表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

サリーちゃんと新田成幸の裏で、色々としていた新田円

 私、新田円が存在し始めてから今まで、誰しもの心を鷲掴みして来たわ。

 何もかもが手に入り、どんなわがままも思い通り、まさに私の思いのまま。


 ただ、お兄だけは違った。

 如何なる手段を持ってしても、うんともすんとも心動かされず、兄として接してくるのよ!

 最初こそ思い通りに行かず、ムシャクシャしまくってたけど、とある日に気付いたのよ。


 一切揺るがないお兄こそ、私の求めてた唯一無二な存在なんだって。


 そんな自覚が芽生え始めてからは、お兄色にどんどん染まって、お兄無しじゃもう何も考えられなくなったわ。


 お兄が人間界に留学後も、後を追うように私も一年遅れて留学したわ。


 留学の中身こそ、心底どうでも良かったけど、長期休暇になれば毎日お兄を独占出来るのが、唯一の心の拠り所だったわ。


 のに……この前の夏休み、お兄から得体の知れない異性の残り香が、匂ったのよ。

 今までリアル異性にうんともすんとも靡かず、無関心を貫いて来た、あのお兄がよ?

 いきなりあり得ないでしょ。


 だから私はこう思ったわ。

 お兄を誑かそうとする異性が、身近に存在し始めたんだと。


 私のお兄に近寄る存在は許されない。

 お兄の良さは私だけ知ってればいい。

 お兄を見るのは私だけでいい。


 だから私は思い付いたわ。


 お兄の祝福の瞳を曝け出せばいいんだって。

 イメチェンと称し、無効化付与された前髪をバッサリ行けば、祝福の瞳が野生に放たれるわ。

 そうなれば陰キャなお兄にとって、第三者から夢中になられるのは、精神肉体諸共に拷問も同然!


 人間界で縋りどころのないお兄には、私は安息の地そのもの。

 つまり、私はお兄をもっと独占出来るって訳よ!

 そうと決めた私の行動は、もう誰にも止められなかったわ。


 ♢♢♢♢


 作戦実行から早一ヶ月以上、お兄が私の下へと縋ってくる事は無かった。


 お、おかしい……どうなってるのよ!

 祝福の瞳を曝け出して日常を送れてるなんて、お兄には絶対無理なのに!


 クソ……一応保険の為に、お兄の文化祭に行ける許可届で、直接会って確かめるしかないわね!


 本祭は明日らしいから、前日の今日に連絡すれば、流石のお兄も断ることも出来ないわ!


 早速ビデオ通話を掛け、早まる鼓動を抑制しながら、お兄の応答を待った。


 プッ


「もし。明日早いから、もう寝るんだけど」

『明日、お兄の文化祭に行くから』


 んっく……お兄の声と顔を見ただけで、身体が疼いちゃう……。

 ぽ、ポーカーフェイスを維持するのよ!私!


「会えないルー」

『ついさっき許可届が受理されたのよ。お分かり?』


 正真正銘天界から受理された、許可届を突きつけた以上、もう何があろうとも行ってやるんだから!


 ♢♢♢♢


 文化祭当日、お兄の自由時間に合わせて、校門に来たはいいけど……。

 いつも通り、無駄な人間共に群がられてるわ。

 本当に邪魔なんだから、さっさと消えて欲しいわ。


「おーい、迎えに来たぞー」


 何百何千何万もの声があろうとも聞き取れる、愛しの肉声が聞こえたわ!

 周囲の人間がゴミカスに見える中、宝石の様に輝くお兄にズイズイと接近。


 文化祭服のお兄……ラフさがありながらも、かっこよさを兼ね備えてて好き♪

 じゃなくて! 

 祝福の瞳の効果が、限りなく皆無に近い状態になってるじゃない!

 一体どうなってるのよ……。


 と、兎に角!

 い、いつも通りの対応をしないと、ボロが出ちゃうわ!


「……3分早いじゃないの」

「遅れるよりいいだろ? あ、ギリカップラーメン出来るな!」

「つまんな」


 嘘嘘嘘!つまんなくないわ!

 小粋な微笑みを誘う、最高のジョークよ!


 ハッ!

 お、お兄が私の身体を、じっくり見てる気が……だ、ダメ……まだ心の準備がぁ……。


 と思ったら、別の事を考えてそうな上の空顔になってる。

 まさか……例の異性と、私を妄想で比べてたのでは!?


 こうしちゃいられない……奴がいるだろう、お兄の学年教室まで行ってやるわ!


 ♢♢♢♢


 ここがお兄が普段通ってるエリアね……。

 微かに私と似た、特別な存在が1つ……いや、2つ存在してるわね。

 危険因子共には、私の方がお兄に相応しいと、分からせてあげるんだから!


「さ、先に行くなって! (まどか)!」


 んっきゅ……すぐに追い掛けてくれただけで、顔が熱くなっちゃう……ぴゃー!

 ぽ、ポーカーフェイス、ポーカーフェイス!


「だったらリードしなさいよ」

「たく……ほら、手」

「しょ、しょうがないわね! 繋いであげるわ!」

「いや、いつもそっちがして来るじゃん」

「ふ、ふん!」


 はい、これで私の勝ち確間違い無しー。

 何百何千何万回やって来た手繋ぎで、私の握り手が形状記憶されてるんだから、他の奴はもう異物よ、い・ぶ・つ♪

 

「新田君の彼女さん?」

「どうなのどうなの?」


 はん。誰かと思えば、見るからに低レベルな人間達の女ね。

 きっとお兄のクラスメイトだろうけど、こんな連中如きに口を開くなんて片腹痛いわ。


「い、妹です」

「……ふん!」


 どうや? 

 完全無欠の妹様ぞ?

 私と対等の地位に立てるなんて、絶対にあり得ないと、これで分かっただろう!


「照れ隠しじゃなくてー?」

「マジの妹です。大体、円は好みのタイプじゃないんで」

「な!?」


 お、お兄の好みのタイプ……じゃない?

 こ、この私が?

 し、視界が一気に揺れて、立っているのがやっとなぐらい、滅茶苦茶ショックなんですけどぉ?!


「あ、サリー様! 新田君の妹さん! 物凄く可愛いですよー!」


 な、何だ……サリーっ……ほわぁあああっつ?!

 か、確実に何者かが接近してるのは分かってるのに、訳も分からん後光で何も見えん!


「新田君の妹さん! こんにちは♪ 尊木サリーです♪」

「!?」


 突然に声を掛けてきたそれは、私が存在し始めてから今までの中で、遥か高みを行く存在だと、一瞬で知らしめてきた。

 頭のてっぺんからつま先まで、何度視線を泳がせても、私が勝るものがなかった。


「ど、どうしたの?」

「す、すみません……コイツ、身内以外とほぼ口利かなくて……」

「そうなんだ……それでもいいから、これから仲良くして欲しいな♪」


 な、何なんのよコイツ……容姿も良ければ、中身まで良いって言うの?

 天使の私よりも天使じゃないの……。

 こ、こんなの屈辱よぉおおお!


「……帰る」

「え」

「は、はぁ!? 来たばっかりだろ!」

「帰る!」

「ちょ! 待てって! あ、ご、ごめんなさいサリーさん! アイツにビシッと言っておくんで!」

「あ、き、気にしないでいいよー!」


 ごめんお兄……尊木サリーを超える目的ができた以上、1秒たりとも時間が勿体無いの!

 だから待ってって……お兄の好みのタイプになるその日まで!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ