サリーが虜にしたい男、新田成幸
煩悩を捨て去り、無欲に生きる。
なーんて、ド真面目な生き方は俺には無理。
好きな時間に寝て、好きな物を食べて、とことん自由に生きる。
欲を満たしてこそ、生きる実感が湧くってものさ。
だから自分の時間を何よりも優先する為、友達も恋人もいらないぜ!
8畳一間の素晴らしき空間と、ネット環境さえあれば、そこはもう楽園さ。
俺、新田成幸の人生は、ずっと楽園のままだと、そう思ってた。
が、高校1年の4月半ば、尊木サリーさんが転校してきて、本当の生きる実感が湧いたさ。
今までの楽園は、ただのニート部屋。
サリーさんのいる空間こそ楽園なんだって、気付かせてくれた彼女にマジ感謝!
もう存在するだけで尊いのに、同じクラスで隣の席よ?
運命じゃね?運命だろこれ!
良い匂いするし、髪サッラサラだし、体エロいし、声もずっと聞いてられるし、もう天使よ!
ただまぁ……恐れ多すぎて、今まで一度も会話した事ないんですけどね……はぁ……。
いつの日か、サリーさんとイチャコラライフを送れれば、マジハッピー過ぎて死ぬと思う。
でも、サリーさんに特別な感情を持っちゃいけないんだ。
だって俺は、天界ルールで留学しに来た、天使なんだもの。
留学期間も高校卒業までの9年プラス下見に1年、計10年。
10年て……10年て。
実感してても二回言いたくなるわ。
下見の1年間で、人間が欲深いわがまま生物だって分かってから、やる気は無いよね。
小学生からスタートした留学は、適当に過ごして、ちゃっちゃと高校卒業まで行くのが、当初の俺の留学ゴールプランよ。
でも、サリーさんという天使も同然な人間のお陰で、残り3年間が短過ぎるって思えるようになったんだ。
あーあ……俺が天使じゃなければなぁー……。