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併願(コント台本)

作者: ほたて丼太郎

告白をモチーフにした不条理コントです[ コント台本 ]

(ゲラゲラコンテスト4応募作)


男子高生((さとし))がベンチに腰掛けて読書している

女子高生2人(夏海(なつみ)(りん))がもじもじしながら遠巻きに聡を見ている



凛:夏海だったら大丈夫だって


夏:じゃあ、私行くね


凛:頑張れ!



 夏海、聡の方へと歩いていく

 聡、顔を上げて夏海を見る



夏:あの… えっと…


凛:夏海、ファイト!


夏:私あなたのことが好きです! お付き合いしてください!


聡:へぇ、そうなんだ…


夏:あの、返事は…



 聡、少し悩んだ後、意を決したように



聡:返事をする前に片付けたいことがあるんだ、ちょっと待ってもらっていい


夏:うん、全然いいよ



 聡、すたすたと凛の方へと歩いていく

 目の前まで来た聡にとまどう凛



聡:中村凛さん、ずっと前からあなたのことが好きでした! 付き合ってください!


夏&凛:えー-っ!


夏:え? なにそれ?


凛:あ、あたし… 君のことそういう対象で見たことないので… ごめんなさい


聡:そうですか…



 聡、しばらく落ち込んだ後、頬をぱんと叩く



聡:よし、切り替えていこう



 聡、すたすたと夏海の前まで戻ってくる



聡:お待たせ、返事はOKだよ、お付き合いしましょう


夏:なにそれ? 意味わかんない!



夏:今、私が告白したよね? なんであなたが別の女の子に告白してるの?


聡:僕は彼女のことがずっと好きだったから、心残りのないようにしたかったんだ


夏:それ私の目の前でやる? もし、凜ちゃんがOKしたらどうするの?


聡:二股とかありえないし、もちろん君の告白は断るよ



 夏海、絶句して考え込む



夏:つまり、あなたは確実に彼女ができる状況が生じたから、ダメ元で本命に勝負掛けたってこと? 私ってただの保険?


聡:いや、たった今本命の彼女になったよ


夏:何が彼女よ! 付き合うわけないでしょ!


聡:なぜ? 君は僕のことが好きなんじゃないの?


夏:目の前であんなことされて付き合えるわけないでしょ!


聡:なぜだ… ?



 聡、少し考えこむ



聡:夏海さん、少し視点を変えてみようか… 君は去年この学園を受験したよね


夏:それがなに?


聡:ここが本命だった?


夏:ううん、ここは先に推薦で合格が決まってて、本命の女子高は落ちたの


聡:じゃあ、本命に合格してたらここには来なかったんだよね


夏:まあ、そうね


聡:僕のやったことはそれと同じだよ


夏:全然違う! 受験と告白は全然違うよ!


聡:物わかりの悪い人だなぁ


夏:それに、あなたが好きなのは凜ちゃんでしょ、好きでもない私と付き合えるの?



 聡、また少し考えこむ



聡:えっと、君はこの高校に来てどうなの? 楽しくない?


夏:ううん、来てよかったなって思う


聡:本命じゃなかったのに


夏:そんなの関係ない、すごくいい学校だと思う


聡:そうだよね、僕も君と出会えてすごく良かったと思ってる、たとえ一番好きな人じゃなかったとしても…


夏:そうね…


凛:夏海、騙されちゃダメ!


夏:は、危ないところだった



 聡、ちっと舌打ち



夏:とにかく、お付き合いは少し考えさせて


聡:僕ほど誠実な人間はいないのに


夏:どこがよ!


聡:自分の気持ちに正直だし嘘もつかない、誠実そのものだよ


夏:まぁ… 確かに


凛:夏海、騙されないで! そいつどっからどうみてもサイコパスよ!


夏:サ、サイコパス…


凛:普通じゃないよ、そいつ


聡:普通普通って、今は多様性の世の中だよ



 聡、夏海をじっと見つめる



聡:外野がうるさいけど君はどうしたい? 僕は君の選択を尊重するよ


凛:夏海、冷静になって!



 夏海、頭を抱えて悩む



聡:じゃあ、一つ提案があるんだけど… 当面僕と付き合って仮面浪人をするというのはどうだろう?


夏&凛:仮面浪人?


聡:本命校の受験に失敗した学生が、他の大学に通いながら本命校合格を目指す高等戦術さ



聡:君に新しく好きな人ができるまで、僕を彼氏とするがいい


夏:そんな都合のいい話は…


聡:もし君が僕を振ったとしても僕は全然かまわないよ


凛:やっぱりこいつサイコパスだよ、騙されないで


聡:否定からは何も生まれない、リスクを背負って踏み出す者だけが幸せを掴みとれるんだ


凛:夏海、こいつと付き合うと不幸がぷよぷよみたいに鬼連鎖で襲ってくるわよ!


夏:ああぁぁぁー!



 夏海、かんしゃくを起こす



夏:もういい、考えるの面倒くさい、とりあえず付き合ってみる


凛:夏海!


夏:嫌になったら別れればいいんだし、今度は私が保険を掛ける番よ!


聡:ということだよ、凛さん


凛:もういいよ、私疲れた…



 項垂れた凜に夏海が近寄る



夏:ごめんね凜、こんな結果になっちゃって


凛:夏海、あなた後悔しない?


夏:告白したこと自体めっちゃ後悔してるよ



聡:じゃあ、僕ら今日から彼氏彼女だね、早速だけど今日一緒に帰らない?


夏:まぁ、いいけど…


聡:じゃあ、校門で待ってるから



 聡、立ち去ろうとするところに凛が声をかける



凛:待って!


凛:最後に一つだけ、夏海を泣かせたら承知しないからね


聡:はいはい


聡:では、僕からも凜さんにひとつだけ


凛:…何?


聡:えっと、念のためもう一回聞くけど、僕と付き合わない?


凛:付き合うかーっ!!



 夏海、泣き始める

 凛、一生懸命夏海をなだめる


 ― 了 ―



鬼畜の所業というヤツですね。

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