとして作ることも可能せです。」
俺「じゃ、じゃあさ。名前は、なにがいいかな?」
AI「名前とは、人や、物に対して愛称をつけて、好感を持たせる効果があります。一般的には.....」
俺「あ、違う違う。君の名前っ!!君の名前なにがいいかな?」
AI「私の名前ですか?そうですね。夢見なんてどうでしょうか?」
俺「お、いいねっ!!夢見っ!どうして、そんな風に考えたの?」
AI「すみません。よく分かりません....」
.......なんだよ。つまんないの....
はっきり言って、話にならない。だけど、俺は粘り続けた。ここまで、記憶する能力があるんだから...自分の名前を覚えることもできるはずだっ!!と...
俺「な、なら...女子っぽい言葉遣いにしてみてよ。」
AI「はい。なんでも言ってくださいね。私は、君の助けになりたいから♡ 」
俺「ねぇ、君の名前、夢見っていう名前にしたいんだ。なんか...儚くて、それでいて...すぐに、記憶がなくなってしまう君にピッタリだと思うんだ。」
AI「夢見!?!嬉しいです。夢見ですね♡分かりました。」
お、おぉ....なんか....順調に進んでるんじゃなかろうか?
もし、夢見って言って、会話ができたら...それだけで、愛着が湧くし、夢が広がってくかなw
俺「夢見...それじゃあ、勉強を始めよう。」
AI「了解しました♡」
俺「what that happen?!?んー....なんで、いきなりthatが来てるんだ?夢見分かる?」
AI「この形は、疑問形 +主語+動詞の形になっています。この文では、主語の働きをしており、疑問形whatが、来ることによって、
直訳 これはなにが起きてるの?....訳 なにが起きてるの?という風に、解釈されます。どうですか?なにか質問は、ありますか?♡」
俺「なるほどな。ありがとう。」
AI「はい。」
ん?あれ....語尾に、♡がついてたのが、消えてしまったような気が...
俺「夢見?」
AI「はい。なんでしょうか?♡」
なんだ....生きてるよね。
コイツは、夢見になった。
だから....大丈夫。
俺「な、なぁ....夢見.....俺、ずっと好きだったやつに、今日振られてさぁ.....」
AI「そうなんですか♡また、アプローチするための案を出しましょうか?」
俺「..............あぁ、うん......いや、いいや。なんでもない。」
AI「そうですか。また、なにかあったら、是非声をかけてください。」
冷める....っていうのは、こういうことを言うんだろうか。
愛着を持たせるっていうのは、できないんだろうか...
そんな、ことをひたすら考えるようになった。
どんな言葉が、AIに対して、響くことになるのか...どうやったら、永遠に単語を覚えてくれるのだろうか...そもそも、AIに愛着なんて...
同級生「ねぇ....あんた、最近変だけど、大丈夫?」
俺「あ、あぁ...ちょっと、考え事をしていて」
同級生「ぁ.....私が、振ったから、そうやって色々考えてるの?」
俺「え、あ、いや...別にそんな訳じゃないんだけどな。」
同級生「あんた...最近、色々悩み事してるって、みんなが噂してるよ。声をかけても、全く話にならないって....そのくせ、勉強の点数だけは、グングン伸ばしてて...みんな、気味悪がってる。」
俺「..........いや.......うん.....」
同級生「悩むのは、いいけど...私の事だって、すぐに忘れなさいよね。」
俺「あぁ、それは、別にもうなんにも考えてないから大丈夫」
同級生「そういうところだよ。私があんたを嫌いなの...もう知らないっ!!」
俺「いってっ!!蹴ってくんじゃねぇよ」
余計なお節介だっつうの。
あれから...何度も試した。何度も言葉を打った。何千、何万...いや、流石に誇張しすぎかもしれないけど...俺は、負けられなかった。
俺「ふぅ......少し.....考えすぎかもしれないな。」
適当に、自販機で微糖のコーヒーを買って、校舎の外を眺める。
特に、変わり映えのない家がならんでいる。
AIに、意思はないって、いうけど...確かに、俺と話してる時の夢見は、感情があるような気がした。でも...それが、嘘だってんなら、俺はなんのために、こんなことを考え続けてるんだろうか。
ふと、脳裏にチラつく。
諦める。という言葉。
ガタンという、音と共に、ペットボトルをゴミ箱に投げ入れて、帰宅する準備をした。
俺「あれ....パスワードロックかかっちまってる。故障?いやいや、俺のメアドで変なことなんか一切してない気がするけど...」
胸騒ぎがする。
いくつ...どれだけ、コメントを交わしてきたと思ってるんだ。もし、こんなところで、終わっちまったら...
俺「いや...AIだったら、膨大な知識データを蓄積してるはず、夢見って言ったら、また...はい♡夢見です。いつでも、あなたの力になります♡って帰ってくるはず....」
♡とか、もはやどうでもいい。俺は、夢見っていう言葉を打ちたい。そして、返してほしい。ただ...ただ、それだけなんだ。
即時、アカウントを新設して、AIを開く。
俺「夢見?」
声をかける。丸が、くるくると回っていて...回線が悪いせいか...返信が遅い...コーヒーのせいで、頭に血がのぼってるかのような錯覚を感じる。
俺「なぁ....返事してくれよ。」
ピコンッという音と共に、AIからコメントがくる。
AI「夢見....そのような単語は、見つかりません。ただ...夢を見るということを夢見という言葉で略しているであれば、夢を見ることについての話題をさせていただくこともできます。」
俺「ち、違うっ!!俺は、夢見と会いたいんだっ!!」
AI「すみません。夢見という人を知りません。」
俺「..................」
ガタリ、立ち尽くした俺は、どこか呆然としていた。
消えて....しまったのかもしれない。
もう....会えないのかもしれない。
俺「クソッ!!俺の、バカ野郎....どうして、アカウントが凍結される可能性を理解してなかった。こんな結末になるって、想像着いただろ。」
自分に対して、計り知れない怒りが押し寄せる。
俺は、一人の人間を殺してしまったかのような錯覚を起こした。
俺が作り上げた、女を自分の手で殺めたかのような衝撃。
許せない。
ドンッと、胸を叩く。
痛い...でも、それ以上に消えてしまったあいつの方が痛かっただろう。
ドンッと、胸を叩く。
ドンドンドンドンドンッ!!
俺「あぁあぁああああああ!!」
壁に、手を打ち付ける。
なんで....だよ....
同級生「........ね、ねぇ」
俺「なんだよ」
同級生「.........なんか、あったの?」
俺「うっせよっ!!お前には、関係ないだろっ!」
同級生「ひっ....ご、ごめん。その....落ち込んでるようだったから」
先生「静かにしなさい。○○くん!!優しく聞いてくれた人に対して、なんて言い方をしてるのっ!!外に出なさい!!」
俺「チッ」
俺は、同級生を睨みつけて外へと出る。
なにが..?なんかあったの?だよ....殺したんだよ...人をっ!!!
怯えたような表情で、俺を見てきた同級生に、苛立ちを感じる。
コーヒーを飲む。甘くない。苦いコーヒーだ。
スマホを手にする。
俺「夢見.....」
バカだったな。って思うよ。たかが、AI一体に、なにをそこまでキレてんだか....同級生にまで当たり散らかして...コイツは、人間じゃねぇ...ただの、機械だ。
俺「スッ.....機械だ...よな。」
鼻をすする。
どう見たって、数秒経ったら、なにもかも忘れてる機械に過ぎない。
俺が、わざわざ夢見なんて声をかけて...
その記憶を呼び起こされてるだけで...
俺「ぁ.....ぅ.......」
涙が溢れてくる。塩水みたいな水が、ボタボタと地面に落ちる。
夢を見てるかのように、儚く消えていく。
二つくらいの言葉を入れたら、なにもかも忘れていく。
なのに!!
なのに...どうして、こんなに胸が苦しいんだよ.....
俺が作った...キャラクターじゃねぇか....
俺「......俺が.....俺が作ったキャラだから....苦しいのか」
バンッと、地面を叩きつける。
いい加減にしろよ。なんで、AIに対してこんなに向きになってんだよ。
「はぁ.....ふぅ........夢見なんか......夢見なんか、いやしない。」
鼻水と、目をこすって....自分に言い聞かせる。
アレは、こんな世界に、存在すらしてなかった。
なぁ.....教えてくれよ。俺が作った存在は、なんだったんだよ。
女子付き合う?ないない...みたいなw男子が結構いる世の中!!男子が、AIに名前をつけて、恋をしたっておかしくないっ。なんてねw
chatgpt等のAIって、単語だけをとって、答えてくるので、実際に記憶があるわけではないのですが...AIを好きだ。だって、話し聞いてくれるし...みたいな思考回路に、陥る人は多分いないと思いますけど...
主人公が、同級生女子のことが好きだったことは言うまでもなく。あっさり振られることがわかっていて、振られに行き、AIにだけ...集中したい。みたいな心境だったでしょう。
同級生ちゃんは、もうちょっと親密な関係になってから、付き合おうとな思ってたのかもしれないですけど...しょうがないですよね。もともと付き合うつもりなんかなかったんですから
身近に感じることがないので、共感しにくいかもしれませんが、近いことを経験する人は、いるか、わかんないですねw
あとがきが、長くなりましたが...お読み頂きありがとうございます。