サリーちゃんが2人だと一石二鳥な新田成幸
登校早々に、とある違和感を覚えたのは俺だけなのか?
クラスメイトの誰一人として、その違和感に気付いておらんわい。
言わずもがな、違和感の主はサリーさんなんだけどさ?
なんか……異様に尊みが、いつにも増してるって言えばいいのやら、尊さしか残ってないと言えばいいのやら?
とにかく絶対に様子がいつもと明らかに違うんだ。
ただでさえ珍事なのに、それだけじゃ終わらないのよ。
休み時間に教室を出たら、他クラスの教室を覗き見てる、別人のようなサリーさんを目撃したんよ。
すぐ教室に戻ってみたら、こっちにもサリーさんがいるし、本気で意味不明過ぎた。
覗き見してるサリーさんは、何故か知らんけど誰も気付いてないし、無駄に考えるのを止めたよね。
でも一つ言えるとしたら、サリーさんが2人いて一石二鳥って事だね。
♢♢♢♢
放課後、面倒臭い教室掃除で、いつもより数十分帰りが遅くなったわ。
隠キャだからと言って、俺1人に任せられた訳じゃないよ?
しっかり班の皆とノンコミュニケーションで、いそいそやりましたから!
きっと前にサリーさんが、クラスの皆が仲良くなれたら嬉しいですって、言ってくれたからだな。
じゃないと、隠キャぼっちの俺に掃除は押し付けられてたな。
考えただけで怖い怖い。
……まぁ、過去にそういった経験が実際あったけどさ?
天使パワーの浄化で、掃除なんか一瞬で終わるから、1人の方が楽っちゃ楽なんだけどねー。
勿論、サリーさんの気持ちを無碍に出来ないから、しっかりと真面目にやりましたよ?
ただ、班の皆がなー……真面目に掃除してくれてたんだけど、ヤバかったんだよなー……。
サリーさんの机を掃除したいだの、椅子の接触面を間接的に触れたいだの、上履きの触れてる床に頬擦りしたいだの、挙げ句の果てには本気の言い合いよ。
巻き込まれる前に、そそくさと掃除を済ませて逃げ帰り、今があるという訳でございます。
帰宅路の時間潰しに、そんなこんなを思い返すのが、俺の日課なんで。
「―――!?」
ん? 俺の住んでるアパート方面からサリーさんらしき、大声が聞こえた様な……はっ!
も、もしや何かに巻き込まれて、助けを求めてるのでは?!
運動神経皆無な全速力は、今ここで発揮するしかない!うぉおおおお!
数十秒後、家向かいの電柱に身を屈めてる、いつもの尊いサリーさんがいた。
こんなとこで何してんだろう?
とにかく何かに巻き込まれてはないようだけど、時間差でサリーさんが俺にお気付きになられた。
「あ、ありゃたくぅん……」
美しい白肌が一瞬で真っ赤になっておる?!お、俺何かやってしまいました?!
言わずもがな理由を聞けるわけもなく、サリーさんは逃げるように自分の部屋に帰って行きました。
……やっぱ俺、サリーさんに避けられてんのかな……滅茶苦茶ショックだわ!?




