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サリーちゃんと新田成幸の監視を再開する、ミカエ

 夏休みが明けたはいいが、変化を遂げた尊木と新田を、より注意深く監視する必要になった。


 新田は祝福の瞳を曝け出し、人間達を夢中にさせる有様。

 前髪に無効化付与をしてるのに、その前髪をバッサリ行きやがってるんだ。

 あやつ自らが愚行に走るとは考え難いので、夏休みを共にしていた実妹の新田円が関与してると考えられる。


 尊木は悪魔パワーが異常値を記録し、常時人間達に良い意味で悪影響を及ぼしてる。

 理由は定かではないが、夏休み中頻繁に外出してるのを確認済みだ。

 悪魔パワーをその時にでも蓄えたのだろう。


 両者共に夏休み明けデビューとは、一体何を考えておるのか、正直知りたくもないが、監視者としては奴らが道を外れないかを見張る必要がある。


 現に、新田が登校するまでの道筋は、奴に夢中になる人間達で溢れかえり、教室内じゃセルフ袋の鼠状態だ。

 花達も人間である以上、新田の教室には絶対近付けさせまい。


 問題は尊木だが、校門付近で生徒達の幸せそうな死屍累々が広がってる事から、既に校内へと足を踏み入れてるに違いない。

 同じクラスな以上、両者の接触は避けられないが、周囲の人間が巻き込まれないか心配だ。


「ミカエちゃん? さっきは窓見てたけど、今度は廊下見てるけど……どうしたの?」

「! ううん! 何でもないよ! 花ちゃん!」


 まずい……花達が一緒なのに、不審行動を取り過ぎたか。

 尊木の様子が分からなくなるが、奴が教室に入りでもすれば、何かしらのアクションが起こるだろうし、その時に動けば問題はないか。


「ははーん……さてはミカっち……私達の気を引こうとしたんだね」

「おぉ~なるほ~」

「な訳ないでしょ! だよねミカエちゃん!」


 気を引く気はなかったが、麗子がそう見えていたのなら、少しばかり利用させて貰うか。


「ちょびっと……あったかな?」

「ぎゃわいい!」

「おかわ~しゅきしゅき~」

「ミカエちゃん! ぎゅ!」

「わ!」


 私自身を利用すれば、花達を教室に留めておける魂胆だったが、3人のギュッハグで身動きが取れん。


 だが、こうして改めさせられるな……人間界学で学んだ人間は、目の前にいる花達には当てはまらないと。


 夏休み中、もう一度人間界学を見直した結果は、人間を明らかに下に見てるものだった。

 しかも、さも天界の者が上に立つ存在だと、学びを通じ啓発させていた。

 全ての人間がそうでないのに、勝手に決めつけられた事が、何よりも腹立たしくてたまらない。


 だから定期報告書を通じ、私は天界の上の連中に、人間界学然り、人間に対する不当な扱いの改善を、訴えるつもりだ。

 学に不真面目だった私の言葉に、耳を傾けるなんてあり得んかもしれんが、やらないよりかはマシだ。


 ガシャン……


 尊木達の教室方面から物騒な音が……まさか!


「皆! ちょっとごめん!」

「あ! み、ミカエちゃん!?」

「早! ……残像も美少女すぎん?」

「やわにく~」


 花達の声を後ろに、私は一目散に尊木達の教室に突入、尊木が自分の机付近で横たわっていた。

 新田も突っ伏しながら気を失ってる様だが、一体何が起きたというんだ……待て。

 クラスメイトの様子が平常時と変わってないのは、どうしたもんだ……。

 尊木の悪魔パワーも平常時かそれ以下……新田も祝福の瞳の効果が限りなくゼロに近くなってる……。


 もしや……元々天使と悪魔は相反する者同士……祝福の瞳と異常値を記録する悪魔パワーが、相殺し安全圏まで中和されたのか?

 あり得なくない話だが、例外中の例外案件だぞ、これは……。


「はぁはぁ! ミカエちゃん! 急に走り出してど……わ!? と、尊木さん!?」

「横たわってても尊い……ふっぐ!」

「ありがたや~ありがたや~」


 追い掛けてきた花達にも影響がないという事は、尊木と新田の力は一時的にかもしれんが、皆無に等しくなったと確信してもいいかもしれん。


 兎にも角にも、こいつらを……いや、新田の奴は常時突っ伏してるようだがら、このまま自然に目覚めるまで放って置くか。


「み、見惚れるのは後にして、尊木さんを保健室に運ぶの手伝って!」

「「「りょ、了解!」」」


 新学期早々に厄介ごとをまき散らしたコイツらの事は、しっかりと報告書に纏めなければ。

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