サリーちゃんと新田成幸の正体を知るミカエ
天使と悪魔。
決して相容れない者同士の狭間に立つ存在がある。
悪魔に近付いてしまい堕ちた天使、堕天使。
ワタシ、ミカエも堕天した1人だ。
まさか終末テストのカンニング程度で、数年堕天とは思わなかった。
自宅謹慎か人間界に留学中の、天使と悪魔2名の監視役をするかの2択で、迷わず後者を選んだ。
娯楽文化が皆無に近い天界で、自宅謹慎なんて退屈過ぎるからだ。
人間界学によれば、娯楽文化の楽園だそうだし、面倒臭いが監視役になった訳だ。
♢♢♢♢
監視対象者2名は既に、人間界に馴染んで過ごしてるようだ。
人間を虜にし、ヌルゲーライフを送るリア充悪魔の尊木サリー。
机に突っ伏して不貞寝を決め込んでる、陰キャ天使の新田成幸。
逆な気もしなくないけど、高校に通い始めて一目で納得した。
お互い人間だと思ってる、アホ2名はワタシが監視役だと知らずにいる。
マニュアル通りだと、対象者2名とコミュニケーションを取りつつ、ボロが出ないかを確かめろとの事だ。
馴染んでる様子からして、適当に報告書をでっち上げるのも考えた。
ただカンニングの件で、上からの目が厳しい以上、適当な報告書は無理だと判断した。
非常に面倒だが、マニュアル通りコミュニケーションを取らざるを得ない。
周囲の守りが強固そうな尊木に接触するのは危険が伴う以上、消去法で新田に初コミュニケーションを取るしかない。
「新田君」
君は誰なんだと、表情が隠しきれてないが、初対面なのだし当たり前の反応だ。
にしても、殺意の波動を尊木から感じるのは、おかしい。
「これ、この間片付け手伝ってくれたお礼」
勿論、一片たりとも真実のない偽りギフトだ。
適当にコンビニで買った辺鄙な菓子だが、ワタシが食べないのだから問題ない。
尊木の殺意の波動は一体どうしたというんだ。
「……ん」
疑心暗鬼の拭えない手で受け取ったなら、もう今日は退散だ。
「じゃ、また」
自然にコミュニケーションを取れた筈だが、肝心の名乗りを忘れた。
とは言え、謎多き存在のままでも、監視役に支障をきたす訳じゃない。
帰って早速報告書を纏めないと。




