サリーちゃんは覗き穴を覗かせたい
新田成幸、奴は2人っきりになっても、頑なに私に無関心だ。
悪魔として異性として、ここまで屈辱を味合わせるのは、新田成幸ただ1人。
どうにかして奴を誑かし、虜にさせるべきか熟考した結果、やはり隣人という立場を利用するに限る。
そして同時に、こうも考えた。
私を知っていて同然だという前提で、行動したのが間違ってたんじゃないか、と。
だから今回の作戦は、見向きされないなら見させるだけ作戦だ!
とりあえず、私の私生活が丸見えな覗き穴を、奴のいる壁に開けてやった。
なーに、奴が出払った隙に開けたもんだ、気付いてはないだろう。
役目を終えたら適当に塞ぐから問題はない。
問題はどうやって覗き穴へと、奴を誘導するかだ。
私が直々に、覗き穴あるので見て下さい♪なんて言えば、奴の無関心は虚無に達するだろうな。
だから私は天才的な閃きで思いついた。
高校でさり気なーく会話に交えて、壁に穴が開いてしまったと、奴に聞かせるものだ。
思い立った日が吉日、即実行だ!
♢♢♢♢
「住まいの方はいかがですかサリー様♪」
「とても過ごしやすく、何不自由ないですよ? ただ少し問題が……」
「Gですか!? 大家を訴えましょう! 腕利きの弁護士と親戚ですので、お任」
「ち、違いますよ? そのですね? お恥ずかしながら、一人暮らしにはしゃいでしまって、隣人側の壁に少々穴を……」
どうだ!穴だぞ!穴!貴様だけしか知らない、とっておきの穴情報だ!
相変わらずそっぽ向いてやがるが、聞こえてるんだろ?
覗き穴の先には、清楚なキャミソールと下着だけの、完全無欠の無防備美少女が待ってるぞ?
ほれほれ、もっと刺激的な格好をして欲しければ、私の虜になれ!新田成幸ぃ!
♢♢♢♢
さて、そろそろ奴が、深夜の1人遊びをする時間帯だ。
部屋を真っ暗闇にするのが、奴の癖らしいが、こちらとしては好都合!
真っ暗闇の部屋に見覚えのない一筋の光が、壁から現れるのだからな!
私が帰宅してからは、しっかりと奴の一人遊びの時間帯まで、悪魔パワーで覗き穴を隠してるから、今が解除する絶好の時だ!
パチン
よし、これで奴は事前情報を得た覗き穴の存在に、ちゃんと気付くだろう。
私もしっかりキャミソールに下着、おまけに風呂上がり姿だ!
この姿で刺激的なストレッチをすれば、流石に奴も私に夢中になる!
勝った!これは完全なる勝利を掴んだんだ!
さぁ、私がわざと大きな物音を立てて、貴様を覗き穴に誘導してやる!
少し可愛らしく、ドジっ子っぽい一面をみせる、はしゃぎすぎて壁にぶつかっちゃった♪で行こう。
「……ふんふふーん♪ お風呂上がりのストレッチ♪ ストレッチ♪」
今だ!壁に猪突猛進!
「キャ!?」
ドゴッ
ふっ……大太鼓並みの衝撃音だ。奴も何事かと、部屋をキョロキョロ見渡し
メキメキ
……メキメキ?
お、おい、ちょっと待て!
あんだけの衝撃で、壊れたりしな
メギメギ……
ピャアアアア!?
マジクソにヤバい!てか、ボロ壁過ぎんだろ!
亀裂が入り始めてるし、破片もボロボロ落ちてやがる!
あ、悪魔パワーで無かった事にしてやる!
キュピィーン!
ふ、ふぅ……焦るあまり、アパート全体を鉄筋コンクリート建築にリノベーションしてしまった。
穴も開けられん以上、覗き穴作戦は金輪際通用しない!
新田成幸め……ボロアパートに住み着く貴様のせいだ!