サリーちゃんは夏休みを共にしたい
遂に………遂にやって来た!夏休みぃい!
日付けと睨み合いし続けた一ヶ月間は、もはや懐かしさを覚えるな!
人間達が憂鬱と時間浪費に勤しむ、ただの覚えゲーな期末テストは、余裕を持ってトップテン入り!
悪魔頭脳からすれば、人間共の学力は赤子並みだ。
だが今後の尊いライフには、適度に角の立たない私を見せないとだもんな!ふっふっふ。
新田成幸も夏休み補習を逃れた様で、心底安心したわ。
雌豚の奴は、私の一つ下の順位だったのが気に食わんかったが、夏休みに入ればしばらく顔を見なくて済むから、どうでもいいな。
前置きはさておき、夏休み初日の今日!
私が入念にリハーサルを重ねて来た、作戦決行日と決めてるんだ!
題して、夏休みで新田成幸を虜にしちゃう作戦!
まず奴に読書感想文用の本を借りに行かないかと、何があろうとも図書館へと誘う。
そのまま図書館で2人きりの時間を過ごしながら、夏休みの計画を強引に立てて、お昼はファミレスなんかで楽しいランチ♪
そしてそれぞれ部屋に戻る際に、名残惜しさと照れ混じりな顔で、また明日ね……と言う!
わ、我ながら完璧すぎる作戦だぁ!
ふっふっふ……夏休みの計画も入念にインプット済みだから、話はスムーズに円滑に進むだろうな!
今日は図書館だろ? 明日は町にブラブラ歩いて~ゆくゆくは海水浴に花火大会!
他にもいっぱいあれやこれや楽しんで~最終的にはひと夏の恋♪ でゅふふ~……はっ。
いかんいかん!浮かれてる場合じゃないぞ!
奴を虜にする事を優先するんだ!忘れるんじゃない!私!
全ては奴の応答次第だが、訪問者が私だと分かれば出ざるを得ないだろう。
勿論、男が好きそうなチラ見えする谷間の白ワンピ、しなやかな美脚、艶めく銀髪や白肌を守る帽子を装備済み。
さぁ! あとは新田成幸の部屋をノックするだけだ!
♢♢♢♢
困った……物凄く困った……。
……どうした私よ、たかがノック如きで心臓を高鳴らせてるんじゃない!
小粋なノックをすれば良いだけだろ!
だから夏の火照りに負けない、沸き上がる熱情を体に出すんじゃない!
かれこれ5分もドアの前でたじろいでしまうなんて、私らしくない! うぅ~!
が、頑張れ私! 一歩を踏み出せぇ!
「にゃ、にゃい!」
コンコン
大丈夫大丈夫……ふぅふぅ……いつも通り尊い私を演じればいいだけ……。
はっ! ふ、服は変じゃないだろうか?! 匂いは平気か?!
やばいやばい……今になって滅茶苦茶焦って来た!?
も、もし拒絶でもされたら……はっぁあああああああ!?
どうする!?どうする!?どうする!? どうす……る……。
……ん? あ、新田成幸の応答が……ないぞ?
流石にノックされたら、覗き穴で確認ぐらいはするだろうに、何故応答しな。
「おや、新田さんに御用なのかい?」
「にゃはい!?」
び、ビックリした……だ、誰かと思えば大家のBBAか……新田成幸だと勘違いしたじゃねぇか。
若干緊張は解れたが、その分ガッカリはしたわな。
だがまぁいい。
大家のBBAなら新田成幸の応答不能理由を知ってるかもしれんし、遠回しに聞いてみるか。
「こ、こほん! あのですね? クラスメイトの新田さんを、図書館へお誘いしたかったのですけど、応答がなくて……」
「そりゃ、長期休み中は毎年、実家に帰ってるからねぇ」
「へ?」
「知らなかったのかい?」
な、何で……何でそんな重要な事を教えずに、帰省しやがったんだぁあああああ!
新田成幸ぃいいいいいいいいい!




