サリーちゃんの悪魔コスが最高過ぎた新田成幸と、初対面の妹の円
文化祭本番の前日、抜群のコンディションで当日を迎えるべく、かなり早くベッドに入った時に、それは来たんだ。
スマホ画面に映る、円という妹様のビッグネーム着信がね。
時折、一方通行的近況報告をビデオ通話でしてくるんだよな。
しかも夜明けまで。マジ睡眠妨害イベだわ。
ただし!今回は真っ当な理由がある以上、アイツの魂胆は瞬く間に崩れ去る!
さぁ!お前の電話に出て、さっさと寝てやろうじゃないの!
プッ
「もし。明日早いから、もう寝るんだけど」
『明日、お兄の文化祭に行くから』
うーん……聞きたくもない言葉を耳にしてしまったぞぉ……。
夏休みならまだしも、行事で会っちゃダメだったルールだった筈。
寝ぼけてしまってるのなら、兄として教えないとな!
「会えないルー」
『ついさっき許可届が受理されたのよ。お分かり?』
画面に映る、正真正銘天界から受理された、許可届が突きつけられてるじゃありませんか~。
おい、マジで明日の文化祭に来ちゃう訳?!
滅茶苦茶嫌なんですけどぉぉおお!?
♢♢♢♢
夜明かしビデオ通話から逃れたものの、結局頭を抱えるハメになって一睡もできませんでした。
くそ……せっかく完璧なコンディションで行きたかったのに……。
ただでさえ微妙な頭の回転なのに、正常に動くかすら自信ないんだぞ!あの貧乳め!
俺の自由時間に合わせて、校門に来るらしいけど……早速校門で人集りが発生してやがるぜ。
似た様な状況は、嫌って程経験済みなのに、何時まで経っても行きたくはないよね!
自由時間浪費+メンタル浪費に抗い、人集りを掻き分けて、我が妹様とご対面じゃ。
「おーい、迎えに来たぞー」
いつも通り、俺の声が聞こえるまでスマホと睨めっこしてた妹様が、ズイズイ接近。
「……3分早いじゃないの」
「遅れるよりいいだろ?あ、ギリカップラーメン出来るな!」
「つまんな」
小粋な微笑みぐらい見せてくれない?
まぁ、つまんない自覚はありましたけれども?
てか……俺の気のせいじゃなければ……円の奴、夏休みの時より、お洒落してないか?
お洒落基準がどうなってるんだよ、マジで。
それに比べたら、サリーさんのナチュラルお洒落度と言ったら、もう唯一無二だかんな!
はぁ……サリーさんのデート服なんか、マジ女神級なんだろうなー……お目に掛かれる日は、来ないだろうけどね!
くっ……あれ?アイツどこ行った?
ま、まさか単独突入しやがったのか!?
あ、あのつるぺた小娘がぁあああ!
♢♢♢♢
幸い、円に惹きつけられた人達の痕跡を辿ったお陰で、すんなり追い付くことができた。
「さ、先に行くなって! 円!」
「だったらリードしなさいよ」
「たく……」
この小娘、わがまま過ぎやしませんかね、ねぇ旦那?
でも、勝手に行動されるよりかは断然マシか。
「ほら、手」
「しょ、しょうがないわね! 繋いであげるわ!」
「いや、いつもそっちがして来るじゃん」
「ふ、ふん!」
何百何千何万回やって来た手繋ぎも、そろそろ卒業して貰いたいもんだわ。
見た目だけは超絶美少女だから、妹だって知らん人に、誤解を招かれたら面倒臭いんだよ。
しかも現在地が、俺のクラスの目と鼻の先。
クラスメイトに目を付けられれば、それこそ説明が。
「新田君の彼女さん?」
「どうなのどうなの?」
やっば……女子クラスメイトが興味津々にエンカウントしやがった!
フラグ立つ前にフラグ回収されたわ!
こ、ここは簡潔に事実を言うしかない!
「い、妹です」
「……ふん!」
自慢気に胸を張ってらっしゃいますが、微塵も御主張なさってませんからね?
虚しいだけだから、公の場では止めようね?
「照れ隠しじゃなくてー?」
「マジの妹です。大体、円は好みのタイプじゃないんで」
「な!?」
なんだ円の奴、急に傑作ミステリーのネタバレ食らったみたいなオーバーリアクションなんかして。
「あ、サリー様! 新田君の妹さん! 物凄く可愛いですよー!」
な、何……サリーさんが……ほわぁあああっつ?!
こ、コスプレをするのは聞いてたけれど、本格的な悪魔コス……。
天使の俺が言うのはご法度だけど、最高としか言いようがない!
「新田君の妹さん! こんにちは♪ 尊木サリーです♪」
「!?」
な、なんだ円の奴。
サリーさんに挨拶もろくに返さんで、頭のてっぺんからつま先まで、何度も視線を泳がせてるぞ?
特にボディーラインを見てるけど、流石に美少女としていただけない表情になってるぞ。
「ど、どうしたの?」
「す、すみません……コイツ、身内以外とほぼ口利かなくて……」
「そうなんだ……それでもいいから、これから仲良くして欲しいな♪」
こ、こんな無礼でわがままで貧乳な妹なのに、神対応……マジ悪魔姿なのに天使に見えてきた……ふぐっ……。
さぁ我が妹よ!
天使よりも天使なサリーさんの、差し伸べる手を握り返すんだ!
「……帰る」
「え」
「は、はぁ!? 来たばっかりだろ!」
「帰る!」
「ちょ! 待てって! あ、ご、ごめんなさいサリーさん! アイツにビシッと言っておくんで!」
「あ、き、気にしないでいいよー!」
フォローまでバチくそに完璧なサリーさんの、ありがたい言葉を心に染み渡らせ、円を追い掛けた。
けど時既に遅し、そのままアイツは本当に帰っちまった。
滞在時間約10分未満、本当に何がしたかったのか分からんかったわ。




