サリーちゃんは手作りハンバーグを新田成幸に食べさせたい
あの日以来、私の心には新田成幸が住み着き、容赦なく心を擽ってきやがってる。
瞼を閉じても鮮明に思い浮かぶ、吸い込まれるような蒼い瞳の顔に、何度もドキドキさせられたことやら……。
尊い私が、逆に虜になるんじゃないかと、最近悔しながら嬉しく、滅茶苦茶に心乱されてる有様だ!
意識してる、してないの二択を迫れれば、してる方に天秤は傾くだろうが、まだ確信を得てる訳ではない!
ので、本日! 調理実習の日! 私は新田成幸に手作り料理を食べさせ、心動かされたかの反応を確かめるんだ!
さぁ……3つ星レストラン級の料理スキルの腕の見せ所だ!キャ♪
「エプロン姿もお似合いです♪ サリー様~♪」
「ありがとう♪」
「新田君も決まってる~!」
「ど、どうも……」
新田成幸と同じ班なのは、一切文句は無いが……私以外の雌と、普通に会話を交えてるのが無性に腹が立つ!
ついこの間まで、狭間ミカエと私以外と、会話の一つせんかったのに、夏休みデビューで手のひら返しって何だよ!
確かに?バンダナとエプロン姿のコラボは最高としか言えんし、写真だってバシャバシャ撮りまくり……んっ!
まだ何も始まってないというのに、勝手に意識を持ってかれるな!私ぃ!
ふぅふぅ……落ち着いた。
今はとにかく、ハンバーグ作りの役割分担を決めなくては!
勿論、私の独断ではあるがな!
「じゃあ私と新田君とで、お肉をこねるから、野菜とかお願いね♪」
「ブヒィイ! やらせて頂きますぅ!」
「完璧なまでに遂行します!」
「あ、尊木さんと……」
お? お? お? チラッと私を見て、意識してんのか我?
思わず顔がにやけるが、自然とそうなってしまうのだから仕方があるまい。ふふ♪
必然的初めての共同作業は、もはや新婚のリハーサルも同然だな!
私が夕飯を作ってて~仕事から帰って来たら~玄関までお出迎えでしょ?
そういえば……は、裸エプロンとか好きなのかな……うぅ……恥ずかしいけど……や、やってあげ……ふん!
馬鹿!私!馬鹿!
新婚ラブラブな生活を夢見てるみたいじゃないか!
はぁ……はぁ……も、妄想がどんどん悪化の一途を辿ってる……くそ……。
「だ、大丈夫?」
「……ふぇ? ……わ、私に言ったの?」
「う、うん」
ほわぁ……し、心配してくれたの?私の為に?私だけに?えへ……へへへへ
はっ! だらしない顔に化けるところだった! あぶねぇ……。
「えっと……や、やろっか」
「ふぇ?! な、ナニを?!」
「え。肉こね……でしょ?」
肉……こね……んはっ! そうだ! ハンバーグを作るんだった!?
つい、一線を越える常套句を囁かれたと思った……。
いいか私……手作りハンバーグを食わせて、心動かされたかの反応を確かめるんだろ?
揺らぐんじゃない……今回の為に、最近、本調子ではないが、微々たる悪魔パワーから抽出した悪魔粒子を用意してるんだ。
このまま各種のスパイスとブレンドした悪魔粒子を、肉種に混ぜれば準備完了だ。
悪魔粒子を人間が一口食べてしまえば、己の本音が口から零れる、言わば自白剤なる効果を発揮するものだ。
留学ルールにもギリギリのラインで引っ掛からないから、ノープロブレムだしな!
さぁ……貴様の本音を私に吐き出しやがれ! 新田成幸ぃ!
♢♢♢♢
「わぁ~♪ 皆のお陰で、とても美味しそうに出来上がったね♪」
「プギィイ! も、勿体ないお言葉ですぅう!」
「皿まで食べてしまいたい!」
「……た、食べようか」
有能なモブ女子と私達の分業で、究極のハンバーグがここに爆誕だ。
肉こねの際、新田成幸の手の甲に浮き出てた血管に、見惚れて悪魔粒子スパイスを入れ忘れそうになったが、ギリギリ間に合って良かった。
兎にも角にも、あとは口に運ぶだけでミッションコンプリート……ふふ。
「パク……んぐんぐ……さ、サリー様の物になりたいです。サリー様のおみ足の触れる、床材になりたいです」
「サリー様とお風呂に入って【自主規制】」
ふっ……モブ女子の本音が零れたという事は、効果は覿面だな。
さぁさぁ……新田成幸……貴様の本音はどうなんだ?
「……ん、美味しい……」
「……え?」
「サリーさんの入れたスパイスのお陰かな? 今まで食べたハンバーグの中で、一番だよ」
え、え、え? ヤバい。滅茶苦茶嬉しい。え?
だ、だって人間に悪魔粒子を……え? 本音喋っちゃうんだもんね? だって効果覿面だったもん!
じゃ、じゃあ……新田成幸は私のハンバーグが一番チュキ……でゅへへ~。
もう~こんなにも笑顔満開にさせてくれちゃって~。
あ♪ 私からもちゃんと言ってあげないと♪
「新田君達が手伝ってくれたからだよ♪」
「そ、そうなのかな……」
照れ臭さを隠すのに、ハンバーグをモグモグ食べちゃって~もう~可愛い♪
この~正直過ぎ者の新田成幸め~♪




