サリーちゃんは新田成幸を意識してると認めたくない
ここ最近、ろくな睡眠が出来ないのは何故だ。
安眠と言えば私、私と言えば安眠だと、産まれた時から言われてるこの私がだぞ?
表層上じゃ何も変化は無いが、内面はずーっとモヤモヤし続けて、意味が分からない!
モヤモヤの正体を相談しようにも、完璧故に誰にも打ち明けられないのが、尊過ぎる私の数少ない弱点だ。
くそ……尊さが仇になるなんて思わないだろう!
いつも机に群がるモブ女子共の声は、今じゃただの雑音。
新田成幸の息遣いをどうにかして耳に入れたいのに、マジクソで邪魔過ぎる。
「新田君」
あ?
聞き覚えのないメスの声が、新田成幸を呼んだよな?
なんでモブ如きの女が、気安く新田成幸に近付いてんだ?
まずは隣席である私に揉み手をしながら、ヘコヘコと一声かけて、一切合切邪魔にならない事を宣言してからだろう。
「これ、この間片付け手伝ってくれたお礼」
この間?片付け手伝ってくれた?お礼?
何言ってんだメスガキ風情が。
新田成幸がそんな優イケ行動する人間じゃねぇだろ。
妄想が行き過ぎて、現実と区別できなくなったんだな。
この哀れなメス豚め!
「……ん」
「じゃ、また」
は?はぁ!?はぁあああ!?
そもそも貴様の怠慢な要求で、新田成幸の時間を浪費させる愚行自体、イカレた話だと思えよ。
アイツはな、放課後になってすぐ直帰して、自室に籠る事をこよなく愛する、陰キャの鏡なんだ。
陰キャは陰キャらしく生きてんだ。
それに適当な既製品菓子をお礼に渡すなんぞ、マジ舐め腐り過ぎてるわ。
常識的に考えて、愛情を込めたハートのチョコクッキーを可愛いラッピング包装してから、手紙と一緒に手渡すだろうが!
そもそも大の甘味好きな新田成幸を、何も把握してない時点でテロ行為だ!
そんだけじゃない!
無愛想な一文字返事もしっかり覚えて、大事な日記に書き残して、夜な夜な眺めながら幸せに眠らないとだろうが!
「さ、サリー様? も、もしや私達がお気に障る事でもしましたでしょうか……」
「ふぇ?」
いかんいかんいかん……殺気染みた空気が、いつの間にか表に出やがってた。
尊い私らしくないな、まったく……。
しかし何故、メスが新田成幸に接近しただけでこうも取り乱したんだ?
ま、まるで私が新田成幸を意識してる……みたいじゃないか!?
それは断じてない!
どこからどう見ても、誰がどう考えても、絶対に釣り合わないから!




