サリーちゃんの運命的出会いの引っ越し挨拶作戦
隣席で何気なくアピっても、奴に無意味なのが分かった以上、別の手段でアピるしかない。
まず奴の住処である2階建てアパートの、隣部屋を奪う事だ。
部屋主は、飲み会と性欲を生き甲斐にする、馬鹿な男大学生だ。
街で偶然の出会いを装って、気のある素振りと、胸チラ足チラで、コロッと私をお持ち帰り。
適当な路地裏で、悪魔パワーを使って善人に変え、部屋を丸まんま頂いた。
悪魔パワーの使用許可例その1、善人に害ある者。
悪は善人を誑かし、悪魔は善人悪を吸収し、更なる高みの悪魔となる。
だから善人に害ある者は、悪魔にとっても邪魔でしかない。
害ある者に悪魔パワーを使えば、マイナスとマイナスが合わさり、善人となる仕様がある。
ただし、善人にした奴に悪魔パワーは二度と使えない。
晴れて奴の隣人になった私が、早々に取った行動は、運命的出会いの引越挨拶だ。
転校生設定の私はまだ、住居が決まらずにホテル滞在だって事になってる。
実際に最高級ホテルの最上階で、優雅に人間たちを見下してはいる。
それが築20年のアパート暮らしになるんだから、不服があって当然だ。
だがまぁ、尊い私に無関心な奴を、誑かせるのなら構わない。
さぁ、ドアを開けるがいい新田成幸!
屈辱の恨みを晴らしてやる!
コンコン……ガチャリ
「はい」
「隣に引っ越して来た、尊木サリーで……あぁ! 新田成幸君!」
「あ、うっす」
バタン
と、閉じやがった……だ、だと!?
この私が隣に引っ越して来たのに、あの塩対応!
引っ越し挨拶用の手作りクッキーも、用意したってのに!
悔しい!滅茶苦茶悔しい!
クソ……必ず貴様を、私の虜にさせてやるんだからな!
新田成幸ぃいいい!